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COMDEX Japan'99講演 Linux Distroの将来

1999年11月12日 19時32分更新

文● 吉川

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 11月11日、11時30分から、国際会議場(幕張メッセ内)において、レーザーファイブ(株)取締役CEO 窪田敏之氏の講演「Linux Distroの将来」が行なわれた。最近米国では、ディストリビューションのことを“Distro”と呼ぶということで、この講演の題名にも使われたのだ。

レーザーファイブ(株)取締役CEO 窪田敏之氏

 講演内容そのものは、Linuxユーザーに向けてというよりは、Linuxをあまり知らない人に向けた内容で、「Linuxとは何か?」といった話から「Linuxの成り立ち」、「Linuxの特徴」、そして「Linuxの過去、現在未来」、といった話に移った。

 ここでいう未来というのは、10年も先ではなくて、1~2年ほどあとのこと。現在のLinuxは高信頼性の中小規模サーバとして、エンタープライズワークステーションに最適の高機能OSとなっており、フリーのコミュニティ主導で発展してきた中に、企業が加わっている段階だという。そして、未来は大規模サーバで基幹OSとなる可能性もあり、さらにパーソナルOSとして期待が持てる、というものだった。

xDSL高速回線とDistro

 次に、日刊アスキー Linuxの窪田氏執筆のコラム「Linux山物語」でも触れられているが、xDSLとLinuxディストリビューションの話題に移った。それによると、最近東京めたりっく通信(株)や(株)ソフトバンクもxDSL事業に乗り出しているが、これが広まれば、ネットワークブート機能が付いた、OSがインストールされていないパソコンを買ってくれば、FTPを通じてOSがインストールされる状況も出てくるだろうという。すると、ディストリビューションパッケージが売れなくなる。ディストリビューションベンダーはまだまだ“箱売り”がメインのため、3年後にはディストリビューションベンダーは消滅してしまうだろう、という。

 そこで、ディストリビューションベンダーは、ソフトウェア販売といった形態だけではなく、プリインストールやバンドルによる出荷という形態を考えなければならないという。コンピュータを使う客としては、たとえばインターネットでコンサートのチケットさえ予約できれば、使っているのがWindowsでもLinuxでも関係ない、というわけだ。

サーバ向けDistro

 次に、ディストリビューションをサーバ向け、クライアント向けにどうやって切り分けていくか、という話に移った。これは、たとえばLASER5 Linuxにも実装されているCD-ROMの自動マウント機能を例にあげ、いままでパソコンを使ってきた人は「いちいちmountするなんて面倒だ」と感じるのに対し、サーバ管理者は自動マウントはいかがなものか、といった気持ちになるだろうという、一般ユーザーとサーバ管理者の立場の違いを説明。現在のディストリビューションは、クライアントとサーバの折衷案をとっているという。

 ここで、SGIやVA Linux Systemsなど、Linuxを自社でカスタマイズしている企業を例に出し、こうした、ハードウェアと組み合わせたLinuxシステムの注目度を語った。

 窪田氏がVA Linux Systemsの社長兼CEO Larry Augustin氏と話したときに、Larry氏が「サーバは電気をいれたらすぐに使えなければだめだ」と言っていたこと、SGIも同じような考えで、オペレータの教育までを行なおうとしていることを挙げ、ディストリビュータはハードウェアまで考えなければいけなくなってきたのかなと、思っているという。しかし、レーザーファイブ自体はハードウェアを作る規模にはないので、他企業と連携して事に当たっていくかもしれないとした。

レーザーファイブの概要と戦略

 サーバ向けDistroの話のあとは、世界中のディストリビューションをその特徴とともに紹介し、本題を終えた。こうした講演の最後には、講演者の自己紹介などがあって締めくくられるのだが、このレーザーファイブの概要と戦略でも面白いお話が聞けたのでレポートする。

 それによると、レーザーファイブでは、サービス、ソリューションの提供のほか、アライアンス(提携)などのビジネス強化をはかっていくという。このアライアンスが気になるところだが、「まだ発表はできないのですが」(窪田氏)とのことで、そのうちニュースがあるかもしれない。

 そして、LASER5 Linuxの今後の予定として、1999年11月末に、6.0にさらに安定化と充実化を施した「LASER5 Linux6.1」を投入することを明らかにした。そして、2000年末に、カーネル2.4搭載の7.0を予定しているという。ただし、これは2.4リリースのタイミングに左右される、という点をつけ加えた。この7.0は、4~8CPUのハードウェア構成を可能にし、64bitCPUサーバ向けの機能、USB、XFree86 4.xへの対応などが含まれることを語った。

 面白かったのが、LASER5 Linux8.0に話が及んだこと。これは、窪田氏が「まぁ、まだ考えているだけなんですが」としたうえで話したことで、USB2サポートによるシンプルジオメトリなどに話が及んだ。もっともこれは、計画というよりは、予想といったほうがいいのだが、聞いていて楽しいものになっていた。ちなみに、8.0は2001年3月末の登場、となっている。

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