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松村太郎の「デジタルとアナログの間」 第8回

松村太郎の「デジタルとアナログの間」

面白さ、デジタル化しています──カヤック柳澤氏

2009年02月21日 15時00分更新

文● 松村太郎

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ユニークなオフィス環境

 鎌倉にあるカヤックのオフィスは、グッドデザイン賞を受賞したユニークな場だ。「和」をテーマにしたというフロアは、机と並んで同じ高さの畳やソファーのスペースがレイアウトされている。それぞれのデスクスペースだけでなく、畳の上に座って作業もできるという自由で開放的な雰囲気だ。

 またそんな環境と同様に、スタッフのワークスタイルも自由度が高い。会社を個人の集まりと捉えることで、よりよい環境づくりを目指しているのだ。

カヤックのオフィス2階

カヤックのオフィス2階。和をテーマに畳を取り入れたデザインだ


柳澤氏 会社全体の方針は、鎌倉に本拠を構えることだけです。ワークスタイルはひとりひとり違うもので、各自が考えるべきだと思っています。究極的には勤務日や勤務時間もなくしたいくらい。だから、新人のプログラマーには24時間オフィスの環境を提供するし、子供がいる人には子育てに支障が出ないワークスタイルを選択できるようにしています。

 もちろん、仕事が進んでいないのに8時から17時しか働かないというような、時間だけしか見ていないワークフローも選択可能というわけではありません。基本的に人は弱い生き物ですから、ある程度のプレッシャーは必要ですし。


 自由な半面、自分を律することが大切な職場だが、仲間の相互作用を生かす場でもあるのだ。愛情あるプレッシャーをかけ合いながら、自分ひとり以上の力を発揮して成長できる。そういう文化のある環境を創ろうとしていることも、カヤックの魅力だろう。

カヤック1階

カヤックオフィス1階には、カヤックとカフェカンパニーとのコラボレーションによるどんぶりカフェ「DONBURI CAFE DINING bowls」がある


デジタルデータに表れる個性

 ウェブでは画像やアニメーションが簡単に利用できるようになり、動画投稿サイトが流行している。しかし、ウェブはいまなおテキストがもっとも力を有する世界なのだという。


柳澤氏 音や画像、動画などは解析になじまないので、例えばGoogleであっても、画像から画像を検索することはできず、現時点ではテキストを入力して、タグを頼りに画像にたどり着くといった検索方法を採用しています。つまり、何か検索したり、処理をするときには必ずテキストが介在する。

 技術はどんどん発達しているし、我々も画像認識の技術などを作っていますが、まだまだ……。向こう5年以上はテキストを中心としたウェブの世界が続くのではないでしょうか。


 このようなテキスト主体のウェブの世界では、テキスト発信力がある人が最も強いのだと柳澤氏は考えている。


柳澤氏 これは小社のセキュリティー顧問に聞いた話ですが、ハッカー同士では、ハッキングの手口から、それが誰の仕業なのかわかるそうです。顔の見えないデジタルの操作にもかかわらず、技を極めるとその手口だけで誰だかわかってしまう。

 オリジナリティーが突き抜けると、デジタル上ですら個性を持ってしまうんですね。そういう意味においては、デジタル/アナログの差はなく、同じなのかもしれません。


 例えば、肉筆のテキストと異なり、デジタルのテキストデータでは誰が書いたのか、その文字からだけで判別することは難しい。デジタルには、そういった一見没個性化する側面があることは確かだ。しかし、デジタルのデータやその処理も、オリジナリティーを極めれば個性がにじみ出てしまうのだ。

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