今年の6月1日、日本オラクル、日本電気、ターボリナックスジャパン、サンブリッジ、オービックビジネスコンサルタントの共同出資で、ミラクル・リナックス株式会社が設立された。社名からわかるとおり、同社の最大の目的はOracle専用にカスタマイズされたLinuxディストリビューションをリリースすることはいうまでもない。
そして、今月末に同社の最初の製品である「Miracle Linux Standard Edition 1.0」が発売される。Miracle Linuxは、従来のLinuxとどこが異なるのか? なぜMiracle Linuxでなければならいのか、ソフトウェア技術と販売戦略の観点から、徹底検証しよう。
なお、今月号の付録CD-ROMでは、最新ベータ版の「Miracle Linux Standard Edition BETA3」を収録している。興味のある方は実際に動かして、その目で確認してみてほしい。
Miracle Linux Standard Edition Ver.1.0の特徴
ミラクル・リナックス社の出資者にターボリナックスジャパンが加わっていることからわかるように、Miracle LinuxはTurboLinux Server 日本語版 6.1をベースに開発されている。
TurboLinuxを使ったことがある人なら一目でわかると思うが、インストール画面や手順はほとんどTurboLinuxと同一であるし、turboxcfgといった「turbo~」という文字列で始まる環境設定ツールもすべて「miracle~」という名前に置き換えられている。そのため、TuroboLinuxのユーザーなら、まったく違和感なしにMiracle Linuxをインストールできるだろう。
Miracle Linuxのインストール開始画面は、TurboLinuxのそれを踏襲している |
とはいうものの、Miracle Linuxならではの、数多くの味付け(カスタマイズ)も加えられている。主なものを挙げると以下のようになる。
- (1) Oracle用にチューニングされたカーネルパラメータ
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Oracleデータベースは、PCに搭載されたメモリを有効に活用するために、大量の共有メモリを使用する。そのため大容量メモリを搭載しているPCでは、Linuxのカーネルパラメータを変更し、さらにカーネルの再構築をしなければならない。Miracle Linux では、あらかじめ Oracleデータベースの使用に適したカーネルパラメータが設定してあり、カーネルを再構築する必要はない。
特に、共有メモリ・セグメントの最大サイズ(SHMMAX)とシステムコール「semop」1回あたりのセマフォ操作の最大数(SEMOPM)については、設定ファイルを書き換えることにより、再起動することなくダイナミックにパラメータを変更することが可能になっている(ちなみに標準的なLinuxでは、SHMMAXの値をダイナミックに変更できるが、再起動したときにはリセットされてしまう。またSEMOPMの値は動的に変更できない)。
そのほかにも、最大4GBのメモリのサポートするほか、データベースアプリケーションでは必須といえるRAW I/O (OSのファイルシステムを経由せずに、直接デバイスを読み書き可能にする機能)もサポートしている。