「10MB」に収まるかどうか
マシン負荷が低いというのも見逃せない。「MP3ではソフトのプレーヤーを使うと、そのときにかかるCPU負荷が高くなる。ハードのMP3デコーダーを使ってもいいけど、それだと単音しか出せない」と語るのは、iPhone&SmartPhone lab.でミドルウェアの開発を担当する田中氏。ゲームを快適に遊ぶためには、少しでもマシンへの負荷が少ないほうがいいだろう。
さらにiPhoneアプリにおける「10MB制約」に対応できるかもしれない。
App Storeではアップルの制約により、アプリのデータ容量が10MBを超えると、無線LANかパソコンのiTunesでダウンロードする必要が出てくる。出先で3G回線の接続時に面白そうなアプリを見つけたので試そうと思ったら、10MB超えでダウンロードできなかった──。アプリの出来はバッチリなのに、容量が大きかっただけでユーザーに触ってもらう機会を逃すということもあり得るのだ。
i救声主なら、サイズの大きいボイスを圧縮したり、BGMをループ化することで、アプリのファイル容量を減らせるわけだ。
「いろいろ考えている」
ここまで読んできて沸いてくるのが、「それって個人でも利用できるの?」という疑問だ。
海外/国内を問わず、iPhoneアプリには小規模なデベロッパーが数多く参入している。中には、企画もプログラムも自分一人でこなさなければならないけど、「それでもゲームを作ってやる」と意気込んでいるデベロッパーもいるだろう。
一方、i救声主は、ニンテンドーDS向けに提供していた「救声主」を移植したものだ。元々、家庭用ゲームを開発している企業向けのソリューションなだけあって、個人で申し込めるかどうか、そもそもiPhoneアプリの売り上げでペイできる金額なのかが気になるところだが……。
先の幅氏は、「今、そこをまさに社内でもんでいます。現状で言うと、正直、検討中という答えしかないんですよ。でも、家庭用ゲーム機で展開していたビジネスをそのままiPhoneに適用しようとするのは無理なので、そこはいろいろ考えています」と説明する。
DS版の救声主は、1ライセンス37万円から。iPhone向けには、App Storeのマーケットトレンドや商分野に合ったより利用しやすい料金/ライセンス体系を検討中とのことなので、ゲーム開発で大きく注目を集めることになるだろう。
「今まで紹介してきた機能は、プログラマーさんだったら、やってできないことはないと思うんです。ただ、ゲーム開発で同じ時間をかけるのなら、プログラミングよりも、その面白さや企画を詰めるのに使った方がいい。例えばハリウッドでは分業化が進んでいて、俳優を出迎える運転手もいれば、俳優に水を飲ませる専門家の人だっている。ゲームのオーディオだったら、圧縮ソリューションの開発が好きという、うちみたいな『オタッキー』な会社がやるべきなんです(笑)」(幅氏)
CRI・ミドルウェアは、i救声主以外にも、iPhone開発に役立つソリューションを続々と移植していく予定という(詳しくは次ページにまとめた)。ちなみに問い合わせが多ければ多いほど、iPhone&SmartPhone lab.の部隊によりリソースを割けるようになるらしい……(笑) 同社ではちょうど9日までアンケートを取っているので、興味のあるデベロッパーはコンタクトを取ってみるといいだろう。