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Robert Young氏 独占インタビュー

1999年09月10日 15時27分更新

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 World PC Expo 99およびRed Hat日本法人設立発表のために来日した、米Red Hat CEOのRobert Young氏と、同社の日本法人レッドハット(株)代表取締役の平野正信氏に、日本法人設立までの経緯、および今後の方向性についてお話を伺った。

Robert Young氏と平野代表取締役
Robert Young氏と平野正信氏
[アスキー] まず、レーザーファイブ(株)というパートナーと分かれて日本法人を設立した経緯についてお伺いしたいのですが。
[Robert Young(以下Bob)] 今年の5月から7月にかけて日本市場の調査をしました。その結果、日本でLinuxを使っているのは、個人のハイエンドユーザーが多く、大企業でLinuxを使っているところはあまりないということがわかりました。我々のターゲットは企業です。ところが、レーザーファイブでは、おもに個人や小さな会社が対象にだったので、ビジネスの規模を大きくすることはできません。そこで平野さんに来ていただき、パートナーであるIntel、Oracle、Dellとともに日本市場に参入するということになりました。その結果として、レーザーファイブと分かれることになったのは残念です。また何らかの形で一緒に仕事したいと思っています。
 日本におけるLinuxのシェアはまだまだ小さく、ビジネスチャンスはあります。TurboLinux、レーザーファイブ、Calderaというオープンソースを押し進める仲間と、OS/2、Solaris、WindowsといったOSに食い込んで行くつもりです。
[アスキー] やや、あまり準備が進まないうちに発表がされたような印象があるのですが、9月3日に日本法人を正式に登記するというのは、具体的にいつ頃決定されたことなのですか。
[平野] 日本法人はいずれは設立することになっていました。問題は、いつ、日本法人設立の目的をどうするのかということと、いつ機能の委譲をしていくのかということでした。ただ、Bobは最近そういったオペレーションを正確に細かいところまでは把握していません。それは日本の戦略が決まったときには、私たちの採用を含めて、日本のビジネスプランをどうするかについては、彼以外の海外戦略担当者がある程度すすめていたからです。
[アスキー] 企業をおもなターゲットにしていくというお話ですが、日本でもレーザーファイブ(当時五橋研究所)がIBMと共同でソリューションセンターを設立したりという動きがありました。そういった取り組みでは何が不足だったのか。また、今後企業向けのマーケティング等を強化していくために具体的にどういったことをするのでしょうか。
[Bob] マーケティングの計画に関しては、現在まだお話できる段階ではありません。平野代表取締役のほうから数週間のうちに話ができるかとは思いますが。
 また我々のパートナー(IBM、Dell等)も、「Red Hat Linux」を求めるお客様がいるからこそ対応してくれるので、我々自身による「Red hat Linux」の需要を掘り起こす作業が必要なのです。
[アスキー] 次に「Red Hat Linux」の日本語化は、米国で作業されるのか、日本でなのかをお伺いしたいのですが。
[Bob] どちらで開発するかに関しては、状況によって変わって来るでしょう。まず我々よりも日本語の処理に通じた、活発な日本の開発コミュニティと関係を持つことからはじめたいと思います。
[平野] 実は、日本語開発に関しては、すでにアメリカでも作業を進めています。そのために、日本人が何名か常駐しています。そうはいっても、ローカリゼーションのキーコンポーネントは、かなり日本のコミュニティの中に存在しています。そういったコミュニケーションに関しては、やはりローカルな我々がお話をしたほうがいいだろうと考えています。
[アスキー] 最初の製品のリリース時期に関して、コメントをいただけませんか。ユーザーの方々も期待が高まっていると思いますが。
[平野] まだ正確にお答えできる状況ではありません。ただ、製品化やサポートのメカニズムの話もきちんと進めています。すべてきちんと決まったところで、アナウンスするようにしたいということです。
[アスキー] 今後、英語版がでてから日本語版が出るまでの期間というのはどれくらいになりますか。
[Bob] 最終目標としては、1つの製品ですべての言語圏に対応するのが目標です。すなわち、同時リリースです。ただ、そこまでには数年かかると思います。
[平野] その話は私もこのプロジェクトに加わってすぐに、むこうのエンジニアリングチームに聞きました。今の状況では3カ月以内。早い時期に1カ月以内に出すのを目標にしたい、ということを言っていました。彼が今言った同時に出すということが可能になるのは2、3年後ということになると思います。
[アスキー] 製品の大きな方向性をお伺いします。サーバ向けの製品、クライアント向けの製品といった特色を出しているディストリビューターがあります。「Red Hat Linux」は、今後企業をターゲットにするというお話でした。それに向けてどのような機能強化、あるいは方向性をうちだしていくのでしょう。
[Bob] 機能を追加していくよりは、品質を高めていくという方向性を取っていきます。サーバなのか、クライアントなのかというご指摘に関しては、今後はOSとしては両方が必要になっていくと思います。
 特定の市場用に関しては、サーバ(機能の)サポートの強化ということも考えられます。ただ、それはクライアント向けとしてもいいものになるはずです。
[アスキー] サーバ市場ですと、CPUを複数搭載したプラットフォームで動かすようなケースがでてくると思います。そういったものに対応したカーネルのチューニングをRed Hatでやる予定はありますか。
[Bob] 我々は、非常に緊密にカーネルの開発チームと作業しています。すでにXeon、8プロセッサに対応しています。これからのカーネルのリリースでは、16そして32プロセッサに対応して行きます。
[アスキー] 日本法人を作られたわけですが、日本以外の海外法人についての考えをお聞かせください。
[Bob] すでにドイツ、フランス、イタリアで計画は動きはじめています。「Red Hat Linux」のユーザーは全世界に存在します。そして彼らはサポートを求めています。我々はそういったサポートを提供するリソースもありますし、提供するのが義務だと思っています。

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