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林信行が語る「2008年、知っておくべき10のトレンド」(後編)

2008年12月31日 12時30分更新

文● 林信行

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番外編2:Startup Metrics

 世の中は未曾有の大不況だと言われている。これによって、きっと米国のIT系企業も苦しいんじゃないかと言われるが、グーグルが年末に発表した業績は、悲観的なアナリストに肩すかしをくらわせるものだった。

 投資が厳しいんじゃないか、ベンチャーには難しい時期なんじゃないかと言われる。だが、米国で超有名ベンチャー企業の人々も書かさず読む超人気ブログ、「Master of 500 Hats」の筆者でベンチャーキャピタル、FounderFundのDave McClure氏は、「不況は大企業には影響があっても、中小のベンチャーにはそれほど影響がない」と語る。

 たしかに投資には厳しい時期ではあるが、だからこそ人々は慎重になり、堅実にもなるものであり、堅実な投資をするためにベンチャーキャピタルがすべきことは、投資先のベンチャーが成功しやすいように教育をすることだという。

 Dave McClure氏は、O'Reilly社などが主催するイベントの影の仕切り役としてもよく知られているが、最近、「Startup2Startup」という月例の起業家同士の勉強会を開催している。また自らエンジェルとして多くのベンチャー企業に投資してきた経験を生かしてStartup Metrics、つまり起業したてのベンチャー企業が、果たして自社は成功しているのか、今後も成功を持続していく可能性があるのかを推し量る指標を使うことを提案している。

 McClure氏は、特に重要なのは「AARRR!」の5つだという。その内容は、以下の通り。

  • Aqcuisition:ユーザーの獲得
  • Activation:ユーザーに自分のサービス素晴らしいと実感してもらうこと
  • Retention:一度、サービスを利用したユーザーがその後も、何度も戻ってきてくれること
  • Referal:ユーザーはそのサービスが好きで、つい人に教えたくなる

 上の4つが実現できたら、初めてサービスは軌道に乗って勢いをつけられる。そうなったらようやく

  • Revenue:ユーザーがお金を払ってでもサービスを使いたいと思ってくれる

という最後のステップが見えてくる。

 McClure氏は、この「AARRR!」が達成できているかどうかを確認するための分析表なども用意している。12月には、彼のStartup Metricsを紹介するセミナー兼ワークショップを東京で開催した。その時のスライドは、彼がアドバイザーを務める、米SlideShareのサービスを通して共有している。

Startup Metricsを紹介するセミナー Startup Metricsを紹介するセミナー

 日本のIT系ベンチャーには、単なるアイディアの思いつきだけで勝負をしているところも少なくないが、それでは運良く「一発屋」になることはできても、持続的な成功はできない。

 不況はじっくり腰を据えて、自分のビジネスと正面から向き合うチャンス。そう考える人に、McClure氏のStartup Metricsは非常に大きな示唆を与えてくれる。

 なお、こうしたStartup Metricsを唱えているのはMcClure氏だけではない。この1、2年、米国ではベンチャーが現実に正面から向き合い、堅実なビジネスを営むために、Startup Metricsに注目が集まっている。いろいろな人がそれまでのビジネス論を体系化し始めており、最近ではそうした人々が自分の考えを紹介する「Startonomics」というワークショップも開催された。

 ほかのMetricsについては、McClure氏のスライドの最後のほうにLinksとしてまとめられているので、ぜひ他のプレゼンも見てみよう。ここで言われていることの多くはベンチャーだけでなく、大企業で進められている各プロジェクトについても言えることだと、筆者は思っている。McClure氏のスライドは英語だがベンチャーだけではなく、大企業のプロジェクトマネージャーにもいろいろな示唆を与えてくれる。年末年始、時間に余裕がある人は、今年の仕事をどう変えていったらいいかを考えるヒントとして目を通してみてほしい。

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