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液晶パネルやPDPの製造技術を一堂に展示--“ファインプロセステクノロジー・ジャパン'99”開幕

1999年07月01日 00時00分更新

文● 浅野純一

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“第9回ファインプロセステクノロジー・ジャパン'99”が6月30日、東京江東区の東京ビッグサイトで開幕した。このイベントは液晶パネル(LCD)やプラズマディスプレイパネル(PDP)などのいわゆるフラットパネルディスプレイの製造技術に関する展示会。パソコン用モニタや携帯機器向けなど昨今のデジタル機器のキーデバイスであるLCD、デジタル放送時代の壁掛けテレビとして開発されているPDPとどちらも成長著しい製品だけに、このイベントに対する注目も年々高まっている。出展社も過去最高を記録しているという。主催はリード エグジビション ジャパン(株)。

 ガラス板にTFTパターンを作り込む際に使用するフォトレジスト薬品の展示。薬品の混合機など化学系の展示も多い
ガラス板にTFTパターンを作り込む際に使用するフォトレジスト薬品の展示。薬品の混合機など化学系の展示も多い


 ガラス板の搬送&洗浄機。空気圧で搬送するためノーコンタクト。通常フラットディスプレイの工場では工程間のガラス板の搬送はこうしたロボットが行なう
ガラス板の搬送&洗浄機。空気圧で搬送するためノーコンタクト。通常フラットディスプレイの工場では工程間のガラス板の搬送はこうしたロボットが行なう


 ガラスパネルの検査機。拡大してパターンをチェックするこの手の検査機がたくさん展示されていた
ガラスパネルの検査機。拡大してパターンをチェックするこの手の検査機がたくさん展示されていた


 60インチのPDPのスクリーンマスク。ガラス基板に配線パターンを描くためのもの。その大きさがわかる
60インチのPDPのスクリーンマスク。ガラス基板に配線パターンを描くためのもの。その大きさがわかる


 ちょっと小さいがLCDの製造工程。ガラスにパターンを作ったあと、液晶分子を均一に並べるためにブラシで溝を付けるラビングを行ない、数ミクロンのスペーサを挟んで2枚のガラスを貼り合わせる
ちょっと小さいがLCDの製造工程。ガラスにパターンを作ったあと、液晶分子を均一に並べるためにブラシで溝を付けるラビングを行ない、数ミクロンのスペーサを挟んで2枚のガラスを貼り合わせる



LCDもPDPもその製造工程は半導体に似たプロセスをたどり、さらに大サイズの画面を作るゆえ非常に緻密な精度が要求されるため。生産ラインへの投資額は数百億円単位という巨大なものになる。たとえばLCDの場合、ガラス基板にTFT電極を作り込む技術は半導体プロセスと同じだが、1024×768ドットのXGAの解像度を実現するには、横方向に各画素に対しRGBの3画素分、つまり1024×3本の電極が必要になる。こうした微細加工を行ない、かつほぼ100パーセントの画素が正常であることが求められるわけだから、その製造・検査装置が注目されるのも当然というわけだ。さらに言えば、LCDの場合、TFT電極を作り込んだガラス板とカラーフィルターを作り込んだガラス板の2枚を貼り合わせる必要があり、そのときにも正確さが要求される。この場合のサイズオーダーは数ミクロン単位というもの。イベント名の“ファインプロセステクノロジー”の意味はここにある。貼り合わせについてはPDPも同じで、しかも60インチ級のガラス板となれば、その精度の維持が重要なことは理解できるだろう。

 パネルの端子をチェックする検査機。すべての端子に導電して点灯の様子を検査する
パネルの端子をチェックする検査機。すべての端子に導電して点灯の様子を検査する


 湿度管理のためのドライフォグ噴出器。フラットディスプレイの製造工場は高度なクリーンルームなため、こうした設備が欠かせない
湿度管理のためのドライフォグ噴出器。フラットディスプレイの製造工場は高度なクリーンルームなため、こうした設備が欠かせない


 同じくクリーンネスを保つための作業員用手袋。基本的に工場内はほとんど人はいないが、機械のメンテナンス時やトラブル発生時に着用する
同じくクリーンネスを保つための作業員用手袋。基本的に工場内はほとんど人はいないが、機械のメンテナンス時やトラブル発生時に着用する


 反射を抑えるフィルムなどの材料も展示された。表面に貼ることで、像を見やすくする
反射を抑えるフィルムなどの材料も展示された。表面に貼ることで、像を見やすくする


 製造装置の多くは巨大で持ち込めないため、パネルなどで展示。写真は実物大のイラスト。約80cm角のガラス板を処理する装置。一度にたくさんのパネルを製造できるため、ガラス板の大型化は年々進んでいる
製造装置の多くは巨大で持ち込めないため、パネルなどで展示。写真は実物大のイラスト。約80cm角のガラス板を処理する装置。一度にたくさんのパネルを製造できるため、ガラス板の大型化は年々進んでいる


 1枚の大きなガラス板に複数のLCDを作り込むため、最終的にはカットが必要。そのためのダイヤモンドカッターの“刃”の展示
1枚の大きなガラス板に複数のLCDを作り込むため、最終的にはカットが必要。そのためのダイヤモンドカッターの“刃”の展示


 完成品モジュールを展示するコーナーも。写真は東芝の製品。右端がグランプリを獲得した10インチでXGAを表示するパネル。VAIOノートでおなじみだ
完成品モジュールを展示するコーナーも。写真は東芝の製品。右端がグランプリを獲得した10インチでXGAを表示するパネル。VAIOノートでおなじみだ


 反射型のカラー液晶もポピュラーな存在になりつつある。微細な表示もできるようになった。写真はシチズン製
反射型のカラー液晶もポピュラーな存在になりつつある。微細な表示もできるようになった。写真はシチズン製


展示会場には、さまざまな製造装置や検査装置が展示された。材料となるガラス基板をはじめ、搬送用ロボット、製造プロセスに必要な各種化学薬品、工場のクリーン度を保つ環境装置など、改めてフラットパネルの製造がきわめて広範囲な技術の集大成であることを感じさせた。また、来場者は国内だけでなく、LCD製造で成長著しい台湾や韓国などからもたくさん訪れていた。初日の6月30日はフラットディスプレイの優れた製品や技術を表彰する“アドバンスト・ディスプレイ・オブ・ザ・イヤー'99”の発表も行なわれ、モジュール部門では東芝が開発した10.4インチでXGAの表示が可能な低温ポリシリコンTFT(ソニーのVAIO-505に採用された)が受賞したほか、製造装置部門では『低温ポリシリコンTFT生産用プラズマCVD装置』、検査装置では『PDPパターン欠陥検査装置』などが受賞した。このイベントは7月2日まで開催される。

 写りが悪くて恐縮だが、鏡面内在型の反射パネル。通常ガラスの外側(奥側)にある反射面をガラス内に作り込んだもの。ガラス1枚分のロスがなくなり、明るいパネルになる
写りが悪くて恐縮だが、鏡面内在型の反射パネル。通常ガラスの外側(奥側)にある反射面をガラス内に作り込んだもの。ガラス1枚分のロスがなくなり、明るいパネルになる


 シャープのアドバンストTFTマルチシーンディスプレイ。暗いときにはバックライト、明るいときには外光を利用する
シャープのアドバンストTFTマルチシーンディスプレイ。暗いときにはバックライト、明るいときには外光を利用する



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