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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第41回

HIV感染後にブログを始めた「遺言」さんの素顔

2009年01月26日 15時00分更新

文● 古田雄介

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自分自身と同じ境遇の人に向けてブログを始めた

―― 感染が発覚して2ヵ月後にブログを始めたのはなぜですか?

遺言 最初は別に何もする気が起きないというか、あえて何をしようとも思わなかったんです。でも、病気や通院のことで不安になって、色々ネットで調べても目的の情報が見つからない中で、「今後、僕と同じ情報が欲しい人がきっと出てくるはずだ」と思うようになり、自分が検査を受けて通院する過程をブログに残すことにしました。それまでに2ヵ月過ぎていたということですね。

 とにかく最初は病気のことが不安でした。検査したセンターから言われて通院を始めたものの、「病院で怖いことが待っているんじゃないか」「会社にバレるんじゃないか」「今の給料で治療費が払っていけるのか」など色々な心配があったんです。

 だから、検査の実際や毎回の通院でかかった費用などを事細かに記録することを目的にスタートしました。僕が書かなくてもいいんだけど、そういう情報がネットにあれば、すごく高い壁が取り払えるかなと。強いて言えば、そういう気持ちがあったかもしれません。

遺言さん。「文章では女性的な感性になるところがあるんです」といういっぽうで、「現実社会ではわりと短気ですし、闘争心もすごくあります」と自己分析する。ネットで知り合った友人と実際に会った際、「もっと病的な人だと思った」と言われたという

 

―― 「誰かの役に立ちたい」という使命感なんでしょうか。

遺言 あ、人のためとか大層なものじゃなくて、自分がそういう情報が欲しかったというのが一番大きかったですね。なにしろ感染が分かった当初は、他の人との接点が絶たれたような気がしちゃって。

 「これから誰と知り合ってももうしょうがない」と思ってましたから、人のことを考える余裕はなかったです。ただ、強いて言えば、ネットという姿を見せなくていい世界で、僕のことを誰かに知って欲しいという気持ちもあったかもしれません。


―― 複雑なところですね。そうなると、想定読者は病気に関する知識がない人というより、自分自身と同じ病気になった人でしょうか。

遺言 そうですね。僕と同じような境遇になって、ネットで検索して僕のサイトがヒットしたら役に立つかなくらいの感じです。だから、性別や年齢なども全然考えずに始めましたね。


―― 2008年に掲載した長期に渡るシリーズ記事「判決」では、初めてコメント欄を解放しましたね。その統計によると回答者の7割が女性でしたが、やはり女性の読者が多い印象ですか?

遺言 僕も普段どういう人が読んでくれているのか知らなかったので、コメント欄を解放してみたんです。でも、一般の女性読者が多いんだろうなとは思っていました。

 アメブロには「アメンバー」という自分向けのブログ会員みたいな仕組みがあって、その申請を送ってくれる人は最初から女性が多かったんですよ。あと、僕の文章のテイストからして「こりゃ男には受けないな」と感じていましたから、女性の読者が多いのも分かる気がします。

 (次のページ:2ちゃんねるでボロクソに叩かれても更新を続けてきた理由は?)

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