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“Gigabitネットワークが切り拓く未来” --けいはんな学研都市--

1999年06月14日 00時00分更新

文● 正月孝広

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次世代通信“Gigabitネットワーク”の研究成果を公開

11日、関西で情報通信の最先端技術の研究が行なわれている、けいはんな関西文化学術研究都市(京都府相楽郡精華町)において、既に研究開発用として運用されている“Gigabitネットワーク”に関する講演会と、関連研究施設の見学会が行なわれた。

けいはんなプラザ全景(奥の高い棟がラボ棟)
けいはんなプラザ全景(奥の高い棟がラボ棟)



ラボ棟全景 ラボ棟全景



講演会の会場となったのは、けいはんなプラザ3Fの会議室“ナイル”。そして講演会終了後、参加者は4つのグループに分かれ“通信・放送機構 けいはんな情報通信研究開発支援センター(TAO/Telecommunications Advancement Organization of Japan)”、“新世代通信網実験協議会(BBCC/Association of Broadband-network Business chance & Culture Creation)”、“「国際電気通信基礎技術研究所(ATR/Advanced Telecommunications Research Institute International)”のそれぞれの施設の見学会へと移った。

既に電話よりもデータの方が伝送量が多くなっている

講演会は大阪大学基礎工学部長 宮原秀夫氏(近畿次世代超高速ネットワーク推進協議会 会長)を迎え“Gigabitネットワークが切り拓く未来”と題して行なわれた。

大阪大学基礎工学部長 宮原秀夫氏
大阪大学基礎工学部長 宮原秀夫氏



まず、Gigabitという単位の情報伝達量は実際にどのくらいの伝達能力があるのか説明した。テキストデータとしては新聞1年分の量になるが、情報量の多い動画データでは数分の情報に相当し、実際には必要最小限の能力であるとのこと。

次に現在のネットワークの現状を見ると、日米間の回線では既に電話よりもデータの方が伝送量が多くなっており、日本国内においても数年先にはこの逆転現象が起きることが確実になっている。

このような現状を踏まえ、“Gigabitネットワーク”は“多くのユーザーをサポートするバックボーンネットワーク”としての機能確保と、その“高速回線の力を十分に引き出すアプリケーション”の運用というこの2点が大きなポイントと宮原氏は強調した。

講演会会場の様子
講演会会場の様子




“Gigabitネットワーク”の可能性と問題点

また現在のネットワークの最大の問題点でもある“輻輳”(ふくそう)にも触れた。この輻輳現象とは、入力データ量に対し出力データ量も比例的に増加するべきなのだが、ある地点を界に極端に出力データ量が落ちてしまう現象をいう。ネットワークの中でパケットの渋滞が発生し、なかなか外に出ることができない状況である。

原因は、ネットワークの状況を考慮した入力データ量の制御が何も行なわれていないこと、帯域を予約して占有的に使用するメカニズムが用意されていないこと、音声・データ・画像の区別なく送っていること――などが考えられ、“Gigabitネットワーク”ではこれらの解決も優先事項である。

“Gigabitネットワーク”が実用化されると、医療分野では高精細の細胞組織の画像や、数十枚のレントゲン写真をわずかな時間で転送することができ遠隔医療がより近づいてくる。また分散しているスーパーコンピューターに海洋、大気などの処理を行なわせることによって、より正確な地球環境シミュレーションも可能になる。もちろん動画を用いた双方向のコミュニケーションなども多数の可能性を秘めている。

宮原氏は最後に、次世代インターネットである“Gigabitネットワーク”の基盤を整備し、世界に貢献できる技術として開発研究を進めていきたいと力強く語った。

関連施設の詳細は別掲載記事でお送りする。

【関連記事】Gigabitネットワークが切り拓く未来--けいはんな学研都市見学会より--
http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/990614/topi02.html

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