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【Linux Conference 2000 Spring レポート】Official Red Hat Linux6.2Jについて(後編)

2000年04月20日 00時00分更新

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Red Hat Linux 6.2Jのコンセプト

 “Linux Conference 2000 Spring”の2日目となる4月19日、レッドハット(株)のプロダクトマネージャー 染谷邦裕氏による「Official Red Hat Linux6.2J」と題された講演が行なわれた。公演内容は、4月21日に発売されるRed Hat Linux6.2Jの紹介で、そのコンセプトから機能全般が語られた。後編では、新機能について語られたポイントを紹介する。

染谷氏写真
レッドハット(株)プロダクトマネージャ 染谷邦裕氏

Red Hat Linux 6.2Jの新機能

 話は6.2Jの主な新機能に移った。新機能として挙げられていたのは

  • パーティションレスインストール
  • クラスタリング
  • Raw I/O
  • Big Memory
  • Pentium IIIサポート
  • X Window Systemにおける改善
  • Secure Web Server

といった点である。

 パーティションレスインストールは、ループバックデバイスを使うことにより、FAT(File Alocation Table)上にRed Hat Linux 6.2Jをインストールできるというもの。Linuxの領域は、FAT上では1つの大きなファイルとして確保されるため、パーティションの切り直しは必要なく、またWindows環境がLinuxのために破壊されることもない。

 クラスタリングは、「Piranha」と「Beowulf」の2つのパッケージが同梱される。NASAが開発した科学計算用のクラスタシステム「Beowulf」は有名だが、聞き慣れないのはPiranihaだ。これは、Linux Virtual Server Projectの成果物であり、カーネルに取り込まれているもので、ロードバランシングやフェイルオーバーを実現。速度と信頼性を向上するものだ。Webサーバの負荷分散などに使われることだろう。存在としては、TurboCluster Serverと同じようなものと考えていい。終了間際の質疑応答でも、このPiranhaの話題が出たが、Webサーバだけではなく、RDBMSそのもののクラスタリングも実験中だという。

 次のRaw I/Oだが、これはおもにRDBMSで使用されるものだ。RDBMSからハードディスクへの、OSを介さないダイレクトなアクセスを実現する機能で、これによって信頼性とパフォーマンスの向上を期待することができる。実験結果によると、OSを介したアクセスに比べて1.3倍程度のパフォーマンス向上が認められたという。

 Big Memoryだが、これは4GBまでのメモリに対応したというもの。現時点では、1GBまでは自動認識し、2GBまでは設定により使用可能、といった状況だが、6.2Jでは4GBまでとなる。カーネル2.4では64GBまでサポートする予定である。

 話題はさらにPentium III対応に移った。これはPentium IIIの機能をきちんと使うようにオプティマイズ/コンパイルしたというものだ。また、マルチプロセッサへの対応も話題にのぼった。従来4つまでの対応を、8つまでに増やしたほか、AlphaやSparc版もマルチプロセッサ対応になるという。ほかにも、プロセッサ関連の話題として、“近い将来”、IA-64にも対応の予定であることが発表された。

 上記の新機能以外に語られたのが、「Fast Device」である。6.2Jでは、ソフトウェアRAIDに対応したことが語られたほか、有名なRAIDカードにはほとんど対応しているという。また、Ultra160 SCSIや、Ultra ATA/66への対応も行なわれた。ただ、Ultra ATA/66対応は、正式サポートではなく、Ultra ATA/66のハードディスクでも、Ultra ATA/33として「動く」というものということだ。デバイスに関してはほかに、現在Linuxは32GB以下のハードディスクしか認識しないが、秋口に登場するRed Hat Linuxのエンタープライズバージョンでは、64bitのファイルシステムを搭載することにより、32GB以上のハードディスクでも認識可能になるという。

 セキュリティについても、Kerberos認証のサポート、128bit暗号化技術のサポートなどが挙げられた。

 最後に「Secure Web Server」だが、これはドイツのRed Hatが開発したもので、Apacheとmod_ssl、openSSLを利用したものだ。このSecure Web Serverと前述したクラスタリングを組み合わせることにより、Eコマースなどに向けたハイレベルなWebサーバを構築できるという。なお、このSecure Web Serverだけは、プロフェッショナル版にのみ付属する。

おもなソフトウェアのバージョン

 講演も終わりにさしかかり、6.2Jの詳しいスペックが紹介された。それによると、

  • カーネル……2.2.14-5
  • ライブラリ……glibc 2.1.3
  • Webブラウザ……Netscape Communicator 4.72
  • Webサーバ……Apache 1.3.12-2
  • メールサーバ……sendmail 8.9.3-20
  • DNSサーバ……BIND Version 8.2.2 patchlevel 9
  • FTPサーバ……WuFTP、Anonftp
  • ファイルサーバ……SAMBA 2.0.6-9、NFS
  • RDBMS……PostgreSQL 6.2

ということだった。このうち、SAMBAについては、標準は英語版だが、日本語版も別パッケージで同梱しているという。日本語版のバージョンは2.0.5J2となっている。また、オープンソースのRDBMSとして知られるPostgreSQLだが、次バージョンのRed Hat Linuxでは、7.0を同梱する予定だそうだ。

今後のRed Hat

 6.2Jは、2.2系カーネルを搭載した最後のRed Hat Linuxになるという。次のRed Hat Linux(7.0という仮称が付いている)は、カーネル2.4、glibc 2.2、X Free86 4.0と、基本的なモジュール3つがメジャーバージョンアップし、一歩進んだLinuxディストリビューションになるとのことだ。登場時期は9月~10月である。また、Oracle 8.1.6に特化したEnterprise Editionも近々リリース予定である。これは、Oracle 8.1.6で使用されるJava関連の機能のため、IBMのJava2や、Motif、64bitのファイルシステムなどを搭載した、Oracle用にチューニングされたRed Hat Linuxということだ。さらに、Alpha用の6.1がもうすぐ登場する。そして、SPARC版も同じく開発中であることが語られた。AlphaやSPARC版は、小売りではなくプリインストールやバンドルといった形で販売されることになりそうだ。


 今回の講演は、4月21日に発売されるRed Hat Linux 6.2Jの機能が分かりやすく紹介され、なおかつ7.0の話題にも触れるなど、今後のRed Hat Linuxを知るためにはもってこいの内容となっていた。

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