このページの本文へ

【INTERVIEW】「1社独占を防ぐためにオルタナティブ必要」と日本サン・山田専務取締役

1998年03月23日 00時00分更新

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷


 日本サン・マイクロシステムズ(株)は、PCサーバー市場をにらみ、今年1月に、エントリーモデルのSolarisワークステーション『Sun Ultra 5』を54万円で出荷した。またディスクアレイ装置ではSolarisのほかWindowsNTでも利用可能な『Sun StorEdge』シリーズを投入。米マイクロソフト社に対する戦略やJavaによるネットワークコンピューティングについて、日本サン・マイクロシステムズの山田博英専務取締役にお話を伺った。



生き残るための“スタンダード”

山田:世界中のコンピューターをネットワークでつなごうとすると、やり方はふたつあって、ひとつはメインフレーム時代のIBMのように、1社のアーキテクチャーでつなぐというやり方。これは1社だけが生き残って、他のコンピューター会社がすべてダメになるという枠組みです。PCの世界では、アップルか、マイクロソフトか、ということをやっていたので、結局アップルが倒れたわけです。もうひとつのやり方は、電話のごとく徹底したスタンダードを作ることで、サンのJavaはこれをやっています。インターフェースのスタンダードに従っていれば、(スタンダードにより信頼性が確保され、競争の中で市場が拡大するから)向こう10年はサーバーもばんばん売れる。逆にスタンダードをやっていかないと、いずれ(他社から)食われることになってしまいます。

----米アップル・コンピュータ社がPCに米マイクロソフト社のJavaを採用したことや、米ヒューレット・パッカード社が携帯端末用に独自のJavaを開発し、WindowsCEにそれが用いられるとか、そういった発表がここのところ相次ぎました。そうなってくると、今後もサンのJavaを“標準”と言えるのか、疑問なのですが。

山田:(最後に数で勝ったものが事実上の標準になるという)デファクトスタンダードと、サンが提唱するスタンダードは、経営のメンタリティーが違います。デファクトスタンダードが決まってから(製品の投入を本格的にやるの)ではなく、サンのJavaは、 ISO/IEC(国際標準化の規格)に登録していて、これを標準としてやっていきましょうと、提案しています。そしてデファクトスタンダードにもなるよう、(米IBMや米モトローラ社などとライセンス契約を結びながら)やってきています。

----今年に入って低価格のSolarisワークステーション『Sun Ultra 5』や、SolarisのほかWindowsNTでも利用可能なディスクアレイ装置『Sun StorEdge』シリーズを発表していますが、WindowsNTと競合する市場での戦略を教えてください。

山田:マイクロソフトをやっつけよう、と思ってやっているわけではないです。このままだとマイクロソフトのモノポリー(独占)になってしまい、産業全体の発展を考えると、そのオルタナティブ(別の選択肢)は必要なんです。またネットワークコンピューティングでは、いろいろなOSが接続されるので、(CPU本体側のアーキテクチャーに依存せず、UNIXにも)WindowsNTにも対応するディスクは必要です。

----新聞などによると、米インテル社が開発中の64ビット・プロセッサー、Merced(マーセド)上では、Solarisも稼働するけれども、自社での搭載はしないということだそうですが。

山田:インテルのも扱ったら、市場はインテルに流れます。スタンダードを守るためにオルタナティブとしてのSPARCを守る。インテルはMercedに載るのがWindowsNTだけでは市場が限られるし、マイクロソフトに縛られたくないからSolarisも載せるんだと思います。サンもそれは大歓迎だけど、自社の商品にするかどうかは、話が別。

ネットスケープの買収について

----米ネットスケープ・コミュニケーションズ社の一部売却や身売り説で、その交渉先にサンも上がってるそうですが、見通しはどうですか。

山田:どうなるかはわかりませんが、僕の願望で言うと、IBMが買収するのがいいのではないでしょうか。そうでなければオラクル。サンの可能性は一番最後。マイクロソフトが買収するぐらいだったら、(ブラウザーの1社独占を防ぐために)買収する、という程度ですね。

ビル・ゲイツ氏は悪くない

山田:いろいろ言われてますけど、ビル・ゲイツって、悪くないと思うんですよ。OS作って、アプリケーション作って、RDB関係に着手して……と、どんどん分野が拡大していくのは、マイクロソフトの経営路線からいくと当たり前なんです。それより問題なのは、日本の企業の経営者。将来どうやっていくかアセスする(状況を評価し、姿勢を表明する)べきだと、私は思っています。アメリカの企業がMSの独占に対して「これからはウィンテル路線だ」、「だめだ」と、新聞紙上で意見を表明している中で、「様子見です」と日本企業がコメントしているのは、情けない限りです。最終的に勝った方につく、と言ってるのと同じですから。日本企業のメッセージがわからない。だから外国から尊敬されないんです。

----では、日本の企業は今後どうしたらいいのでしょうか。

山田:戦後はとにかく(社員を)食わしてやらなきゃってことでやってたけど、もう状況が違うということを認識しなきゃだめですよ。(即断することこそが生き残る鍵となる時代なのだから、欧米の勝ち馬に最後に乗るという)昔のメンタリティーは捨てて、リスク背負って新しいことをやっていかなきゃだめですね。

山田 博英(やまだ ひろひで)氏略歴
日本サン・マイクロシステムズ(株)専務取締役
1941年生まれ
1965年 早稲田大学理工学部電気通信学科卒業
1971年 イリノイ大学電子計算機学科修士課程卒業
1965年 (株)東芝入社、日本シーディーシー(株)、グールド・エレクトロニクス・ジャパン(株)を経て
1989年 日本サン・マイクロシステムズ(株)入社、マーケティング本部、営業本部を担当、現在
に至る

(報道局 若名麻里)

http://www.sun.co.jp/

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン