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Linuxのネットワークカード設定【虎の巻】

2000年04月10日 20時02分更新

文● 藤原博文

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Linuxのネットワークカード設定【虎の巻】表紙画面

伊藤隆延 著

エーアイ出版 ISBN 4-87193-728-3 3200円

 パーツをあちこちの店で買ってきたり、余った部品を組み合わせてLinuxマシンを作るのはとても楽しいし、技術力もついてためになります。そういう時に、トラブルに陥りやすいのは、一般的なパーツではネットワークカード(以下、NIC)とビデオカードが代表でしょう。

 本書の構成は、一般的な解説が最初にちょっとだけあり、カーネルバージョン2.0.3xに基づいた説明が全体の半分を占め、カーネルバージョン2.2.xについては2.0.3xを補足する形で書かれています。NICはそう簡単に壊れるものではないので古いのを延々と使い続けますが、カーネルは最新版を使うことが多いので、2.2.xに基づいた解説を中心にして欲しかったです。

 多数のNICについて、Linuxの複数のディストリビューションでの動作について、何も努力しなくても動作するものから、ドライバのソースを取得して自分で組み込まなければならないもの、さらには努力したけれども成功しなかったものまでが、行なった操作などを交えながら延々と書き並らべられています。サポート関連のURLも多数あり、これは便利です。

 こういう内容ですから、各種NICが集まるけれども、設定に不慣れな人には何かと便利かと思います。自分でLinuxをインストールできるような人なら、本書で眠っているネットワークカードを活かせるようになることもあるでしょう。

 説明は、10BASEより100BASEが中心ですし、ISAのカードはほんの一部しかありませんので、古いカードを活かしたい人には本書は物足りないでしょう。Linuxのディストリビューションによってサポートされているカードの種類は大きく異なりますし、売られている製品の変化も激しいので、本書はあくまでも参考、あるいは出発点として利用すれば価値があります。

 著者は安物NICの代表であるNE2000コンパチを異様なまでに嫌っている節がありますが、そこまで気にする必要もないと私は感じています。最新の高価なNICを買って動かなくて悔しい思いをするより、1000円を切るNICを買って試してみる方が楽しい。

 同じ出版社から出たムック「挑戦!Linux・ネットワーク基礎編」をベースに加筆したものが中心になっており、細かいテクニックなども多く書かれているのですが、コラムやコーヒーブレイクになっていたりするのはまだ良いのですが、本文中に埋もれている情報も多くあります。目次はあるものの、索引がないので、検索には目次しか利用できず不便です。斜め読みして、どこかにあったことを覚えていても、それを探すことはかなり困難な本です。

 CD-ROMがついていたので、その中に紹介された情報がまとまって入っていれば検索することもできて便利かなと期待したのですが、「Linux Mandrake 6.1」が入っていただけでした。こういう変化の速い世界では、情報をCDで提供、さらにはネットで提供してほしいものです。

 パソコンパーツの本を書くのは大変です。書いている端から、次々と変化してしまうので、永久に書き終えられない恐れがあり、これだけは手をつけたくない分野です。しかし、こういう分野のまとまった本は必要です。ビデオカードについても、同様の本が欲しいですね。

藤原博文

プロフィール

藤原博文

パズルを解くためにTK-80などに手を出したが、BASICの低速性が気に入らず、ついコンパイラを作ってしまった。それ以降はソフトウェアの世界から足抜けできなくなり、逆にパズルをする暇がなくてストレスが溜っている。UNIXはVAXの頃から使い始めすでに20年近く、Linuxは4年前より日常的に利用している。ホームページはhttp://www.pro.or.jp/~fuji/

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