Windows CEは、Microsoftにとって新規分野への挑戦である。派手な宣伝とともに登場したCEだが、その人気は現在のところいま一歩。米国では、今後モバイルインターネットが流行するという予測もあり、PDAデバイスへの期待は高いものの、人気としてはPalmシリーズが70%程のシェアを持ち、いまのところCEにはブレークの兆しも見えないのが苦しい。
国内ではNEC、シャープ(株)、カシオ計算機(株)、富士通(株)、日本ビクター(株)などがCEマシンに参入しているが、こちらも人気はいまひとつというところ。もっとも、国内ではPalm Computingの日本法人が最近活動を始めたばかりなので、どちらが勝つかが今年から来年のひとつの見所ではある。
そのWindows CEにNetBSDやLinuxを移植するプロジェクトが進んでいる。筆者もモバイルギアII (for DoCoMo。安売りしてたので……)を入手して、Linuxを動かしてみた。コンソールで使う分には結構キビキビ動く(CFなどにアクセスするとちょっと遅くなるが……)。Windows CEのあのノッタリとした感じがない。よく考えてみれば、使われているMIPSのCPUはかつてSGIやソニーのRISC系ワークステーションでも使われていたもの。クロック周波数でいえばそんなに違いのないものが、いまやコンパクトなサイズになってしまっているのである。もっともメモリアクセスやビデオ周りの性能は違うし、CEで使われているMIPS CPUにはハードウェアによる浮動小数点演算機能を内蔵してないなどの違いがあり、当時の性能そのままというわけにはいかない。しかし、それでもUNIXのベンチマークの基準になったVAXでBSDを使っていたことに比べれば、雲泥の差はある。
telnetなどのインターネット端末として、あるいは、ルータとしても利用可能。このサイズで、コンソール用のLinuxアプリケーションが利用できる(現在はスワップをオフにしてあるのでメモリの制限はあるのだが)ので、PDAだからといって、低機能のソフトを我慢して使う必要がないところがいい(もっとも、まだ、サスペンドなどができないので持ち歩いても「見せびらかし用」にしかならないのだが……)。筆者のように、UNIXを初めて触ったのはX以前の端末だったというユーザーとは相性がいいのかも。ウチでは、Ethernetカードを付けて、各種マシンへのログインなんかに使っている。デスクトップパソコンが乗っている机にでも、キーボードの横にちょっと置けるサイズなのがありがたい。まだやってないが、読むだけならメールもこっちのほうがいいかも。
Microsoftの企画で誕生したWindows CEだが、Linuxでこういう世界が広がるなんて、本来の意図とは違うがMicrosoftもたまにはいいことするのだな、と少しは評価を良くした次第。
前回からずいぶんと間が空いてしまって、「やめちゃったの」と思われた方もいらっしゃるかもしれない。実は、このネタをやろうと、モバイルギアを入手した(さすがに使ってもいないことを書くのははばかられたので……)のはいいのだが、うちにはPCカードが使えるLinuxマシンがなかったので、骨董品のThinkPad 701を持ち出して最近のディストリビューションをインストールしようとしたところ、これが一筋縄ではいかない大作業だった(2枚目のフロッピーが読めないんだよね)。それで、ハードディスクを取り出してデスクトップマシンでインストールしたのち、i686カーネルをi386カーネルに差し替え、701にハードディスクを戻したのち、PCMCIAを手動設定するという方法を見つけたのがつい最近。それで遅れてしまった……とは言い訳にもならないか。
(塩田紳二)