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Storm Linux続報:緊急電話インタビュー

1999年07月13日 06時37分更新

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 先ほどお伝えしたStorm Linuxについてだが、開発者のひとりでもある、カナダStormix Technologyの池田氏へのメールでのインタビューを、お伝えする。

[日刊アスキー] SAS(Storm Administration System)について、詳しくお教えいただきたいのですが。たとえば、SASでどのようなことが可能になるのでしょうか。
[池田] SASの構造から説明します。Fig 1.0に図を表示します。SASは3つの部分から構成されています。モジュール(Module)、MID(Module Interface Daemon)、SAT(Storm Administration Tool)です。
SASのアーキテクチャ
Fig 1.0
[池田] 「モジュール」が実際に作業をするプログラムです。つまり、何かプログラムをインストールしたり、コンフィギュレーションをしたりします。これは、C、C++、Perlどんな言語でも用いることが可能です。また、SIL(Simple Interface Language、Fig 1.1)を使用してクライアント側へユーザーインターフェイスを表示させます。たとえば、インストールプログラムの中で使用されているウィンドウ群は、モジュールがSILを発信してクライアントサイドのモニタ上に表示させているのです。
window(win1);
win1:title("Hello World");
container(win1.con1);
win1.con1:type(hbox, false, 0);
show(win1.con1);
button(win1.cont1.button1);
win1.cont1.button1:label("Hello World");
show(win1.cont1.button1);
show(win1);
EOS

Fig 1.1 SIL ver1.0の簡単な例

[池田] 「MID」はクライアント側からの命令によってモジュールを起動したり、停止させたりするためのプログラムです。たとえば、クライアント側から、インストールモジュールを起動せよと要求がきたらインストール モジュールを起動させます。
 「SAT」はモジュールから送られて来る SIL を解析して、その結果をモニター上に表示させるプログラムです。また、ユーザーインターフェイスから入力された情報を、モジュール側に送るのも重要な機能の1つです。SAT の優れている点は、Xウィンドウが走っていればグラフィカル ユーザーインターフェイスを、そうでなければ、テキストコンソールにユーザーインターフェイスを表示する点です。つまり、1つのプログラムでグラフィカル ユーザーインターフェイスと テキスト インターフェイスが同時に操作できることです。
 SASのもっとも優れている点は、SOCKET を通して遠隔マシンの操作可能になることでしょう。たとえば、システム コンフィギュレーション、インストールなどが離れた所から可能になります。
[日刊アスキー] 次の質問ですが、なぜDebian GNU/Linuxをベースにしたのでしょうか。
[池田] それは、Debian GNU/Linux のDPKG技術を使ったシステム管理(アップグレード)技術が優れていると確信するからです。ただご存知と思いますが、システム管理のユーザーインターフェイスである dselect コマンドが不評です。これに関しては、dselectコマンドに代わるもっと、使いやすいインターフェイスを次期バージョンで開発する予定です。
[日刊アスキー] オープンソースで開発を行ない、GPLを適用するとのことですが、現在何人程度の方が開発に従事されておられるのでしょうか?
[池田] アルファ版は、Garthと Kevin と私の3人で開発しました。次期バージョンに向けて、これからもっと人数を増やしてゆく計画です。
[日刊アスキー] 日本語化の予定は?
[池田] はい、あります。時期に関しては今のところ不明ですが、できるだけはやく対応したいと思っています。

緊急電話インタビュー

メールに続いて、池田氏に緊急電話インタビューも行なった。その模様もお伝えする。Storm Linuxの開発者は現在3人で、池田氏はその中の1人である。

[日刊アスキー] Debianにいま欠けているものは、分かりやすいパッケージ管理ツールですよね。
[池田] それはつまり、dselectのことですよね。それについては、もっと分かりやすいものを提供する予定です。
[日刊アスキー] ベースになっているDebianのバージョンはいくつですか?
[池田] Slink(2.0)です。
[日刊アスキー] SIL(Simple Interface Language)という言語を開発されたそうですが、この言語によってインターフェイスが抽象化されて、Xやコンソールの区別なしに同じコードでインターフェイスが記述できるし、ネットワーク透過にもなっているんですよね。これは、どういった経緯で開発されたのでしょうか?
[池田] 初めはインターフェイスをGTKで作ろうとしていたんですよ。でも、GTKを直接使うといろいろ面倒くさいですよね。だから、「もう簡単な言語を新しく作ってしまえ」と。そのおかげで、Xに依存しなくなりました。
[日刊アスキー] 池田さんは、どういった経緯でStorm Linuxの開発にたずさわっておられるのですか?
[池田] それは絶対聞かれると思っていました(笑)。いや、カッコ悪いんですが、カナダで仕事を探していまして、そのときちょうどStormixという企業を見つけたんです。まあカッコ良く言えば「流しのプログラマ」ですか(笑)。
[日刊アスキー] 開発されたソフトウェアはGPLにしたいとのことですが、これはほぼ確実なことなのでしょうか?
[池田] はい。ほぼ確実です。
[日刊アスキー] ありがとうございました。

簡単なインストーラや、わかりやすいインターフェイス=SILの存在など、気になるディストリビューションのStorm Linux。日刊アスキーでは、今後もStorm Linuxの追加情報をお伝えする予定だ。最後に、日本からの突然の電話にも快く応じてくださった池田氏に心よりお礼申し上げたい。ありがとうございました。

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