このページの本文へ

風穴江氏、Linuxディストリビューションを語る--Linux Conference '99

1999年12月27日 00時00分更新

文● 高柳政弘

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 12月17日~18日の“Linux Conference '99”(以下LC99)では、月刊Linux Japan編集長の風穴江氏による「Linuxディストリビューション A to Z」と題した講演が17日に行なわれた。Linuxディストリビューションに関心が高かったためか、会場はほほ満席だった。なお、LC99の会場は、横浜・みなとみらいのパシフィコ横浜。主催は日本Linux協会(JLA)。

 冒頭、風穴氏は「ディストリビューションそのものが、Linuxの特徴的なこと」だと述べた。「Linuxには、最初の頃、カーネルしかなかった」と語った。「ディスクをフォーマットするプログラムは自前のものがなく、MINIX(教育用に作られたUNIXのサブセットようなもの)でフォーマットしてパーテーションを確保してから、そこにLinuxをインストールする。あるいは、MINIXのコマンドをコンパイルしなおしたりしていた」と説明した。各人がこの作業をするのは面倒だから、Linux環境を一個所にまとめたものが、ディストリビューションの始まりだと説明した。

月刊Linux Japan編集長の風穴江氏
月刊Linux Japan編集長の風穴江氏

 続いて、風穴氏は、主要なLinuxディストリビューションの特徴を以下のように説明した。

「TurboLinux」:ターボリナックス ジャパン(株)
「TurboLinux」は、最初にインストーラを日本語化したディストリビューション。英語版・日本語版・中国版がリリースされているほか、「TurboLinux Server」や「TurboCluster Server」といったラインナップをそろえていることも特徴。同社の前身は、パシフィック・ハイテック(株)で、CD-ROM専門ショップ。
http://www.turbolinux.co.jp/
【関連記事】ターボリナックス ジャパン(株)が、技術者認定制度“TurboLinuxエデュケーションプログラム”を実施へ
【関連記事】米TurboLinuxが、「TurboLinux」の中国語版のバンドルに関して、中国のハードウェアメーカー3社と提携
【関連記事】ターボリナックス ジャパン(株)が、TurboLinux Server 日本語版 6.0シリーズを発売
【関連記事】ターボリナックス ジャパン社長兼CEO、Cliff Miller氏の講演
【関連記事】ターボリナックスジャパンが「TurboLinux PRO日本語版 4.2」を発表
【関連記事】TurboLinux 日本語版 4.0買っちゃった
【関連記事】「TurboLinux 日本語版 4.0」発売日レポート!
【関連記事】ターボリナックス ジャパン、「TurboLinux 日本語版 4.0」の販売を開始
【関連記事】パシフィック・ハイテック、社名をターボリナックス ジャパンに変更
【関連記事】パシフィック・ハイテック、『TurboLinux 4.0』を7月上旬に発売予定
【関連記事】パシフィック・ハイテック、『TurboLinux 簡体中文版』の提供を開始
【関連記事】『TurboLinux Server』を発売

「LASER5 Linux」:レーザーファイブ(株)
レーザーファイブは、1995年に日本語拡張キット「JE」を組み合わせた、初めての日本向けLinuxディストリビューション「Linux+JE」を発売。同社は、米Red Hatとライセンス契約を結んでいたが、Red Hat日本法人設立のため契約を打ち切る。「LASER5 Linux」はRed Hat Linuxを日本語化したもの。
http://www.laser5.co.jp/
【関連記事】レーザーファイブ(株)が、「LASER5 Linux 6.0 Server Edition for Alpha」を12月下旬から出荷
【関連記事】[速報]LASER5 Linux6.0発売(1)充実したパッケージ構成
【関連記事】レーザーファイブ社長窪田敏之氏インタビュー
【関連記事】「LASER5 Linux 6.0」詳細情報
【関連記事】五橋研究所、米Red Hatとの契約打ち切りに関する記者発表
【関連記事】[続報] 日本語redhat Linux 6.0発売中止。「LASER5 Linux 6.0」発売へ
【関連記事】【緊急速報】日本語redhat Linux 6.0発売中止に! 「LASER5 Linux 6.0」発売へ
【関連記事】レーザー5、『日本語redhat Linux 5.2』を発売

