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【INET'99 Vol.4】INET'99併設の breakfast meeting――“Women of the Internet” 開催

1999年06月29日 00時00分更新

文● 野々下裕子

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6月22日から25日にサンノゼで開催されたINET'99併催のインターネットと女性(Women of the Internet)会議についてレポートする。編集部の手違いにより、お二方のジャーナリストの競作のような形になってしまった。視点もそれなりに違うと判断、2つの寄稿を並べてお届けするすることにした。それぞれの記事中の写真は、その筆者が撮影したものである。

ヨーロッパやアジアからの女性も参加

6月22日から25日にカリフォルニア州サンノゼ市で開かれていた、INET'99(インターネットソサエティー主催)と同時に、インターネットと女性(Women of the Internet)会議が開かれた。

この会議は、インターネットソサエティーの唯一の女性理事である、クリスティーン・マックスウェル氏の提案により、マックスウェル氏司会のもとで行なわれた。

朝7時30分からの朝食ミーティングに集まったのは、約50名。「女性にインターネットを利用してもらうことは、インターネットソサエティーの重要な使命である」とマックスウェル氏。約10名のスピーカーは、インターネットで、あるいはインターネットを利用して活躍している女性ばかり。そのほとんどが、INET'99の開催国アメリカからだが、ヨーロッパやアジアからの女性も参加していた。

まず最初に、マックスウェル氏が「インターネットの暗い部分にも目を向けて欲しい。例えば、最近のコロラド州での学校内銃撃事件にしろ、インターネットが影響を与えているかどうか、よく考えて欲しい」と、参加者に疑問を投げかけてミーティングが始まった。

クリスティン・マックスウェル氏。インターネットソサエティーの唯一の女性。borad of trusteeメンバーで、今回のwomen in the internetディスカッションの発足人
クリスティン・マックスウェル氏。インターネットソサエティーの唯一の女性。borad of trusteeメンバーで、今回のwomen in the internetディスカッションの発足人



インターネットが第三世界の女性にとって、大きな風穴になる

次にパキスタンで教育を受け、現在オーストリア在住の参加者が「第三世界ではまだ、女性の役割は家事と子育て。女性が大学に行くことさえ不可能な国もある」と、各国の文化が固定する女性の役割について触れる。「そうした文化的な壁があったとしても大学に行くのと同等の、あるいはその国では得られないような情報や教育をインターネットで得ることができる。インターネットが第三世界の女性にとって、大きな風穴になると思う――。

ディスカッションの様子。スピーカーは主にアメリカからだが、アジア、ヨーロッパからも参加している人がいた
ディスカッションの様子。スピーカーは主にアメリカからだが、アジア、ヨーロッパからも参加している人がいた



それを受けて次のスピーカーは、男女の平等と世界平和について言及。「世界平和はつがいの鳥。その両方――男と女――が平等でこそ、本当の世界平和が得られる」という。「インターネットにある情報のほとんども男性中心のものだ。女性がパワーを得たとしても、男女の違いがなくなるわけではない」。そのため、違いを考えながらの平等を、インターネットでいかように達成できるか、考えるべきだと提案した。

その男女の違いと、テクノロジーについて、次のスピーカーが触れる。テクノロジーは男性のもの、と彼女は言う。その理由は「ラップトップの重さ、色から見ても、それがビジネスマンを主眼にして作られている」と。
 

メーリングリストと、オフ会を主催し、女性同士の、そして性を超えてのネットワークを促進

この技術と女性については、違った観点からの意見もあった。レベッカ・アイゼンバーグ女史は、元システム・アドミニストレーターであり、コラムニスト。彼女にとっては、テクノロジーは必ずしも男性のものではない。また、sfwow.orgを主催しているスーザン・アンダーソンは、“top 25 women on the web”というリストを作り、ハイテク産業で活躍している女性が実際に存在することをアピール。sfwow.orgは、シリコンバレー周辺のハイテク産業で働いている女性たちの社交の場である。メーリングリストと、オフ会を主催し、女性同士の、そして性を超えてのネットワークを促進し、女性がビジネスに進出する機会を増やすことに力を入れている。
 
参加者が特に注目したのは、女のコ向けの玩具を開発している会社を起こした、ジャニス・スワンソン氏のスピーチだ。彼女は元スチュワーデス。娘さんが生まれ、彼女の「どうして女のコのおもちゃは、ピンク色か、バービー人形しかないの?」という問いに促され、大学に戻り、博士号まで取得。そしてgirltech.comを起こした。

子供が生まれてすぐに社会が強制する男女の違い(女のコはピンク、男のコはブルー、など)と、実際の女のコの欲しがるおもちゃは必ずしも一致しない、とスワンソン氏は言う。「学校の教科書にも、男のコは医者、女のコは看護婦といった、固定観念を植え付けるような記述が多く」社会が強制する固定観念や、「男のコ向けの玩具を売れば女のコも買うが、女のコ向けの玩具は男のコは買わない」といった、玩具業界の固定観念にとらわれることなく、ヒット製品を生み出している。
 

