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「米国、東南アジアでTRONの普及を目指す」「目標は2年間で100万本」~世界に日本発のパソコンOS『TRON』を提案する、株式会社セネット設立

1999年01月27日 00時00分更新

文● 報道局 佐々木千之

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 26日、東京・恵比寿のガーデンプレイスにあるビルの1室で、“新しい世界標準のパソコン用OS『TRON』を提案する”株式会社セネットの設立と、同社の米国子会社となる、Global OS Corpの設立準備について、記者発表が行なわれた。セネット社は、15年前に東京大学の坂村健教授によってアーキテクチャーなどが提案された、純国産OSである『TRON』の世界的普及を目的としている。“セネット”の名は、シェークスピア戯曲で主役登場を知らせるラッパの音の意からとったもの。

 今年13年目を迎えるコンピュータ業界有志の会“コンピュータ産業懇話會”(Forum of Computer Industry:事務局長鈴木友彦)のなかから、新しいパソコン用OSを提案すべき時期が来たとの声が強まったことなどから、TRONをその候補として研究してみようという“トロン研究会”が発足した。昨年9月、そのトロン研究会から具体的に企業化を推進する“トロン企業化委員会”が発足。そして、13日付け(登記)で株式会社セネットが設立された。

 TRONはトロン協会が推進母体となってITRON(Industry TRON)、CTRON(Communication TRON)は、機器の組み込みOSとして一定の普及と成果を上げているが、パソコン用のBTRONは、当時顕在化していた日米間の貿易摩擦の影響でスーパー301条の対象となったりしたこともあり、広く普及するには至っていない。

 セネット社の役員には山口義人・三菱電機(株)顧問、鈴木友彦・(株)アダムスシステムズ社長、栃本京子・高千穂交易(株)相談役、増田宗昭・カルチャコンビニエンス(株)会長、日吉昭夫・ヤマハ(株)特別顧問など、そうそうたるメンバーとなっている。

 山口義人取締役会長によると、セネット社がねらう市場は米国と東南アジア諸国で、BTRONの持つ多言語・多文字表示能力(TRONはunicodeなどとは別の独自の漢字コード体系を持つ)が生かせるとしている。目標数量は販売開始後2年で100万本を目指すという。販売方法は単体でパッケージ販売も考えているが、そのほかにIBM社、デルコンピュータ社、ゲートウェイ社などにバンドルしてもらえるよう働きかけているという。

「最初のバージョンの名前はやっぱり"SENNET Version.1.0"にしたい」と語る山口義人取締役会長
「最初のバージョンの名前はやっぱり"SENNET Version.1.0"にしたい」と語る山口義人取締役会長



 また、島崎和取締役/技術本部長によると、セネット社が開発する『SenetBTRON』は、現在国内でBTRONを販売しているパーソナルメディア(株)から、ソースコードのライセンスを受け、新たに書き起こされる予定。開発は4月にも立ち上がる米国子会社Global OS社で行なうという。開発目標は今年11月のCOMDEXで、それまでに付属アプリケーションのWebブラウザー『ROVO Brouser』、電子メールソフト『TAD Mailer』、ワープロ『Word Processor for Editors』も合わせてバージョン1の開発を終えたいとしている。最初のバージョンは英語版と中国語版を予定。開発資金には米Global OS社の資金として、米国で調達する600万ドル(約6億9000万円)をあてるとしている。

 Windowsによる独占状態が問題視される今、日本発のOSがどこまでいけるか、今後も追いかけてみていきたい。

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