このページの本文へ

NECC'99視察&日本事例発表報告会が開催(前編)

1999年07月19日 00時00分更新

文● 船木万里

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

7月15日、タイム24ビル内の東京メディアポートで“NECC'99視察&日本事例発表報告会”が行なわれ、米国のコンピューター教育カンファレンスや日本側からの発表の模様が報告された。主催はNECA (Nippon Educational Computing Association) 設立準備室。

NECC'99ツアーとは

NECCとはNational Educational Computing Conference、すなわち米国で実施されているコンピューター教育カンファレンスの略称。“コンピューターを利用した教育”をテーマに、教師、教育団体、スポンサー企業などが集まるイベントで、今年は20周年を迎える。全国から集まる参加者は、およそ1万人。

まず今回の視察ツアーの幹事を務めた(株)草鈴舎代表、今野恵理子(こんのえりこ)氏が概要を述べた。今年の開催地は米国のアトランティックシティー、コンベンションセンターで、会期は6月21日~27日の1週間。視察ツアー参加メンバーは、大阪大学人間科学部教授、前迫孝憲(まえさこたかのり)氏を団長として、東京学芸大学助教授の小池敏英(こいけとしひで)氏、所沢西高等学校家庭科教諭の西澤廣人(にしざわひろと)氏、旭川北高校英語科教諭の川端一正(かわばたかずまさ)氏がスピーカーとして壇上に上る予定だった。

しかし、川端氏が事情で出席できなくなり、急遽インターネットを利用したNetMeetingを実施。音声と文字での参加となった。ツアー参加者は他に、京都リサーチパーク(株)の中村友紀氏、(株)シナジー・パートナーズ社長、鈴木一氏、株式会社内田洋行の教育システム事業部など、企業からの参加者が5名という顔ぶれ。

今回の視察ツアーの幹事をつとめた(株)草鈴舎代表、今野恵理子(こんのえりこ)氏
今回の視察ツアーの幹事をつとめた(株)草鈴舎代表、今野恵理子(こんのえりこ)氏



NECC会場で見た日米の意識差

今野氏は、プロジェクターに会場で撮影したビデオを上映しながら、開会式の模様などを説明した。基調講演では、日本のように政治家などを招聘(しょうへい)するのではなく、集まった教師に今後のビジョンを与えられる人物を、という基準でスピーカーを選んでいるようだ。今回は、サン・マイクロシステムズのサイエンスオフィスディレクターであるジョン・ゲイジ氏が講演した。
 
ここ数年で急速に規模が拡大したこともあり、会場ではワークショップが300以上も開かれていたという。生徒のプレゼンテーションなども展示されて、学園祭のような雰囲気があったようだ。コンパックやマイクロソフトなどのスポンサーの提供により、会場内の通信環境や機器の供給などは万全の体制。また、地元ボランティアが会場の設営や参加者のサポートを要領よくこなしていく。このような企業、地域のバックアップが、カンファレンスの運営を支えているようだ。

参加者は、幼児教育から大学教育まで、ありとあらゆる教育関係者。日本との相違点としては、年齢層に偏りがなく、また女性の参加も多く見られたことだ、と今野氏は言う。確かに、日本でのコンピューター関連イベントに女性の姿はあまりないが、NECC会場には、高齢の女性の姿も多く見られる。

このようなことからも、日米間ではコンピューターに関する一般的意識の差が大きいようにも思える。NECCの20年という歴史は、米国の教育界がコンピューターを違和感なく受け入れ、使いこなす素地を養ってきたのだろう。

もちろん、何から何まで米国のほうが一歩進んでいるとは思わないが、こうしたイベントを通じて米国の教育への取り組みやコンピューターに対する姿勢を学び、事例を日本に紹介することで、今後の日本のコンピューター教育における方向性を考える一助になれれば、と今野氏は抱負を語った。

会場の模様を撮影したビデオを見ながら説明する今野氏
会場の模様を撮影したビデオを見ながら説明する今野氏



通信環境の日米の差は歴然

ビデオで会場の様子を見た後は、団長である前迫氏が今回の感想や今後の課題などを述べた。米国でのコンピューター教育は、社会で生き抜く力の1つとして“技術”を身につけるという、総合学習の一環としてなされている。さまざまな分野のうちの1つの技術として、インターネットやコンピューターがあるという位置づけに、米国での教育の層の厚さを感じる、と前迫氏は語った。

会場での通信環境の充実ぶりには驚いたが、米国の環境が良くても、日本での通信環境が末端までは行き届いていないため、今回試みた旭川とのNetMeetingでは、映像の送受信をあきらめることになってしまった。今後、米国ではケーブルテレビの経営団体がインターネットの高速ケーブルサービスを決定したなど、日本との通信環境の差は歴然としている。今後、米国のこうした活動事例をいかに日本で取り入れ、広めていくのかが課題である、と前迫氏は結んだ。

大阪大学人間科学部の前迫孝憲教授
大阪大学人間科学部の前迫孝憲教授



米国の教育関連雑誌を手に、教育の現状を語る前迫氏
米国の教育関連雑誌を手に、教育の現状を語る前迫氏

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン