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世界企業パナソニック 90年目の決断 第16回

日本企業は世界でどう戦うべきか?

パナソニックが抱えるグローバル戦略の課題とは

2009年01月21日 12時00分更新

文● 大河原克行

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グローバル人材の育成

 もうひとつ大坪社長が指摘する課題がある。

 それは、「グローバル人材の育成」である。

 パナソニックは、2008年9月11日、第1回グローバルアドバイザー会議を、東京・有明のパナソニックセンター東京で開催した。

第1回グローバルアドバイザー会議

2008年9月11日に、東京・有明のパナソニックセンターで開催された第1回グローバルアドバイザー会議の様子

 グローバルアドバイザー会議は、社名変更、ブランド統一を機に、経営のさらなるグローバル化を目指し、国際的、経済的な視点で、各国政治、経済の実状などに詳しいアドバイザーから事業戦略に対する意見を得ること、一流の見識を持つアドバイザーとの交流を通じ、グローバル人材の育成を強化することを目的としたもので、大坪社長の肝煎りで、1年以上前から計画が進められてきた。

 「当社が、よりグローバルに発展することを考えた場合、これまでの積み上げだけでは、努力しても時間がかかる。違う視点でのアプローチが必要だと感じた。グローバルアドバイザー会議は、2007年4月から準備をしてきたもの。本格的なグローバルエクセレンスを目指すうえで、また、グローバル経営を進めるうえで、効果があると考えている」と、大坪社長はその狙いを語る。

 会議の成果は、同社が推進している中期経営計画「GP3計画」における海外2桁増販の目標達成や、経営のグローバル化の加速に役立たせる狙いもある。

 「経営環境が急ピッチでグローバル化し、世界の市場がひとつになりつつある。一流のアドバイザーを集め、貴重なコメントを得ることで、社内に対して、マインドや目線を世界に向けるきっかけとし、世界に打って出ることを浸透させたい。グローバルなパナソニックを本格的に目指すんだ、ということを社内に植え付けなくては、GP3の根底が不安定なものになる。今後5~10年の本格的な成長、本格的なグローバル化に向けて、目線の高いガイドラインを自ら構築していく狙いがある」

福井氏

日本銀行総裁を務めた福井俊彦氏も、アドバイザーとして参加した

 アドバイザーには、全米フットボールリーグ(NFL)のコミッショナーを務めたポール・タグリアブ氏、経済学博士でありインド工業省次官を務めたアジャイ・ドゥア氏、ブラジル開発商工省大臣を務め、スペインのテレフォニカ社の取締役を務めるルイス・フェルナンド・フルラン氏、日本銀行総裁を務めた福井俊彦氏の4人。

 オブザーバーには、エリツィン氏、プーチン氏をロシア大統領府長官として支え、今年6月までロシア最大の電力会社統一エネルギーシステム(UES)の取締役会長を務めたアレクサンドル・ヴォローシン氏。また、コーディネータとして、橋本内閣、小泉内閣の総理大臣補佐官を務めた岡本アソシエイツ代表取締役の岡本行夫氏が参加した。

 パナソニックからは、大坪社長をはじめ、海外事業を担当する経営幹部のほか、30~40代の中堅社員も参加。「当社の参加者の平均年齢は45歳に満たない。5年、10年先に、本格的なグローバル・パナソニックを実現するうえで、将来の力になる若い社員に参加してもらった」(大坪社長)。

 午前中には、アドバイザーによる講演を含むメイン会議を開催。午後からは、世界経済の構造変化に対し、企業がとるべき対応などをテーマにしたパネルディスカションや地域別ディスカッションが行なわれた。メイン会議は、当初の予定時間を大幅にオーバーする形で進行した。

 ここでアドバイザーから指摘されたのが、「How to make money」

 大坪社長は、その指摘された内容を次のように語る。

 「パナソニックに対する、技術力、商品力については疑いを持っていない。それは我々自身が自覚していたことでもある。しかし、これをビジネスに変えることに課題があると指摘された。アドバイザーからは、ストレートに、How to make moneyという言葉を示された。技術、商品を経営の数字、利益に変えていくためには、経営の仕方において、大きなブレイクスルーをしなくてはならないと感じた」とする。

第1回グローバルアドバイザー会議後の会見

第1回グローバルアドバイザー会議後の会見で、大坪文雄社長(右)と、大月均常務取締役

次ページ「グローバルアドバイザー会議の成果」に続く

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