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【Linux Conference 2000 Spring レポート】オープンソースの意義を考える「オープンソース・ライセンスを知る」

2000年04月21日 09時49分更新

文● 沖中弘史

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 日本Linux協会(以下JLA)とソフトバンクフォーラム(株)は、Linuxユーザーを対象としたイベント“Linux Conference 2000 Spring(以下LC2000)”を東京・有明の東京ファッションタウンで開催した。開催期間は、18日から20日までの3日間。

 LC2000最終日のの20日、東京大学大学院博士課程、大谷卓史氏による「オープンソース・ライセンスを知る」と題されたセッションが行なわれた。オープンソースライセンスの意義を考えるとともに、さまざまなライセンスを紹介、特徴がまとめられた。

大谷卓史氏画像
東京大学大学院博士課程、大谷卓史氏

オープンソースの条件

 オープンソースのソフトウェアというものを簡単に説明すると「自由な再配布と修正ができるソフトウェア」ということになる。これを可能にしているのがオープンソースライセンスで、このライセンスを理解することで、オープンソースとはどういうものかを理解することができる。

 オープンソースムーブメントを推進し、オープンソースを定義しているOpen Source Initiativeは、以下のような9つの条件を提示している。

  • 自由な再配布
  • ソースコードの配布と自由な再配布
  • 派生的作業(修正)を許す
  • 著者とソースコードの一貫性(誰が著作者かが明示されなければならない)
  • 個人や集団に対する無差別性
  • 適用領域の無差別性(目的によって差別しない)
  • ライセンスの無差別的な適用(どんな場合でもライセンスは適用される)
  • 別の製品に組み込まれた場合もライセンスは有効
  • ライセンスはほかのソフトウェアのライセンスに干渉しない

 オープンソースと似たものに、PDS(Public Domain Software)があるが、

  • オープンソースは、著作権を放棄しない
  • PDSは、著作権を放棄している。また、ソースコード添付の義務がない。日本では著作者人格権の放棄ができないので、厳密な意味でのPSDはありえない

などの違いがある。

オープンソースライセンスの基礎

 オープンソースライセンスとは、著作権によって、自由な再配布、修正を許可し、義務付けたものである。著作権とは、本来は著者が許したもの以外の「複製を禁止する権利」だった。

 著作権には、

著作者人格権
著者の意図どおりに作品を発表する権利(同一性保持権、氏名表示権)
著作者財産権
著者が作品の正当な対価を得る権利

といったものがある。

 著作権を理解するためには、著作権が何のためにあるのかということを考えることが重要である。著作権の伝統的な理解としては、著作者の保護が目的で、人格権、財産権が共に重視される。著作権を市場的に理解すると、ビジネス上の必要から収益の分配が目的となり、財産権が重視される。研究者的理解では、情報の共有が目的となり、人格権が重視される。

 オープンソースの目的は、ソフトウェアをいかに便利に使うかという関心に基づいており、著作者人格権重視の研究者的理解にきわめて近いことがわかる。

OSIに認定されたライセンスの特徴

GNU General Public License

  • GNUソフトウェア、Linuxなどが採用
  • 自由な再配布、修正、派生的作業を妨げる行為を禁止
  • 派生的作業によって生まれた派生物にもGPLが適用される

GNU Lesser General Public License

  • LGPLはGPLの制限を緩めたもの
  • 商業ソフトウェアにおいて、LGPLに従うライブラリやツールキットへのリンクを可能にした

BSD License

  • 派生的作業に関してはソースコードの公開を義務づけない
  • 派生物を商業ソフトウェアにすることが可能
  • bind、sendmail、Apacheなど、多くのオープンソースソフトウェアが採用

Artistic License

  • どこからオリジナルが入手できるか明記されている場合と、派生物の実行ファイルがオリジナルとまったく違う名前を持ち、その違いが明らかにされている場合には、実行ファイルのみで配布できる
  • 派生物を1つの組織内だけで利用できる
  • その存在が完全に隠されている場合、商業ソフトウェアの一部として利用できる

Mozilla Public License

  • 派生的作業のうち、追加的作業についてはオープンソースでなくてもよい

ライセンスの及ぶ範囲

凡例:○はソースコード公開の義務あり、×はソースコード公開の義務なし、△は条件によっては公開せずともよい
  プログラム本体 組み込まれたソフトウェア 派生物 生成物 採用ソフトウェア 備考
GNU General Public License × Linux、Samba、GNOME  
GNU Lesser General Public License × × GNU C Library  
BSD License × × × bind、sendmail、Apache  
Artistic License × Perl 再配布制限なども可能
Mozilla Public License × × Gecko 付加的作業については公開義務なし

 セッション終了後に、「日本国内でもGPLは有効なのか、また、国内、国外を問わず、GPLが裁判で争われたことがあるのか」と質問をしたところ、「わたしの知る限り、GPLについて裁判で争われたことはない。日本国内で有効かどうかについては、裁判で争われない限りわからないだろう」との回答をいただいた。

 オープンソースライセンスは、オープンソースの要となる部分だけに、大谷氏のような研究者の存在は、非常に心強い。

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