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ミスチルを目指して終わるな──坂本龍一かく語りき

2009年03月09日 11時30分更新

文● 広田稔/トレンド編集部

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「夢ないもん」

大谷 (スライドの質問を見ながら)「夢をかなえるために坂本さんは何をしましたか?」という質問をしろということになっているんですけど。

坂本 あのねぇ……、何もしてないな。大体、夢ないもん。

大谷 寝て見るものなんですか?

坂本 うーん、だから、そうだな……。よく最近聞くのは「夢を持たなきゃとか」と言うよね? 「力をもらって」とか。

 ちょっと耐えられないのが、スポーツ選手やアスリートの人が、自分から人々に「夢を与える」とか「勇気を、力を与えたい」とか(言っていることです)。不遜じゃないですか、人間として。ちょっと僕、倒れそうなんですよ、ああいうの聞くと。怒るとか、そういうのじゃなくてね。よく分からないですよね。ああいうところは。ちょっと理解できないんですが。

 というのも僕自身が夢なんか持ったことないし、何かゴールを設定して、そこに向かってがんばるという生き方をまったくしてこなかった。流れに任せてフラフラと、あまり責任のない身分がいいなぁと思ってどこにも所属せずに、だから就職したこともないし、学生身分の延長でやっていて、気が付いたらYMOに入っちゃって。

大谷 次の質問がですね、「自分をプロと思うか?」というのがありまして……。

坂本 それだ。YMOを始めた1年目というのは全然売れなかったし、社会的にもほとんど知られなかったので、もう同じような気分でやっていたんですよ。

大谷 学生ノリみたいな勢いで?

坂本 そしたら、ワールドツアーに出るんだということになって。自分たちから言い出したわけじゃなくて、多分、レコード会社とか、上の偉い人が言ったことだと思うんですよ。そして帰ってきたら有名になっていたという。

 気楽な身分でいたいからやっていたのに、いきなり社会的な責任みたいなのを追わされるようになってしまってですね。具体的には、道を歩いていたら「あ、坂本だ」とか言われて、高校生とか中学生に指差されて。「こんなはずじゃなかった」とずいぶん悩みました。

 でも、実は1年近く悩みながらやっていたんですけど、でもまぁ、やっている限りは社会的な責任も生じちゃうので、そこで初めて「じゃあこれが俺の本職なのかなぁ……」と認めさせられたという、パブリックに。そういう非常に受け身な人生です私は。すべてが。

大谷 でも、すぐ行動に移せるような判断力というか、音楽家としてパッと違うことができなきゃいけないときがたくさんあると思います。そういったところに対する反応とか、感覚は常にキープしておくということはミュージシャンとしてずっとあるということですか?

坂本 そうですね。僕ねぇ、実は小心で臆病なんですよ、こう見えても。さっき、アジ演説していましたけど、よくデモなんかにも行ったんです。みなさんは見たことがないから分からないかもしれませんが、怖い機動隊のおじさんたちがスゴいカッコして鎧みたいなのを着て。

大谷 鎧みたいなの着て(笑)

坂本 鎧っぽくない? こう、盾なんかもって。僕たちひ弱な学生をその盾でぶったり、蹴ったりするんです。

 それで、道で相対していると突然走ってきて、僕たちを捕まえようとするんですよ。そういうときに、僕、一度も捕まったことがないんです。というのは、後ろの方に居ると卑怯なようで、弱腰のようでカッコ悪いじゃないですか。だから割と前の方に居ますが、いつも「今襲われてもどこに逃げたら自分は助かるか」と見ているんです。そういう目配りは割といい(笑) それはきっと臆病だからだと思うんですけど。

 自分を正当化するわけじゃないんですが、冒険家というのは臆病じゃないとできないと言われているんですよね。向こう見ずなやつは一見、カッコいいけど、冒険に出ると死んじゃうわけです。だからどうだという話ではないんですが、仕事のやり方も、割とそういう風ですね。

 YMOに参加したのだって「いつでもやめられるから」だと、「そんな大事にならないはずだから」と、参加したんです。本当に。そういうプレッシャーも今はなくなり、気楽にやっています。

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