「Vine Linux」:Projedt Vine
「Vine Linux」は、PJE(Project JE)を開発したメンバーらによって構成される“Project Vine”が1998年12月に発表した日本語Linuxディストリビューション。細部まで徹底的に日本語対応したチューニングには定評がある。風穴氏によれば、安定志向だという。パッケージ商品の販売元は(株)技術評論社。
http://vinelinux.org/
【関連記事】(株)技術評論社が、「Vine Linux 2.0 CR Official 製品版」を3月上旬に発売
【関連記事】Vine Linuxを入れてみよう!!
【関連記事】「Vine Linux 1.1 CR with Wnn6」が本日より2000本限定発売開始
【関連記事】技術評論社、『Vine Linux 1.1CR』Official製品版を18日に発売
【関連記事】『Vine Linux 1.1』がリリース
【関連記事】『Vine Linux 1.0』がリリース
【関連記事】Vine Linux 1.0 beta1公開
【関連記事】Project Vine、『Vine Linux 0.9beta7』をテスト公開
【関連記事】Vine LinuxオリジナルのGUIメーラー『vmail-0.7.1』がテストリリース

「Kondara MNU/Linux」:Kondara Project
Red Hat Linuxの最新開発バージョンをベースに最先端を追求する新しいディストリビューション。風穴氏は、「Kondaraのメーリングリストを見ていると、ユーザーと開発者がかなり重なっている。(Linuxカーネルの製作者)Linus氏自身が使うために(Linuxを)作ったといわれるように、(Kondara MNU/Linuxも自分たちが使うために作っているので)Linuxらしいディストリビューション」と語った。パッケージ商品は、デジタルファクトリジャパン(株)から12月1日に発売された。
http://www.kondara.org/
http://www.digitalfactory.co.jp/
【関連記事】コミュニティによるディストリビューション「Kondara MNU/Linux」をレビュー
【関連記事】新ディストリビューション「Kondara MNU/Linux 1.0」がパッケージで発売

「Linux MLD」:メディアラボ(株)
「Linux MLD」は、Windowsからインストールできる異色のLinuxディストリビューション。Linux専用パーティションを用意しなくても、WindowsとLinuxを共存できる。さらに、Windowsのハードウェアやネットワークなどの設定を、そのままLinuxの設定として流用できるため、インストールが初心者にも容易。12月には、最新版となる「linux MLD4」が発売された。ちなみに、風穴氏のプレゼンテーションには、同ディストリビューションが使われていた。
http://www.mlb.co.jp/
【関連記事】メディアラボ(株)から、Linux MLD 4発売開始
【関連記事】簡単にインストールできるディストリビューション「Linux MLD 4」が12月10日から発売

「Caldera OpenLinux」:米Caldera Systems
米Novellの元CEO(最高経営責任者)であるRay Noorda(レイ・ノーダ)氏がオーナーとなっている米Caldera Systemsは、米Red Hatと並んで、古い時期からLinuxのディストリビューションパッケージの開発を行なってきた。個人ユースよりも、ビジネスユースを意識した製品。GUIインストーラをいち早く採用したことでも知られる。1999年には、(株)ネオナジーが販売代理店となり、日本市場に進出。
http://www.caldera.com/
http://www.openlinux.ne.jp/
【関連記事】OpenLinux 2.3の日本語版が27日に登場。その真価は?
【関連記事】「OpenLinux 2.3日本語版」は11月27日発売

「Red Hat Linux 6.1 日本語版」:レッドハット(株)
「Red Hat Linux 6.1 日本語版」は、米Red Hatの100%出資の日本法人である“レッドハット(株)”がリリース。だが、日本語版も米国本社において開発されているため、日本向けの製品にできるかどうか、風穴氏は疑問だという。Red Hat Linuxの公認であることを武器にSIベンダー6社とパートナー契約を結んでいる。「米Red Hatは、米国以外でのビジネス(ヨーロッパ進出など)があまりうまくいっていない」ので、今後注目だという。
http://www.redhat.com/jp/
【関連記事】レッドハット(株)、Linux用SCSIドライバ開発
【関連記事】Linux Conferenceでレッドハットの事業方針を説明
【関連記事】米Red Hatと、米Cygnus Solutionsが合併
【関連記事】COMDEX/Japan'99講演 Red Hatのエンタープライズ・ソリューション
【関連記事】日本法人のレッドハットから出る初の製品「Red Hat Linux 6.1 日本語版」をレビュー
【関連記事】レッドハットが企業ユーザ向けサポート発表
【関連記事】Red Hatが、サポートのサービスを、Linux以外のオープンソースソフトウェアへと拡大
【関連記事】Red Hatが「Red Hat Center for Open Source」を設立
【関連記事】レッドハット、Red Hat Linux 6.1日本語版を発表
【関連記事】Red Hat Linux 6.1発表
【関連記事】Red Had日本法人設立、Robert Young氏記者会見
【関連記事】Robert Young氏 独占インタビュー
【関連記事】米Red hat、「Red Hat Linux 6.0日本語版」を発売
【関連記事】Red Hatが株式公開、株価は3倍以上に
【関連記事Red Hat、8月から株式試験公開へ--600万株を売却予定
【関連記事Red Hat、年内中に日本法人を設立

