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松下電器がデジタル放送用の1チップシステムLSIを発表

1999年06月08日 00時00分更新

文● 浅野純也

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松下電器産業(株)は8日、デジタル放送対応の1チップシステムLSIを発表した。1チップシステムLSIは、それぞれに機能を持つ複数のチップを1つに集積したもの。従来は複数の別々のチップを組み合わせて実現していた処理を1チップで行なうことができる。そのため、[1]実装面積が少なくて済み、[2]配線長が短くなるのでクロックを上げやすい、[3]信頼性の向上、[4]製造コストの削減、[5]省電力化などのメリットがある。

最近注目されているのは、メモリー(DRAM)とマイコンを一体化した『DRAM混載チップ』。1チップ化することで、従来は外付けにしていたメモリーとのバス幅を容易に増やすことができ、配線長も短くなるのでパフォーマンスを上げられるほか、消費電力もおさえられる。同社の説明によると、たとえばDVDドライブのコントローラーにこのDRAM混載チップを使った場合、1チップ構成の5倍速ドライブは別チップ構成の2倍速ドライブの約2分の1の消費電力で済むという。メモリー混載型といえば、NeoMagic社製のノートパソコン用のグラフィックチップが有名だろう。メモリーとロジックを1チップ化したことでスペースを重視するノートメーカーに大量に採用されている。

もちろんメモリー混載型だけでなく、現在はさまざまな統合LSIが開発されている。デジタル製品の普及や小型化、高集積化にともない、従来のDRAMやマイコンのような単機能チップでは市場のニーズに応えることができないことから、半導体メーカーはこのシステムLSIに積極的に取り組んでいるのが現状だ。

今回松下電器が開発したシステムLSIは、デジタル放送を受信するチューナー(デジタル放送を受信するための装置は、IRD:Integrated Receiver Decoder、またはSTB:Set Top Boxと呼ばれる)向けのもの。受信した電波から取り出したデジタル信号を映像や音声にデコードするほか、チューナー全体の制御も担当させることができる。これまではMPEGのデコーダーのほか、モデム制御やICカード制御など多くの部品が必要だったが、このチップを使えばメモリーと電波からデータを取り出す検波回路を外付けするだけで、ほぼチューナーを製造することができる。

32bit『AM33マイコン』と『メディアコアプロセッサ』の2つを搭載する、松下の1チップデジタルTVシステムLSI32bit『AM33マイコン』と『メディアコアプロセッサ』の2つを搭載する、松下の1チップデジタルTVシステムLSI



集積されたのは、同社オリジナルの32bitマイコンである『AM33マイコン』と『メディアコアプロセッサ(MCP+1)』の2つ。AM33マイコンはDSP命令を持ち、ソフトウェアモデムや音声信号処理のほか、システム全体の制御を担当、MCP+1はMPEG-2データの映像や音声のデコードやグラフィックスのオンスクリーン表示(OSD:On Screen Display)などを担当する。いずれも内蔵のマイクロコードを変更すれば、さまざまなフォーマットに対応できるため、ワールドワイドでの製品展開が可能だ。このほか、チップ内部にはクロスバススイッチ型(格子目のようにバス同士を配置し、任意の回路間での“待ちなし”のデータ転送を複数実行できるもの)のアーキテクチャーを採用したこと、消費電力を従来の5分の1におさえたことも大きな特徴だ。

集積されたトランジスターは約1000万個。0.25μmプロセスで製造され、AM33コアは121MHz、MCP1+は81MHzで動作する。消費電力は2.6W、441ピンのBGAパッケージで提供される。当面は走査線480本のプログレッシブ放送(480P、SDTV:Standard Difinition TV)にのみ対応、今後高画質のHDTV(1080i、High Difinition TV)対応モデルも検討されている模様だ。ちなみに日本で来年開始予定のBSデジタル放送はHDTVなので、このチップではSDTVフォーマットにダウンコンバートして視聴することになる。サンプル出荷はすでに始まっており、実際の製品は来年には登場する模様だ。

1チップSTBシステムLSIのレイアウト。0.25μmで1000万トランジスターを集積する1チップSTBシステムLSIのレイアウト。0.25μmで1000万トランジスターを集積する

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