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【Lotus DevCon99 Vol1】「Dominoは高性能/高機能なウェブアプリケーションサーバー」――ロータスの開発者会議“DevCon99”が開幕

1999年06月22日 00時00分更新

文● 風穴 江

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いわゆるグループウェアアプリケーションプラットフォームとして知られる『Domino』/『Notes』で同市場をリードしている米Lotus Development社(以下ロータス)は、サンフランシスコのMarriottホテルにおいて、毎年恒例の開発者会議“Lotus DevCon99”を開催した。メインイベントの会期は、21日から23日まで(現地時間)の3日間で、この間、世界中から集まったロータス関連の開発者に対して最新の技術情報が提供されるほか、同社の長期的な戦略の方向性も示されることになっている。

初日の21日は、ロータスの3人のVise Presidentによって基調講演が行なわれた。

DevConとLotusphere

ロータスの世界的なイベントとしては、毎年1月にディズニーワールドがある米オーランドで行なわれる“Lotusphere(ロータスフィア)”が有名だが、こちらは、年初の開催ということもあって、その年にリリースする製品の概要や戦略などが発表され、開発者だけでなく、ロータス製品でビジネスを行なっているパートナー会社の戦略担当者や、ロータス製品を採用している企業のIT担当者などをも対象としている。そのため、開催規模も桁違いで、最終日の打ち上げパーティーは近くのテーマパークを借り切って行なわれるほどだ。

基調講演は世界各地から集まった開発者で満員となった
基調講演は世界各地から集まった開発者で満員となった



そのLotusphereに比べると、このDevConは非常にこじんまりとした規模のイベントだが、開発者向けということもあって、その内容は、“Deep Dive into Lotus Notes & Domino R5”という今年のテーマからも想像されるように、非常にテクニカルなものとなっている。

『Notes』から『Domino』へ

ロータスの主力製品である『Domino』は、もともとは『Notes』という名前で統一されていたグループウェア製品がベースになっている。

Notesは、同じ目的を持った複数の人間が、お互いに密なコミュニケーションを図りながら、効率よくコラボレーションできる環境を提供するソフトウェアの草分け的存在で、のちに「グループウェア」という言葉ともに、新しいソフトウェアのジャンルを切り開いてきた。

Notesは、もともと米Iris Associates社というベンチャー企業が開発していたソフトウェアだが、ロータスによって買収され、以降、『Lotus Notes』という名前で広く知られるようになった(Irisは、今でもロータスの100パーセント子会社として開発を担当している)。そのロータスも、数年前に米IBM社によって買収され、『Lotus 1-2-3』に代表される、それまでのコンシューマー指向のイメージから、サーバーあるいはソフトウェア基盤を提供するインフラメーカーとしてのイメージを強めてきている。

長らくグループウェアの代名詞とも呼ばれてきたNotesだが、'94年ごろからのインターネットブーム、そして、それに関連して起こってきた“オープンスタンダード”という潮流に後押しされるように、ロータスは、かなり早い時期から、Notes専用クライアントとNotes専用サーバという“クローズド”な環境からの脱脚を模索してきていた。

そしてついに、Notes専用クライアントだけでなく、ウェブブラウザーのようなオープンスダンダードに基づいたアプリケーションもNotesクライアントとして利用できるサーバー製品としてDominoの発表に至るのである。ここで同社は、長年親しまれてきたNotesという名前を、あえてサーバー製品から外すという「賭け」に出たが、これが見事に奏効して、未だにグループウェア市場でトップグループを走り続けている(Notesという名前はクライアントソフトウェアの名称として残されている)。

もはやグループウェアではない

Dominoの本質は、Notes以来受け継がれている柔軟な文書管理データベースと、そこに格納されたデータを柔軟なフォーマットでクライアントに“発行”するという機能にある。そう考えると、オープンスタンダードに準拠しているだけに、ライバルとなる製品も数多い。たとえば、格納したデータをフォーマットしてウェブブラウザーに送るという点では、ある種の拡張機能を備えたウェブサーバーすべてが対抗製品となりうるし、メールや掲示板などのコミュニケーションプラットフォームと考えれば、POPやIMAP、NNTPなどをサポートしたメールサーバー、ニュースサーバーなどもコンペティティブな製品と言える。

そうした状況にあってDominoは、ひたすら“リッチ”な機能を提供することで、単にオープンスタンダードというだけの製品との区別を図ってきた。その姿勢は、同社がDominoを形容するときに使う「高性能/高機能なウェブアプリケーションサーバー」という言葉に凝縮されている。

コミュニケーションを支援するソフトウェアとして“グループウェア”という市場を牽引してきたDominoは、そのポジションを、人と人との間で情報を共有するための総合的なサービス基盤とでもいうような範囲にまで拡大してきており、そこにこれからの活路を見いだそうとしている。

アプリケーションサーバーとしての位置付けを明確化

今回のDevCon99の基調講演でも、そうした位置付けがより明確に示されていた。

基調講演でDominoのポジショニングについて熱弁を奮う、プロダクトマネジメント担当副社長のCliff Reeves氏
基調講演でDominoのポジショニングについて熱弁を奮う、プロダクトマネジメント担当副社長のCliff Reeves氏



基調講演の最初のスピーカーとして壇上に上がったプロダクトマネジメント担当副社長のCliff Reeves氏は、“What Have You Done For Me, Lately?”というタイトルで、ウェブアプリケーションサーバーのポジショニングとDominoの目指す方向性について講演した。

時間が押し気味だったこともあって同氏の話し振りはかなり早口で、その様子は、まるで何かに追いたてられているようにも見えた。先日、ある調査会社が新規導入シート数で、マイクロソフトのExchangeがロータスのDominoを猛追しているというデータを発表したが、そうしたDominoの置かれた状況がオーバーラップして見えたのは筆者だけだろうか?

ともかく、このオープニングセッションで発表された内容を見る限り、高性能/高機能なウェブアプリケーションサーバーを目指すというDominoの位置付けは、基本的には変わっていない。その意味では、今回のオープニングセッションでの発表そのものにはあまり新味はない。しかし、そのことがかえって「Dominoで最高のウェブアプリケーションサーバー」を目指すという同社の決意を強く印象づけるものとなった。

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