“エレクトロニクスショー'98”開幕！

1998年10月07日 00時00分更新

文● 浅野純也

　秋の定例イベント、エレクトロニクスショーが6日、大阪市のインテックス大阪で開幕した。今年は3年ぶりの大阪開催。エレクトロニクス関連企業や団体462社が出展し、電子部品やデバイス、AV機器、マルチメディア製品などが展示された。10日まで開催されている。主催は(社)日本電子機械工業会(EIAJ)。

　会場は電子デバイスや産業機器、電子部品、プロダクツなど6つのゾーンにわかれている。今回は、一般コンシューマーにもっとも近いプロダクツゾーンからのレポートを中心にお届けする。

　最も目立ったのはディスプレイデバイスだ。フラットテレビ、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶パネル、プロジェクタなど、さまざまなデバイスが展示された。

　大画面ゆえか最も目についたのはPDP。PDPは電機メーカー各社が取り組んでいるデバイスで、いわゆる壁掛けテレビを実現するものだ。NECや富士通はすでに42インチサイズの製品化を終えているが、今回はこれを超える50インチのPDPを日本電気(NEC)と松下電器産業が参考出品した。50インチだと対角線は127cmにおよび、NECの場合1365×768、約105万画素を集積している。


手前がNECの50インチPDP。奥行きは従来よりも薄くなって47mm。奥に見えるのは現行の42インチPDP。NECは42インチの現行製品で、デジタル入力や480P表示、高輝度対応版なども展示された。


松下電器産業の50インチPDP。HDTVとあるのは高精細テレビ対応の意味。PDPはデジタル放送のデータをそのままドライブできるのが特徴だ。


シャープの20インチ液晶テレビ。青いパネルは飾り用。これをスピーカーにしたり下側に飾りパネルを入れるなど、ファッショナブルなイメージを狙っている。来年春に投入される予定。

	20インチテレビ専用のスタンド。こうしたアプリケーションは液晶テレビならではのものだろう。


松下電器のショートブラウン管テレビ。照射する電子ビーム機構を平面パネル化することで、奥行きをおさえる。省スペーステレビ市場を狙う。


三洋の外光採り入れ型パネル。パネルを照らす光源を従来のバックライトだけでなく、上面のスリットから外光を入れることで省電力と見やすさを実現する。

　液晶パネルも18インチや19インチなどの大型パネルのほか、1インチや2インチといったビューア用パネルも数多く展示された。また従来のバックライト付きTFT方式だけではなく、反射型、フロントライト型、低温ポリシリコン型、外光採り入れ型などさまざまな方式のパネルが展示された。トレンドは高精細、高視野角、高輝度などクオリティーを上げる方向に動いているようだ。

　その一方でシャープは20インチの液晶テレビを試作。現在市販している15インチパネルを超えるものだ。ただし価格が高くなることが予想されるため、現在マーケティングの真っ最中であり、スタンドや飾りパネルなど従来テレビにはない付加価値を提供する模様だ。また同社は、液晶とドライバ回路などのシリコン回路を同時に作り込むCGS技術を使ったパネルを使った60インチのリアプロジェクタも展示した。

　英国ではBBCがすでに、米国でも11月には開始される予定のデジタル放送だが、各社のフラットテレビはHDTV対応をうたうほか、松下電器やパイオニアは専用のチューナ(STB)を展示した。SKY PerfecTV!やDirecTVなどのCSデジタル放送業者もブースを出すなど、デジタル放送時代がすぐそこまで来ていることを感じさせた。


日本ビクターのD-VHS試作品。HDTV対応品と複数チャンネルの録画対応品が展示された。


松下電器のデジタルテレビ対応チューナー。ATSC18方式すべてに対応する。米国では1700ドル(約23万円)で発売される予定。


NHKのBSデジタル統合放送のテスト画面。各データと放送を同時に表示し、好きなときに情報を得られる。


480Pや1080iなどの次世代デジタルテレビ用フォーマットのデモがあちこちで見られた。


BSデジタルのオーディオ放送に使われるチューナー。受信アンテナとセットになっているのが特徴。三洋製。

　松下電器はHDDを使ったAV機器を展示した。ひとつは映像の記録メディアにHDDを使い、DVの絵を記録して、超精密スローや高速頭出しを実現したHDDデッキ。もうひとつはEPG(電子番組ガイド)と連動して録画や再生を行なうテレビだ(これもメディアはHDD)。ホームサーバと呼ばれる家庭内サーバがHDDを内蔵することで、同等の機能を実現できる。IEEE1394はNECと松下電器が展示した。ただし、IEEE1394はAV機器をコントロールする規格が正式に決定していないため、独自のかつ限られたデモになった。


EPGと連動して、番組を録画再生できるテレビのデモ。テレビ放送をMPEG-2にエンコードしてHDDに記録する。下の3つの画面はHDDが読み取ったサムネイル。


松下電器のIEEE1394機器のデモ。手前のコントローラがDV、ビデオデッキなどをEPGと連動して制御する。


松下電器のプログレッシブDVDプレーヤー。映画とテレビのコマ数の違いから起こるちらつきを解決する。

　タイトル数が充実したこともあってか、DVD陣営は元気だ。盟主のひとり松下電器は、プログレッシブ方式のDVDプレーヤーを展示した。従来のデコードでは映画とテレビの表示コマ数がずれるため、インターレースのように見えることがあったが、プログレッシブデコードすることで、これを解決したものだ。また、同社はDVD Audioのプロトタイプを展示したが、規格で対立するソニーもSuper Audio CDを展示。実際に音は聞けなかったが、10月中旬に開催されるオーディオフェアでは試聴できるようだ。


ソニーのSuper Audio CDプレーヤー。96kHz再生を可能にする次世代CD規格対応のプレーヤー。ただし写真はモック。

　PC Expoの直後とあって、パソコン関連の展示は例年よりも少なかった。関連デバイスをいくつか挙げると……。NECが次世代メインメモリのD-RDRAM、いわゆるラムバスモジュールを展示した。800MHzという動作周波数をクリアするため、チップサイズパッケージを使って信号線を短くしたもの。また同社は世界最小のモバイルカラースキャナも出品した。このほか、フィリップスのDVD-RWドライブ、ソニーのリチウムポリマー電池、エプソンのK6ベースのカードPC、松下電器とソニーのオーバー200万画素CCD、シャープのIrコントロールデバイスなどが展示されていた。


NECが参考出品した世界最小のカラースキャナー。インターフェースはPCカード。光学系の改良によりフルカラーの読み取りが可能。