このページの本文へ

マイクロソフト、『BizTalk』をはじめとする電子商取引分野における戦略を発表

1999年06月14日 00時00分更新

文● 編集部 桑本美鈴

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

マイクロソフト(株)は、同社の電子商取引分野に関する今後の取り組みを紹介する『Microsoft Commerece Solutions Briefing』を開催、市場における戦略やパートナー企業との協業等について発表した。

まず、同社代表取締役社長の成毛真氏が壇上に立ち、同社の電子商取引市場における戦略について説明した。



「日本の電子商取引市場は一般消費者向け電子商取引市場と企業間電子商取引市場に分けられる。'98年での市場規模は、一般消費者向けが650億円、企業間が8兆6200億円だが、これが2003年には、一般消費者向けが3兆1600億円、企業間が68兆4000億円規模になると予測されている」

「インターネットは、多くの情報を収集でき、価格を他と比較し、製品を購入できるなど、電子商取引にとって最高の市場。今後、インターネットの世界における中間業者は、製品以外の付加価値を提供できなければ生き残れないだろう。また取引においてはセルフサービスが基本となる」

「電子商取引が与える影響の一例として、小売業のデジタル化、商品のデジタル化、請求書のデジタル化などが挙げられる。POS端末におけるWindows OSのシェアは今年度で40パーセントだが、2003年には63パーセントになると想定される。バリューチェーン化が進み、一連の作業がデジタル化されることで、今後小売業者が知識労働者になると考えられる。また、音楽コンテンツやソフトウェア、出版物など商品のデジタル化も進んでいる。今後はそれらをさらに広範囲で行なうことが課題となる。請求書のデジタル化に関しては、6月10日に“インターネット明細情報サービス推進協議会”(仮)を設立した。この分野は今後大きな市場になると想定している」

「電子商取引市場における当社のビジョンは、“Enabling E-Commerece for Everyone(電子商取引をすべての人、あらゆるビジネスに)”である。今後私どもは“コマースプラットフォーム”、“インターネットコマースサービス”、“BizTalkと産業別標準化活動”の3つを戦略の柱として推進していく」と語った。

続いて、上記3戦略について、同社常務取締役の阿多親市氏、同じく常務取締役の大浦博久氏、ソリューションデベロッパー事業部事業部長の東貴彦氏がそれぞれ説明を行なった。

Microsoft Commerece Serverを発表

阿多氏は、コマースプラットフォームについて説明、Microsoft Site Server 3.0, Commerece Editionの後継製品『Microsoft Commerece Server』を発表した。Microsoft Commerece Serverは、“カタログ機能”や、“ターゲッティングとパーソナライゼーション”、“データマイニングと分析”、およびトランザクションサポートの拡張など、プロモーションや販売、顧客リレーションシップ向上のための機能強化が行なわれている。Microsoft Commerece Serverは、Windows 2000出荷後に提供されるという。



「当社は現在コマースプラットフォームとして、『Microsoft Site Server, Commerece Edition』、『Microsoft SQL Server』、『Microsoft Windows NT Server』の3製品を提供している。米市場におけるSite Server, Commerece Editionのシェアは53パーセントで、一般消費者向け電子商取引や企業間電子商取引、企業購買業務システムなど、多くのシステムで採用されている」

「一般消費者向け電子商取引市場は、2003年には3兆円の市場となり、この分野に参入していない企業は残っていけない。今後一般消費者向け電子商取引市場で必要とされることとしては、大量の商品の管理、顧客ごとの嗜好に合った商品やサービスの提供、顧客やアクセスの分析によるマーケティング活動、さまざまな業務の連携などが挙げられる。これらを提供する製品がMicrosoft Commerece Serverだ」

「一方、企業間電子商取引においては、現在Microsoft Site Server, Commerece EditionおよびCommereceインターチェンジパイプラインの提供、EDIベンダーなどとの協業を行なっている。今後は、メインフレームやERPなど業務システムとの連携や、リアルタイムでのデータ転送、大規模データ分析などが重要となる。従来のEDIは1対1のデータ伝送が基本であったが、今後は複数人が参加できなければならない。また受発注データ以外の情報のやり取り、さまざまなシステムとのシームレスな連携が必要となる」

「これらの課題を解決するキーワードがインターネットであり、XMLだ。そこでわれわれは、XMLをベースとしたオープンな情報交換の仕組みである“BizTalk”を提唱する。BizTalkは、受発注データ以外に、製品情報やマーケティング情報、予測データ、サービス/サポート情報などさまざまなデータを交換することが可能。XMLをベースとしており、プラットフォームや言語に依存しない。このBizTalkを利用するためのツール、サービスを提供する製品『Microsoft BizTalk Server』をWindows 2000の出荷後に提供する予定だ。また、将来MSNやOffice製品、BackOffice製品、そしてWindowsでもBizTalkをサポートし、顧客に有益なコマースプラットフォームを提供したい」

