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「子どもにケータイ持たせていいですか?」の著者に聞く

第2のモバゲーを潰す?――フィルタリング光と闇

2009年02月23日 12時00分更新

文● 西川仁朗/トレンド編集部

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悪い大人にフィルタリングは効果無し?

高橋暁子氏。元小学校教員。Webサイトの編集者を経て、フリーライター兼ネットコンサルタントに。「ミクシィをやめる前に読む本」(双葉社)「660万人のためのミクシィ活用本」(三笠書房)など著書多数

――さて、フィルタリングサービスで、既存ユーザーにはどのような影響が起こるのでしょうか?

高橋 その前に、フィルタリングをかけただけでは安全ではないということは強調しておきます。

 例えば、ネットいじめなどはフィルタリングは防ぐことはできません。また、フィルタリングはカスタマイズでき、個別にアクセス制限解除が可能です。そのため、解除されたサイトでトラブルにあわない保証はありません。また、有害なサイトでもフィルタリングをくぐりぬけることはあるので、かけただけで安心してはいけません。

 ただ、今後リテラシーの低い子どもたちが不用意に自分たちの情報を公開することは多少は減るでしょう。子どもは「ネットは世界中から誰でも見ることができる」ことを理解していません。そこで、「友達にしかアドレス教えてないから大丈夫」と、メールをやりとりするような気持ちで、プロフのゲストブックなどにメールアドレスや電話番号などの個人情報を書き込むケースがよくあります。それらの情報は当然世界中から見られてしまい、悪い大人に悪用されてしまうのです。そういったコミュニケーションできるサイトは、フィルタリングの対象です。

 女の子たちがコミュニティサイトで同年代の子とコミュニケーションをしているつもりで悪い大人と出会ってしまうとか、男の子が広告などをクリックしているうちにアダルトサイトなどを見てしまうといった問題も減っていくでしょう。

 ただ、フィルタリングそのものは親の承認さえ取れれば解除できますし、コミュニティサイトの中でも人気のモバゲー、mixi、GREEなどはフィルタリング対象ではないので、それらのサイトで問題が起きる可能性はあります。一方、カスタマイズなどで自分が解除しただけだと自分のブログを友達が見られない。そういったことも考えられるので、子どもたちの間でウェブサービスを楽しみにくくなるかもしれません。

 

――ネットいじめやネット絡みの犯罪抑制に繋がりそうでしょうか?

高橋 水面に潜る可能性もあります。ネット上で起きる事件やトラブルには、

1、元々あったいじめがネットに広がる
2、ネットでのトラブルが原因でいじめや事件につながる
3、ネットで悪い大人に出会い、事件に巻き込まれる

といったことが原因としてあります。

 1に関しては、いじめ自体はフィルタリングできないので防ぐことはできません。2は、メールでもコミュニティサイトでも起きることなので、これもあまり関係がありません。今後は大人が見えにくいところで、1や2が起こる可能性がありますね。また、3の悪い大人は言うまでもなく抜け道を探してくるでしょう。

 また既に、子どもたち自身が援助交際を目的とした通称「エロフ」を作るなど、サービス運営者の削除対象にならないように隠語でやり取りしているケースがあります。例えば、「苺佐保」は「1万5000円でサポートしてください」「WU吉」は「2万円(諭吉2枚)で寝ます」といった隠語でアピールしているのです。こういった隠語がますます流通するかもしれません。

 一部の意識の高い学校では情報モラル教育の授業を行ったり、MIAU(インターネット先進ユーザーの会)のような外部の団体が講義をするなどのケースがあります。ただ、全ての学校ではなく、多くの先生は、まだ情報モラル教育ができるだけの十分な知識や準備が整っていません。そういった意味で、やはり家庭での情報モラル教育は大切です。

 インターネット、特にケータイの利用に関しては、子どもの頃から教育する必要があります。既にお話しした通り、たとえフィルタリングをかけてもそれだけでは問題は解決しません。また、教育を受けないまま大きくなってから急にケータイを持つのでは、その時に事件に巻き込まれかねません。

 日本人は、「問題があったら取り上げる」「そうでなければ放っておく」と、どちらかの両極端に振れる傾向にあります。今の日本では、ケータイやウェブはいずれ使わないわけにはいかないものです。ただ取り上げるのではなく、「教育しながら見守る」といった手段を取るべきでしょう。

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