数本で済むパソコンソフトと、無数に必要なゲーム
いくら中国人だって、タダ(海賊版)だから何でもかんでも高価なソフトをインストールするわけでない。無駄に無数のソフトをインストールしては、リソースの無駄になり、レスポンスが悪くなることは中国のPCユーザーもよく知っている。
だからいくつか定番の(海賊版)ソフトを入れた後、さらにソフトを積極的にインストールしようとする中国PCユーザーはあまり見たことがない。ところがゲーム機はそうはいかない。コンテンツプレーヤー(=ゲーム機)の購入後、できるだけ沢山、興味のままに、安価な海賊版ソフトを買っていく。中国の海賊版ソフトが日本のゲームソフト業界に与える被害額は、米国のビジネスソフト業界への被害額どころではないのではないか。
PS3の海賊版はまだ流通していないが……
盗まれ放題のゲームソフトに解決の手段はないのだろうか? このヒントが、中国のゲーム雑誌「電子遊戯軟件」のコラムで書かれていた。
そのコラムの内容は「プレイステーション3は、いまだに海賊版が出ておらず勝ち組になっている」という皮肉にも読める。具体的には、ディスクをコピーしようともBlu-ray Disc自身が海賊版より非常に値段が高くお得感がないこと、インターネット経由でダウンロード/アップロードしようとも、ファイルが大きすぎてできないということが原因で、ソニーが一人「勝ち組」となっているという。
現在の中国における海賊版ゲームソフトの流通経路は、ショップでDVD±Rメディアに焼かれたソフトを購入するか、ネットでダウンロードするかのいずれかが主流だ。ショップでの海賊版ソフトの販売額は5元(65円)からであり、とてもBlu-ray Discではこの値段は実現できない。また中国のネット環境は最速でも4Mbpsと、数十GBのファイルをダウンロードするのはかなり厳しい。
電子遊戯軟件のコラムではこう書かれていた。「ソニーのプロテクト技術がすごいのではない。(中略)なんとしても海賊版を利用しようとする人には意味のないことだろう。(特殊なディスクの)ドリームキャストの海賊版でさえ登場したのだ」
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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