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Coming-Outする国内メーカー

1999年07月12日 21時43分更新

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 IBMやHPがLinuxサポートを本格的に始めたのに追従するかのように、今年に入って国内コンピュータメーカーもLinuxサポートを次々と開始している。3月には、日電(NEC)、富士通がそろってLinuxサポートを発表したほか、4月には日立、6月末には東芝が発表を行なっている。このほか、ソニー自体は、Linuxサポートの発表を行なっていないが、次期Play-Stationの開発環境としてLinuxを使うことを公言している。あとは、家電の王者松下だけである。(松下電器は、プレスリリースは発表していないものの、プリインストールマシンは販売している=松下電器もプレインストールマシンを販売)

 PCを販売する国内のコンピュータメーカーは、長い間、Microsoftにとってはいいお客さんであった。というのは、ワリのいいOEM契約を結び、PC製品のホームページには、IEのダウンロードロゴを載せていたからだ(なんでも、これをやるとWindowsのライセンス価格が安くなるのだとか)。

 それらが次々と、Linuxサポートを行なうことを公表しはじめたが、実際には、お客さん、特に学校関係では、導入にあたって、PC用のUNIXが動くことが要求されていたりして、実際のサポートは、もう少し前からあったと思われる。

 今年3月に米国で開催されたLinux Worldは、ずいぶんと盛況だったが、そこで行なわれたパーティが“Coming-Out Party”と呼ばれた。Coming-Outは、お上品にいうと、「若い婦人の社交界へのデビュー」だが、最近では「自分が同性愛であることを公にすること」という意味で使われることが多い。これから転じて、冗談的に「いままで隠してきたことを公にする」という意味で使ったのが、Linux WorldのComing-Out Partyである。

 こうして続々と日本のコンピュータメーカーも“Coming-Out”したわけだが、いままで、日本メーカーは、こうしたトレンドにみんなで乗ることで、かろうじて方向を間違わずに来た。「あっちも、こっちもやっているから、うちもやる」というのは、主体性がないようだが、少なくとも、リスクを犯さずに、参入分野を決定するよい方法だし、そこで競争が起こることで、価格の低下や技術開発が活発になるなどのメリットもあったわけだ。その最たるものがDOSやWindowsで、CP/M-86に固執した富士通は、シェアを落としたし、MS戦略に乗ったNECがシェアを伸ばしたわけである。インターネットもそうで、いまでは、ホームページのないメーカーが珍しいぐらいである。

 さて、どれぐらい本気なのかは、おそらくLinuxプレインストールマシンという製品の出荷で判断できるだろう。まだまだ、日本メーカーは、Microsoftに対しての「遠慮」が見られる。Linuxではないが、日立がBe-OSをプレインストールしたときも、最初にはWindowsが立ち上がるようになっていて、Be-OSは別パーティションにインストールされていた(もっとも、MicrosoftのWindowsの契約がマシンの出荷台数ごとになっているので、そのライセンス料をどうするかという問題もあるようだが……)。

 最初からLinuxしか入っていないマシンが国内メーカーから出るようなら、それはけっこう本気と判断してもいいかもしれない。だが、国内メーカーだと、やはりMicrosoftが怖いので、デュアルブート程度でお茶を濁しておくところばっかりという気もする。

参考URL

(塩田紳二)

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