インターネット成功の鍵“ポータル”
“ポータル"とは、“入り口”、“玄関”などの意味があり、インターネットにおいては“無数に存在するサイトの中で、ユーザーが最初に、他の多くのサイトへのゲートウェイとして使用するサイト”に冠せられる言葉である。たとえば、検索エンジン各社、マイクロソフトのスタートサイト、AOLなどである。そしてそれが、インターネットにおけるあらゆるビジネスの最重要な成功の鍵になるとの認識が広まってきている。なぜポータルはインターネットビジネスに決定的な成功をもたらすか。
まず単純には、広告収入。他のサイトへのユーザーが必ず1度アクセスするわけだから、それは膨大になり、それに比例して広告収入が増える。マイクロペイメント技術が普及し、1画面あたり2円等の課金が可能になれば、“広告だけが収入”という現状も変わるだろうが、これまでもこれからも広告収入が重要であることに変わりはない。
次に、さらに重要なことは、ユーザーのサイト選択に強い影響力を持てる、そしてそれがサイトのアクセスと売り上げ増大につながるということである。これは次のように考えればわかる。
まず、インターネット上にさまざまなサイトが乱立しつつあるが、サービスに著作権は適用されない以上、同じような内容になりがちで、差別化しにくく、“規模の経済”が重要になるという構造がある。
つまり大きなサイトは、商品データベースや情報量、会員間のインタラクションにしても、あらゆる面で有利であり、価格は下がりサービスの品質は向上するということになる。Web上では現実の店舗のようなブランドイメージも創出しにくく、カテゴリーキラーも出にくいということもある。強力なポータルにつながっているかどうかでアクセスや売上は大きく左右されることになるのだ。
ポータル自身も有力なサイトのみを傘下に加え、相互作用で強力なポータルに発展していく。その先には、非常に数少ないポータルグループのみが生き残り、それに収斂していくことも考えられるだろう。
ただしポータルの威力が及ぶのは“流通”、“サービス(金融、情報提供など)”のみで、“生産者サイト”はこの限りではない。たとえば、“ディスニーのミッキーマウス”、“NBAのバスケット”、“フェラーリのスポーツカー”のサイトは商品を作り出す(生産する)側によるものである。これらには熱狂的なファンがアクセスするわけで、そのアクセスをポータルが左右することはできない。
しかしさらに遠い将来を考えてみると、たとえば“Carpoint”(マイクロソフト社の自動車の紹介・検索・販売サイトで急速に売り上げを伸ばしている)が自動車販売のほとんどを扱うようになれば消費者の嗜好情報を完全に手にすることができるわけで、マイクロソフトブランドの車をGMが下請けで作るという垂直統合も起こりかねないわけだ。つまりポータルは、21世紀のあらゆるビジネスの中核となるということなのである。
ポータルをねらうプレーヤーたち
現在、ポータルの座を求めて戦略を展開している企業には、ヤフー(最も早くからその重要性を認識していた)他、Excite、Infoseekなどの検索エンジン各社、マイクロソフト、AOL(パソコン通信からの転換)、ネットスケープ(有利なポジションにいるも参入が決定的に送れた)、Amazon.com(8月に有力ベンチャー2社の買収により参入、同じ筆者の別掲記事『Amazon.comが買収したJangly、Planet All』参照)、NBCなどがある。今後は、さらに多くの企業が参入するだろう。その中で圧倒的に優位なポジションにいるのは、マイクロソフトである。ブラウザー、デスクトップ画面という最強のポータルを完全に押さえ元来有利なばかりか、傘下のさまざまな有力サイト(Hotmail、Expedia、Carpoint、Sidewalk、MSFDC,など)がすでに相乗効果で発展拡大しつつある。さらにこれらが“相互ポータル”により連携し合い、その中で通用するマイクロソフト帝国マネーの発行もありえるだろう。同社のポータル市場における圧倒的シェアは疑いのないところであるが、残りの何パーセントを何社くらいのポータルが占めることが可能か、今後の興味のつきないところである。
末松 千尋(すえまつ・ちひろ)氏プロフィール
(株)アドバンスト・コンサルティング・ネットワーク 代表取締役
979年東京工業大学卒業。1984年スタンフォード大学経営工学科修了。マッキンゼーを経て現職。
http://www.acnconsulting.com
suematsu@acnconsulting.com
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