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Endless Dream

1999年08月13日 00時57分更新

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 今回は少し方向の異なる話を、気休めとして書いてみる。vi派を名乗っておきながら、実は、前回・前々回はパワーザウルスを使って原稿を書いた。半日セミナーに参加していて、内職しながら聴いていた次第である。ノートPCを広げてパコパコ打つよりも静かで周囲の迷惑にならないという気配りである。また、ザウルスの手書き入力は、よくできていると思う。

 で、今回はパワーアップしてICRUISEで書いている。ICRUISE(ザウルス アイクルーズ)が出た当初は、「またこんな高いものを出して……」と多少バカにしていたのだが、店頭で実際に触ってみるとキレイだし、手書き認識の精度も速度も向上しており、とても欲しくなってしまった。だが、問題がいくつかあった。価格が高価であること、表計算がないこと、LAN接続できないこと、ダイヤルアップでワン夕イム・パスワードを使えないこと、Palmよりもオプション・アプリケーションが少ないことなどである。PDAデバイスにどこまでの機能を求めるかという問題といえるが、igetty(ザウルス アイゲッティ)ならともかく、ICRUISEのようなハイエンドには、多くを求めてしまいたくなるというものだ。

 そのような理由でICRUISEを買おうか迷っていた時に出会ったのがエプソンの「Locatio」である。GPS機能を塔載し、PDAとデジカメ機能もあり、PHSも一体化したCOMモデル(Locatio COMモデル PNV1000P)であれば、手軽にどこでも通信できるというわけで、つい購入してしまった。しかし、エプソンの意欲作とはいえ、使い込んでみると不満点も目に付くようになった。まず、本体メモリが少なく、メールやデジカメのデータをためこむには、コンパクトフラッシュメモリを追加購入して移すしかない。しかし、本体メモリのデータを一括してコンパクトフラッシュに移動できない。メールでは、テキスト添付ファイルを別ウインドウに開くので、画面表示エリアが狭くなる。PDA関係機能が弱く、今のところ追加アプリケーションも存在していない。また、PC連携ソフトの機能が弱く、個々のPDAデータをPC側で連携処理できない。版権の問題か、地図情報を画像ファイルとして送信できないため、Locatio同士でなければ位置情報交換ができない(異機種とのデータ互換性に欠ける)。このような不満点も、時を重ねれば解決されるのであろうが、現時点での利用を考えるとPDAとしては使いづらい。

 というわけで、ICRUISEも買ってしまったのである。Locatioは、もっぱら、GPSを人に見せて自慢するのが主目的となってしまったが、いざとなればPHS経由で緊急メールも手軽に出せるので、まだ手放せない(液晶面が皮脂でベタつくが、PHSとしても使えるし……)。ノートPCは、PDA的手軽さに欠けるが、機能的には必要条件の多くを満たしている。なにより、プレゼンテーションには欠かせない。おかげで力バンの中にノートPCとLocatioとICRUISEと3つも持ち歩くことになっている。

 今回、なぜスタパ斉藤のような話を書いたかといえば、私がPDAに求めている機能の多くは、Linux + X Window Systemで実現できそうだからだ。PDAにLinux、そんなバカな、と思う人は、スタンフォード大学のウェアラブルのサイトにあるマッチ箱程度のWWWサーバの写真(http://wearables.stanford.edu/)を見てほしい。AMDのチップを搭載したLinuxサーバだ。また、COMPAQ(旧DEC)の研究所でもLinux + X Window Systemを利用した「itchy」というコード名のPDAデバイスを作成している。X Window Systemでは、すでに音声入力や手書き文字認識も可能である。Windows CEと比較しても勝るとも劣らないPDAプラットフォーム、それがLinuxなのだ。 - オープンシステム - ネットワーク機能 - 豊富なアプリケーション これらを兼ねそなえたLinuxべースのPDA、日本のメーカーの技術力なら作るのはたやすいのではないだろうか。

樋口 貴章/ひぐち たかあき

プロフィール
1961年生まれ。今を去ること約15年ほど前、インターフェースの別冊付録「UNIXの世界」に書かれていた「UNIXの国のアリス」(萩谷昌己著)を読んでUNIXに興味を抱く。以来、体にしみついたコマンドラインは手放せないvi派。サン・マイクロシステムズ(株)ディベロッパープログラム推進部勤務。日本Linux協会事務局長、日本インターネット協会幹事、UBA(オープンシステム推進機構)Linux部会長、Javaカンファレンス幹事。

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