女性とテクノロジーについて発表する、ガールテック社のジャニス・スワンソン
女性とテクノロジーについて発表する、ガールテック社のジャニス・スワンソン



約2時間にわたって行なわれたスピーチとディスカッションが一番沸いたのは、あるスピーカーが「パームパイロットの広告に、ヌードの女性がパームパイロットを持っているものがある。あれは女性を物扱いしていて困る」と発言したこと。「その広告に“この広告は最悪!”と書けば、女性を物扱いしていることに気がついてもらえるか」と彼女が提案すると、他の参加者が「そんなことをしても始まらない。女性が女性向けの製品を開発すればいい」と反対。同じ女性同士でも、同一の目標達成への手段が大きく分かれることを垣間見たようだった。
 
会議は参加者たちのメールアドレスをノートに書き取り、メーリングリストを発足しようと賛成して閉会した。
 
さて、次回INETは日本で開かれるが、アメリカに比べれば女性の地位がまだまだ低い日本での、Women of the Internet会議がどのような内容になるか、興味深いところがある。

《笠原リカ》

6月22日から25日に、サンノゼのマッケンリー・コンベンションセンターにて開催されたINET'99。ここでは、開催3日目にあたる24日の朝に開催されたインターネットソサエティーによる女性グループのディスカッションを紹介する。
INET'99の朝は早い。というのは、毎朝何かしらのカンファレンスが開催されているからだ。24日は早朝7時半から女性グループによるディスカッションが行なわれた。ヒルトンホテルの会場には約50名ほどの女性達が集まり、朝食をとりながら軽い雰囲気の中でディスカッションが進められていった。

朝食をとりながらまずは身近なところで自己紹介からスタート
朝食をとりながらまずは身近なところで自己紹介からスタート



クリスティーン・マクスウェル氏の進行でディスカッションは進められていった
クリスティーン・マクスウェル氏の進行でディスカッションは進められていった



進行を担当するクリスティーン・マクスウェル氏が名前を読み上げると、指名された女性が前に出てきて、最近のトピックを2、3分間ずつスピーチしていく。内容はさまざまで、ペルーの女性からは「インターネットを教育や行政の助けにしたい」というコメントが。インドの女性からは「インターネットは多くの女性にとってこれまでとまったく異なるアプローチの手段となる」といったコメントが寄せられた。

全体的には「インターネットがこれから女性の立場や生き方を変えていくだろう」といったコメントが多かったが、中には「オンラインショップは地域の小さな店に危機をもたらしており、そのうち人はラップトップで買物をするようになるかもしれない。このようなインターネットの流れが既存のコミュニティーを崩壊させるのではいかと心配だ」といった危機感を提言する女性もいた。

「INETに参加している女性の数はまだまだ少ない。インターネットの世界そのものもそうだ」「最近はインフォマーシャルなど女性の活躍できる場所が増えてきている」「女性だからといってファッションばかりが得意分野ではない」「女性ならではの発想で新しいカテゴリーだって作れるはず」意見は尽きることなく、次々と発言者が手を上げる。インターネットに関する本を出版する予定だというプレスからのコメントもあったり、さらにディスカッションのムードは盛り上がっていった。

世界各国から集まった女性たちからさまざまなコメントが寄せられた
世界各国から集まった女性たちからさまざまなコメントが寄せられた



気になるトピックをカードに書いて張り出そうというもの。カードの助けを借りるまでもなく、ディスカッションは盛り上がった
気になるトピックをカードに書いて張り出そうというもの。カードの助けを借りるまでもなく、ディスカッションは盛り上がった



その他には、“Girltech”というおもちゃ会社を作っている女性からのプレゼンテーションも行なわれた。彼女によると「女性が技術に弱いと思われているのは、子供の時にバービー人形しか与えられなかったから」だそうだ。そこで少女たちの声をインターネットなどで集め、彼女達が楽しめるカラフルなおもちゃを開発しているのが“Girltech”だ。商品は、ボイスメモ型の日記帳や、書いた絵を懐中電灯のように投影できるものなどがあり、会場ではそれらの模型も回覧された。

“Girltech”のデモ
“Girltech”のデモ



会場では“Girltech”が開発している商品の模型が回覧された会場では“Girltech”が開発している商品の模型が回覧された



どうやら「女性は技術に弱い」というレッテルは万国共通にあるようだ。とはいえ、さすがにここへ集まっていた女性はかなりテッキー(技術に強いマニアのオタクのような意味)の部類に入るだろう。パームパイロットの話題になった時、参加者の3分の1以上がユーザーだというのはさすがに驚かされた。

こうしてディスカッションは、インターネットからツールにまで話題が広がり、予定の1時間を大幅に延長しても全員がなかなか席を離れようとしなかった。いよいよ時間切れとなった時に、日本の女性から「こんなに楽しいディスカッションがこんなに短い時間ではとてももったいない。来年の横浜ではもっと時間をとって大いに語り合いましょう」とコメントが送られ、来年のINET2000が開催される横浜での再会を誓いつつ、ディスカッションはようやく終了した。

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