日経BP ISBN 4-8222-4148-3 価格1200円(税別)
Linuxという文字が、新聞から週刊誌にまであふれる時代になってきました。どこの出版社も、なんとかしてLinuxの流れに便乗すべく多数のLinux解説書を出すようになったので、読者はしっかり選別してください。
本のイメージは、今回は帯をしたままです。この帯には、Linuxの開発者のリーナス・トーバルズ氏のにこやかな顔と、Windows帝国の皇帝であるビル・ゲイツ氏の神経質そうな顔が並んでいて、両世界の今後を暗示させることで読者へのアピールを図っています。
本書は縦書きで、最初は著者のLinuxとの出会い、Linux誕生の話で、なるほどと思いながら読み進んでいくと、オープンソース、Java、インターネットの話がかなり詳しく説明されます。インターネット関係は、この手の本どころか、Linuxの入門的技術解説書でもしていないような細部にわたる説明が急に行なわれ、本書の読者対象と記述内容にかなりズレがあります。
また、書名から受ける印象では、WindowsとLinuxを対比させながら話が進むのかと思ったら、新しいソフトウェア、インターネット社会の生成過程であったさまざまな歴史や思想の話が中心になってきます。初心者向きに書き始めたのですが、つい書き過ぎてしまって、Linuxを使い始めたくらいの人、あるいはコンピュータの世界に長くいた人で、海外のソフトウェア開発の新風についての裏話を知りたい人に適当な内容になっています。
新しいソフトウェア開発形態のパラダイムとしてLinuxがあり、その説明のために多くのことが述べられています。開発者の顔写真はありますが、図はわずかにあるだけで、コンピュータあるいは画面の写真などはいっさいなく、文章だけの説明なので、ほとんどビジネス書の感覚です。
本書の副題「オープン・ソースが世界を制する」が表紙の中に目立たないように配置されていますが、こちらが内容にぴったりの題名です。LinuxとWindowsを題名に入れたのは、やはり本の売り上げを考えてのことでしょう。