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トロン協会、第11回通常総会を開催

1999年06月09日 00時00分更新

文● 報道局 伊藤咲子

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(社)トロン協会は8日、第11回通常総会を開催した。このなかで、平成11年度('99年4月1日から2000年3月31日まで)の役員の選出、事業計画の発表などを行なった。また、総会を記念して特別講演会も開かれた。

第11回通常総会

新会長には富士通(株)の秋草直之代表取締役が、副会長には(株)日立製作所の長谷川邦夫常務がそれぞれ就任した。また、平成11年度の事業計画として、TRONに関する普及活動、TRONに関連した規格の作成、家電ネットワーク制御システムの技術動向の研究などを挙げた。そのほか挙げられた主な内容は以下のとおり。

・ITORN仕様の標準化、ITORN仕様の製品を対象にした登録制度の拡充
・Java Technology on BTRONの検討
・TRON-GUI仕様のブラッシュアップ
・超小型携帯ターミナル向けBTRONの検討
・TRON HMI仕様書のブラッシュアップ

TRON(トロン:The Real-time Operating system Nucleus)Projectは、'83年に提出された(社)日本電子工業振興協会(JEIDA)の国内のコンピューター開発ビジョンに関する報告書を受け、'84年に東京大学の坂村健氏らが中心となり発足した産学共同のプロジェクトである。このプロジェクトの目的は、プロセッサーを組み込んだ生活機器がネットワークで相互接続され協調して動作するシステム(HFDS:超機能分散システム)の実現にある。

“マルチメディア社会を支えるキー技術-システムLSI-”

トロン協会は総会を記念し、同協会の理事の1人である三菱電機(株)常務取締役の中野隆生氏による特別講演会を開催した。テーマは“マルチメディア社会を支えるキー技術-システムLSI-”。半導体のキー技術として昨今注目されているシステムLSIの開発の背景や、その特徴などについて語った。

三菱電機(株)常務取締役の中野隆生氏。中野氏は、大阪大学の非常勤講師でもある
三菱電機(株)常務取締役の中野隆生氏。中野氏は、大阪大学の非常勤講師でもある



中野氏はまず、システムLSIの登場の背景を分析する。「将来、通信機能やOSを搭載するインテリジェントTVなど、従来の製品の機能の境界線を埋めるようなマルチメディア製品の登場が見込まれている。こうした技術の進化より、全体で約300兆円規模の市場の創出が期待される」

「こうして出現するマルチメディア製品、例えばセットトップボックスやDVDシステムといった新製品のシステム開発のキー技術になるのが、“システムLSI”である。これは、CPU、メモリー、ソフトウェアといった複数の機能を1チップ上に集積し、システムの機能を持つもので、半導体の省スペース化を実現することができる」

さらに、システムLSIのメリットとして以下のことを加えた。「システムLSIは、ハードとソフトの協調設計、IP(Intellectual Property:システムLSIの機能ブロックを荷うハードおよびソフト資産)による設計を可能にする。コンピューターのライフサイクルが極端に短くなったことで、システム開発に割り当てられる時間は従来の数分の1になったが、システムLSIのこれらの設計方法が、この問題を解決することができる」

DRAM混載LSI市場は2001年に80兆ドル規模に成長

続いて中野氏は、現在ノートパソコンや携帯端末、HDD、プリンターなどを中心に使用されているDRAM混載LSIについて言及。「システム設計者は、コントローラーとDRAM間のデータ転送速度の不足による、より高いバンド幅、I/Oバスの消費電力がシステムの中で大きな割合となったことによるI/Oピン数の削減を期待していた。一方、半導体メーカーは、0.4~0.35μmルール(16M DRAM相当)の時代になって初めて、2MB程度のDRAM、10万ゲート程度のロジックを150平方ミリメートル以下のチップに搭載できるようになった。つまり、DRAM混載LSIの登場は、半導体メーカーとのニーズとシーズが合致した結果である」

中野氏によれば、DRAM混載ASIC市場は、スイッチやルーターなどのネットワーク機器、デジタルビデオ、HDD、ノートパソコン・PDA用グラフィックシステムなどのコントローラーといった需用から、2001年に80億ドル(約9600億円)規模の市場に成長すると見られているという。

民生用家電機器がネットワーク化される時代は目前

中野氏は、現在日本が置かれている状況を分析し、「半導体の製造コストに利があるNIES諸国と、設計に特化しリーダーシップを発揮する欧米企業、そして日本企業はその狭間にいる。システムを熟知した半導体技術者、もしくは半導体を熟知したシステム技術者をいかに増やすかが、日本の企業の競争力の源泉となるであろう」と結論付ける。

中野氏は最後に、「民生用家電機器がネットワーク化される時代は目の前である。身の回りの道具や家具が互いにネットワークで接続され、快適な生活環境が期待される。TRONの目指す“だれもが簡単にコンピュータをつかえる”ということが重要になってくるだろう」と講演を締めくくった。

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