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遅まきながらインターネット活用が前面に出てきた各省庁の教育政策(後編)----日本教育工学振興会講演会から

1999年03月15日 00時00分更新

文● 報道局 白神貴司

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 (社)日本教育工学振興会(JAPET)は11日、15回目となる“情報教育政策セミナー”を開催した。今回は“情報社会とあすの教育”と題して、4つの省庁からパネリストを招き、教育の情報化の現状と今後の施策について、講演会を開催した。すでに前編として、文部省の講演とディスカッションの模様を掲載した。後編では、通産省、郵政省、自治省の講演を報告する。

インターネットを軸にした“ポスト100校プロジェクト----通産省

 通商産業省機械情報産業局の萩原崇弘氏は、同省が文部省と協力して進めている“ポスト100校プロジェクト(仮称)”について語った。通産省では過去、“100校プロジェクト”('94年~'96年)、“新100校プロジェクト”('97年~'98年)を手掛けた。全国から約100の学校を選定し、インターネットを利用した教育学習の実践活動を試験するプロジェクトを運営してきた。

通商産業省機械情報産業局の萩原崇弘氏
通商産業省機械情報産業局の萩原崇弘氏


 現在、両プロジェクトを通じて得たノウハウを生かし、新たなプロジェクトが発足している。この“ポスト100校プロジェクト”(仮称)は、これからインターネットに接続する学校が円滑に環境を整備できるようにサポートすること、インターネットに接続している学校同士のコミュニケーションする場をコーディネートすること--といった計画からなる。

 文部省では前編で述べたように、年間1万校がインターネット接続環境を整備するという計画を立てている。通産省では、この計画をいかに支援するかについても検討している。教育の情報化を推進したり、共同で研究を進めるための場を提供したりすることも予定している。萩原氏はこねっとプラン、メディアキッズなど、民間レベルのプロジェクトとの連携も視野に入れ、計画を推進していくと語った。

'99年秋口にも教育向けインターネット割引----郵政省

 郵政省からは電気通信局電気通信事業部から久保田誠之氏が参加した。教育現場におけるインターネット利用を推進するための、接続コストや高速インフラの開発に対する取り組みについて説明した。

郵政省電気通信局電気通信事業部の久保田誠之氏
郵政省電気通信局電気通信事業部の久保田誠之氏



 郵政省では“子どもたちがもっと自由にインターネットを活用できる環境づくり”というコンセプトを掲げた。行政、学校、企業、地域社会が一体となって、教育機関でのインターネット利用推進をサポートする体制づくりを目指している。

 そのための具体的な対策として、インターネット上のコンテンツの充実、違法、有害な情報への対処、学校におけるインターネット利用体制の充実、学校への支援体制の強化、通信回線の高速化、通信料金負担の軽減--などをあげている。

 これらの中で、光通信、DSL、CATVなど多様化する高速アクセス回線を組み合わせたネットワークにに関する研究を重点的に進める。通信品質を劣化させずに管理する技術や、ギガビットクラスのネットワーク構築、次世代インターネットの研究などである。

 現在、野田聖子郵政大臣の音頭で日本電信電話(株)のインターネット接続料金値下げも進めている。早ければ'99年秋口に教育機関向けに価格を押さえた料金プランが登場するという。

 また、違法、有害コンテンツの排除については、フィルタリングシステムの開発や、研究チームの発足などの計画を進めている。


公共施設、CATV局と高速ネットワーク接続----自治省

 自治省では、教育の情報化による地域の活性化、振興までを視野に入れた施策を計画している。同省大臣官房情報政策室長の井筒郁夫氏が、教育の情報化と地域振興のあり方について語った。

自治省大臣官房情報政策室長の井筒郁夫氏
自治省大臣官房情報政策室長の井筒郁夫氏



 井筒氏はまず、教育機関の情報化によって、地域社会が受けるメリットを説明した。2001年までにすべての学校をインターネットに接続するという文部省の計画が実現すれば、情報ネットワークが教育機関を中心に構築されることになる。これにより、遠隔教育や、在宅ケアなど、地域社会全体の情報化のためのインフラ基盤が整備される。

 自治省ではこの計画を実現するため、同省と全国の公共施設、各地域のCATV局とを結ぶ高速ネットワークの構築を計画している。また、情報化をサポートする人材の育成にも力を入れる。生涯学習の一環として地域住民が受講できるような情報関係のセミナー、研修講座を設ける必要性を指摘した。

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