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Linuxの今(その2)

1999年08月09日 10時42分更新

文● テンアートニ 佐藤栄一

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 前回は、NovellのNetWareが日本に定着するところをお話しました。日本のLAN創世記とブレイク直前のLinuxの酷似した空気を感じていただけたでしょうか。

 さて、前回の続きです。Novell社の日本法人:ノベル(株)の創立が1990年3月です。今から9年前です。日本法人の登場で、一気にNetWareの導入気運が高まります。LANブームの到来です。DOS/V機の登場による低価格化も追い風となりました。さらにLAN環境で動作するアプリケーションが登場し、「グループウェア」や「クライアント/サーバ」が主役となりはじめます。「アプリケーションサーバ」ブームの到来です。そして、「インターネット」ブームが、NetWareとWindows NTのシェア逆転を決定付けました。この間、ざっと5~6年です。

 その間、ベンダーは、認定技術者の確保に追われました。NetWareの販売代理店になるためには、認定技術者が必要でした。さらに技術者の認定制度が定着すると、認定技術者の増強が急務となりました。1人の認定技術者を育成するには、時間と費用がかかります。本来なら、技術力があれば認定を受ける必要はないはずです。

 しかし、ベンダーには、選択の余地がありません。それは、もっとも認定技術者を求めているのが、顧客だからです。顧客からみると、星の数ほどのベンダーを選択するスケールが必要です。その1つが、認定技術者の有無や人数ということになります。

 Linuxの技術者認定制度は、賛否別れるところです。しかし、このまま、Linuxがメジャーになれば、米国にすでにある技術認定制度(たとえばRed Hat Certified Engineer Program:編注)がクローズアップされます。米国で取得する人まで現われるかもしれません。そうなれば、企業ユーザーは、技術認定を珍重して、ベンダー選択の大きなファクターとなるでしょう。

 個人的には、技術認定を珍重する風潮は嫌いです。技術認定は、教育を受け(必須の場合は高額になります)試験を受け、その瞬間の記憶力をテストしています。長年の経験やカンが認定試験で評価されることはありません。ベンダーの技術者のように商売のツールとなる人は、お金を出して取得すればいいのです。

 マイナス面だけとは限りません。技術認定を機会に基礎的な面から再確認できるチャンスです。特に基礎的な知識は、OSに依存しない共通の知識です。激動のコンピュータ業界で、生き抜くためにも基礎技術の知識は有用です。

 今回は、過去を振り返るうちに技術者認定に話が向かいました。前回のコラムで紹介したように、企業ユーザーは安心や責任所在明確化(責任転化)のために日本法人の設立を望みます。同じように、ベンダーや技術者を値踏みするスケールとして技術者認定が利用されるのです。こう考えると、これまでの技術者認定制度は、あまり建設的な制度とはいえないですね。

テンアートニ

プロフィール
 創立記念日は、Javaが発表された5月23日。1社独占のパソコン環境を、エンドユーザー主導へ導きます。創立してやっと3年目、JavaやLinuxを大学で経験した超若手から、彼らが生まれる前からコンピュータ業界にいる超ベテランまで、多種多様な人間であふれています

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