コンシューマ&コマース事業部を新設

大浦氏は、同社のインターネットコマースサービス戦略として、同社“コンシューマ&コマース事業部”の新設、およびMSNと“Panasonic Hi-HO”の共同ポータルサイト構築について発表した。



「'99年3月、米本社の組織改編により、MSNとインターネット事業部、WebTVおよびコマース関連製品開発グループを統合した“Consumer&Commerece Group(CCG)”が設立。日本法人である当社もこの戦略に基づいて、マイクロソフトネットワーク事業部とインターネット事業部を統合し、7月1日付けで“コンシューマ&コマース事業部”を発足する。同事業部がフォーカスする分野は、ポータルサイト、電子商取引支援サービス、プロバイダー事業、商用サービスプラットフォーム、ネットワーク事業者向けプラットフォームだ」

続いて同社MSNプロダクトマネージャの丸岩幸恵氏がMSNについてデモを行なった。「MSNは今後、検索、メール、コンテンツ、コミュニティの4つのコアサービスを提供する。検索は先月発表した“MSNサーチ”、メール機能では“MSN Hotmail”や、Outlook Expressとの統合がある。将来的にはカレンダーサービスも提供する予定。コンテンツは“MSNトラベル”等を新設した。コミュニティとして、チャットや掲示板等のサービス提供する」

「ユーザー層を増やすためには、PC以外のデバイスによるサービスも必要。MSN Japanは今後、CEをベースにした情報端末やテレビ、携帯電話等のデバイス向けにもサービスを提供する予定。電子商取引支援サービス“MSN LinkExchange”は、現在米国で提供されているサービスで、ウェブサイトの技術的評価を行なう“SiteInspector”や、無料でサイトを告知できる“BannerNetwork”などが用意されており、今後日本国内での展開も予定している」

Hi-HOと共同で新ポータルサイトを構築

また、大浦氏は、電子商取引におけるパートナー協業展開として、共同ブランドでのポータルサイト構築を発表、その第1弾であるPanasonic Hi-HO/MSN共同の新ポータルサイト“Panasonic Hi-HO powered by MSN”を発表した。この新ポータルサイトでは、検索機能をはじめとするポータル基盤技術をMSNが提供、オンラインショッピングなど各種コンテンツをPanasonic Hi-HOが提供する。新サイトは今秋オープン予定。

共同ポータルサイト構築に際し、松下電器産業(株)ネットワーク事業本部インターネット事業推進室室長の田中寛幸氏は「インターネット人工が全体の10パーセントを超え、家庭にも急速に普及している。インターネット関連ビジネスには、スピードとオープンな活動が必要であり、短時間でビジネス構築することが重要だ。今回の共同により、日本有数のポータルサイトが構築できると確信している」としている。

BizTalkフレームワークを推進

東氏は、BizTalkと産業別標準化活動について紹介、BizTalkフレームワークの概要説明と、“BizTalk Forum”の開催、“バリューチェーン推進協議会”の設立について発表した。



BizTalk Forumは、米BizTalk InitiativeにおけるBizTalkフレームワーク仕様の提案や検討、公開といったBizTalkに関する最新動向を、国内で紹介するもの。9月に第1回フォーラムを開催し、その後も定期的に開催するという。

バリューチェーン推進協議会は、同社が(株)エヌ・ティ・ティ エムイー情報流通、(株)NTTデータ、(株)電通国際情報サービス、(株)東芝、日本NCR(株)、日本電気(株)、日本電信電話(株)、(株)野村総合研究所、(株)日立製作所、富士通(株)、三菱電機(株)と共同で設立するサプライチェーンシステム構築のための共通技術基盤と確立を目的とした業界任意団体。発足は8月下旬の予定。

東氏は、「BizTalkフレームワークは、システム間、企業間連携システム用の情報交換のためのソフトウェア実行環境。受発注データと製品情報、マーケティング情報、予測データ、サービス/サポート分野までの業務を支援するもの。社内システム統合や取引先とのシステム連携などを実現する。われわれは今後、フレームワークの普及や、フレームワークを利用した製品の開発、サービスの提供を推進していく」と語った。

なお、電子商取引市場への取り組みに対し、成毛氏は、「電子商取引市場がさらに発展していくことは自明のことであり、私どもは全社をあげてこの市場に取り組んでいく。本日、当社4人の幹部のうち3人が出てきたことが決意の表われ。この電子商取引に対する取り組みは、OSに対する取り組みとは異なり、今度各社と協力して事業展開を行なっていく。競争相手とも共存することで市場全体が大きくなっていくと想定している」としている。

来場者の質問に答える成毛氏、阿多氏、大浦氏、東氏の4名
来場者の質問に答える成毛氏、阿多氏、大浦氏、東氏の4名

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン