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Linux論文作成術

2000年05月01日 00時00分更新

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Linux論文作成術表紙画面

発行(株)オーム社(http://www.ohmsha.co.jp/)

臼田昭司、伊藤 敏、井上祥史 著 ISBN 4-274-07890-6 2800円(本体)

 Linuxは大学などでの利用が非常に多いと思われます。そうなると、論文やレポートの作成に使うことを考えるのが普通でしょう。論文は中身が大切ですが、やはり見栄えが良くないと、それだけで見てもらえなかったり、評価が落ちかねません。特に理系の論文の場合には数式などがあり、これをどのくらい美しく見せるかは重要です。プリンタでまるで印刷物のようにきれいに出力してしまうと、立派に見えるものです。

 というわけで、論文やレポートをLinuxで作るための解説書を取り上げます。題名からして、もう明らかに論文をこれで勉強して書けばよいという感じがしてくるでしょう。少なくとも論文作成に必要な基本情報は載っていると期待しました。論文作成というからには、TeX関係の話が中心と思い、期待してぱらぱらとページをめくりました。

 すると、TeX関係の説明が2割もありません。もちろん、生のTeXを使うのは大変なので、普通良く使われているpLaTeX2eなのですが、実例サンプルまで含めても、たった50ページしかないので、TeXとはどんなものかの概説だけで終っています。とてもこれでは論文を書くどころか、レポートの作成も難しいでしょう。これでTeXとは何かが分かったら、後は別のTeXの本で正式に学習しましょう。

 では、何にページ数を割いているかというと、論文に貼り込む図の作成です。データをグラフ化するgnuplotは一通りの説明をしている程度ですが、図を書くためのツールであるTgifの説明が延々とされています。TeXの倍近いページ数を費して、かなり詳細に説明しています。本書は論文作成の説明というより、論文に挿入する図の作成術の本ではないかと誰もが感じるのではないでしょうか。図の説明に凝るのだったら、是非GIMPの解説もと思うでしょうが、それはないので、ちょっと不十分な感じがしました。

 結局、本書は論文作成術というより、論文作成入門という感じの本です。それも、図に極端に偏っているので、文章も入っている論文を書こうという人には相当物足らないでしょう。TeX関係の本は多数出版されているので、論文、さらには本を書こうという人、また複雑な数式なども表現したい人は、どんどん勉強してください。TeXは十分に時間をかけて勉強するに値するツールです。

 私が最初にLaTeXを使ったのは、もう15年くらい前になります。その当時は情報も少なく、TeX環境を作るだけでも面倒なものでした。それが、最近のLinuxでは最初からTeXを利用できる環境が整っていて、まったく苦労しなくてもTeXが使えてしまい、過去の苦労が懐かしく思い出されます。

藤原博文

プロフィール

藤原博文

パズルを解くためにTK-80などに手を出したが、BASICの低速性が気に入らず、ついコンパイラを作ってしまった。それ以降はソフトウェアの世界から足抜けできなくなり、逆にパズルをする暇がなくてストレスが溜っている。UNIXはVAXの頃から使い始めすでに20年近く、Linuxは4年前より日常的に利用している。ホームページはhttp://www.pro.or.jp/~fuji/

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