「Linux-Mandrake」:仏MandrakeSoft
「Linux-Mandrake」は、フランスで開発されたRed Hat Linuxベースのディストリビューション。インストーラは、21カ国語に対応する。日本では、あまり使われていない。
http://www.linux-mandrake.com/
【関連記事】(株)五橋研究所、「マイスター Linux Mandrake 6.1」を発売
【関連記事】「Linux-Mandrake 7.0-BETA」配付開始

「SuSE Linux」:独SuSE
「SuSE Linux Mandrake」は、ドイツ生まれのRed Hat Linuxベースのディストリビューション。収録パッケージの数も多い。現在は、主力を米・Oaklandに移し、ディストリビューションベンダーとして米Red Hatに並ぶ存在感を示し始めている。風穴氏によれば、「SuSEのマーケティングディレクターは日本市場に興味があり、日本市場進出の可能性もある」という。
http://www.suse.com/
【関連記事】SuSE、VMware 1.0トライアル版をバンドルした「SuSE Linux 6.2」を8月にリリース
【関連記事】SuSE、『SuSE Linux 6.1』の出荷を開始

「Debian GNU/Linux」:Debian GNU/Linux
「Debian GNU/Linux」は、高度なパッケージ管理を特徴とするLinuxディストリビューション。特徴は、完全にボランタリなDebian Projectが主導になって開発されている点。システムの整合性を保ったまま、個々のパッケージのアップデートが可能なため、Linuxのパワーユーザーに人気が高い。
http://www.debian.org/

「Corel Linux」:カナダCorel
「Corel Linux」は、11月のCOMDEX/Fallで発表された、GNU/Linuxベースのディストリビューション。Windows対応のアプリケーションソフトを開発しているCorelならではの、GUIベースのインストーラが特徴。Windows版アプリケーションソフトのLinuxへの移植も熱心で、それらをバンドルした製品を模索している。
http://linux.corel.com/
【関連記事】カナダのCorelが、Corel WordPerfect Office2000 for Linuxのベータテスト受け付けを開始
【関連記事】デスクトップ向けディストリビューションの本命!? Corel LINUXをレビュー
【関連記事】Corel記者発表会詳細
【関連記事】Corel LINUXの日本語化が発表
【関連記事】Corel LINUXの今後を聞く - インタビュー
【関連記事】Corel LINUXがCOMDEXで発表
【関連記事】デスクトップ市場を目指す「Corel LINUX」Preview 1をレビュー
【関連記事】Corel LINUXのベータテスト受け付け開始
【関連記事】Corel、AmigaとLinuxアプリケーション開発で提携
【関連記事】カナダから新しいディストリビューション登場
【関連記事】Corel、NetWinder部門を売却しソフトウェアビジネスにフォーカス 『CorelDRAW』もLinuxに移殖へ
【関連記事】Corel、Corel Linux Advisory Councilを設立
【関連記事】コーレル、Linux対応『WordPerfect 8』の配布を開始

「Storm Linux」:カナダStormix Technologies
「Storm Linux」は、カナダStormix Technologiesが開発しているDebian GNU/Linuxベースのディストリビューション。GUI管理機能やパッケージ管理機能のほか、リモートのマシンを管理できる機能“Storm-Administration-System(SAS)”も備える。
http://www.stormlinux.com/
【関連記事】Storm Linuxの製品版「STORM LINUX 2000」のダウンロード開始
【関連記事】Storm Linux誕生

「Green Frog Linux」:Austin K. Kurahone氏
「Green Frog Linux」は、バイナリファイルのみなら100MB以下のコンパクトなLinuxディストリビューション。開発者が16歳の日本人という点でも注目を集めている。現段階では、パッケージ管理システムなどは備えていない。
http://members.linuxstart.com/~austin/

「Plamo Linux」:小島三弘氏
「Plamo Linux」は、小島三弘氏がSlackwareをベースにインストーラを日本語化したり、PJEを元に日本語環境を構築するなどしてシステムを開発しているLinuxディストリビューション。このPlamo Linuxをベースに、NECのPC-9800シリーズに対応した派生ディストリビューションも開発されている。
http://www.linet.gr.jp/~kojima/Plamo/

「Slackware Linux」:Patrick Volkerding氏
「Slackware Linux」は、一般に普及した最古のLinuxディストリビューションの1つ。現在でも開発が進められており、10月には「Slackware 7.0」がリリースされた。日本でも、ある時期、多くのLinux関連書籍がSlackwareをバンドルしていたため、今でも根強いユーザーがいる。
http://www.slackware.com/
【関連記事】Slackware 7.0がリリース

 最後に、風穴氏は、「Linuxのディストリビューションは、世界の地域・言語ごとに存在し、他のOSと同じようにディストリビューションを数えることはできない」と語り、「ディストリビューションは、今後も増えていくだろう」と講演を締めくくった。

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード