このページの本文へ

『瀬名秀明 ロボット学論集』上梓「これは僕の自伝です」

作家・瀬名秀明とロボット ~攻殻機動隊の世界は実現するか~

2009年01月13日 22時34分更新

文● 矢島詩子、企画報道編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

東北大学オープンキャンパス 
瀬名秀明氏×櫻井圭記氏トークセッション
「攻殻機動隊の世界は実現するか」全記録

東北大学オープンキャンパスにて、トークセッション「攻殻機動隊の世界は実現するか」を行なう瀬名秀明氏(写真左)と、脚本家の櫻井圭記氏(写真右)

瀬名秀明氏(以下:瀬名) 今日は櫻井さんと僕で、主に「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」(以下SAC)と、これからいろいろと広がるロボット社会や情報社会を、このオープンキャンパスの中で、高校生の皆さんと話ができればいいなと思っています。

 まず最初にSACの最新の、Solid State Societyの予告編を見ていただきながら……

櫻井圭記氏(以下:櫻井) そうですね。ご存じない人もいると思いますので。

瀬名 SACを見たことのある人はいますか? おー、5? 6割くらいいますね。

櫻井 ありがとうございます!

瀬名 最新作になっている2時間のスペシャル版「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」(以下SSS)。これの予告編を見ていただきましょう。

SSS予告

会場の参加者に、SSSの予告編を上映

瀬名 はい、ということで、これが2006年の作品だったわけです。作品の内容……ロボットとか、情報社会のコンセプトを、櫻井さんから説明していただきましょう。

櫻井 では簡単に。公安9課という警察というか……組織が主人公で、電脳やネットワークに関係する犯罪に対処する、というポリスアクションです。あまりアクションはないような気はするのですが、“ポリスサスペンスアクション”みたいな感じの作品なんです。だいたい、2030年くらいを想定していて。

瀬名 2034年とか、そのくらいですか?

櫻井 そうですね。ファーストシリーズが2029年からスタートしていますので、ちょうどSSSが3~4年くらい経った時代の作品です。ほとんどの人間が「電脳」といって、頭の中にデバイスを埋め込んでいて通信ができる、みたいな、そんな世界観なんですね。

瀬名 それで、この攻殻機動隊というのは、プロダクション・アイジー(Production I.G)さんが、映画とテレビアニメの2種類を作っていたわけです。士郎正宗さんという原作者のマンガ家さんがいらっしゃいまして、それを押井守さんが映画で「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」という形で1995年、そして「イノセンス」ということで2004年に制作しました。この間9年あるのですが。

櫻井 そうですねぇ。考えてみたら。

瀬名 それで、その間にテレビシリーズでSACが2002年、2004年とSSSが2006年に出て、最近、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 2.0」が、公開されたということですね。世界観は士郎さんの原作なので同じなのですが、ちょっとずつやっぱり、監督さんなどによって違う。櫻井さんはSACで脚本家としてデビューされた。修士論文を脚本にしてデビューしたと。

櫻井 そうですね。そんな感じだと思います。理系の大学院に行ってしまったので、実験とか、そういったことを求められてしまったのですが、出身が経済学なもので、あまりそういうものになじめなくて。ちょっと悶々としている時に、たまたまこういう機会があったので参加したというわけです。

瀬名 攻殻機動隊シリーズは、非常に工学者、科学者にファンが多いわけですけれども、中で描かれている近未来のロボット社会や、テロに対抗する少数精鋭の公安9課の面々、この人たちはサイボーグ化されているというか、“義体”と呼ぶわけですけれども、ここ(後ろの首筋を指して)にこうくっつけて、ネットに入れます。それで、人によっては「素子」(草薙素子)という人などは、(体の)ほとんどがもうサイボーグというかロボットになっているような……

櫻井 そうですね、人工物に。

瀬名 人工物になっているような、そういう場合もあれば、トグサくんという人は……こいつは最後にとても出世するんですが、この人は出世するに至るまでも、ほとんどは人間のままでいると。そういう人たちがいろいろ入り交じっている世界。さらにもう1つはタチコマくんというロボットがいまして、このポッドの中に人が入って、4脚の車輪で移動すると。これは装甲車にもなり、攻撃もするわけですが、このタチコマ自体が、群(ぐん)ロボットとしての知性を持ち始めていくという形になっています。

 今日はこういうことを考えながら、現在のフィクションの現状やサイエンスの現状、それらがこれからどうなるかを、お話ししていきたいと思います。攻殻はフィクションなのですが、どうでしょう櫻井さん? 最近のロボット社会とかサイボーグ技術は、ブレインマシーンインターフェイス(BMI)なども流行ってきていますが、それらから、考えるところはありますか?

櫻井 やっぱり、どんどん攻殻的な世界観が、サイエンス“フィクション”ではなくて、ただのサイエンスになってきているというか、もはや“フィクション”というコトバが抜けかけていると思います。近年、数年間で、「本当にこれってほとんど攻殻じゃないの?」という技術が出てきていると思います。

瀬名 たとえばどのようなものですか?

櫻井 「これってほとんど電脳と言っても差し支えないんじゃないだろうか」というような技術などですね。ご存じの方もいるかもしれませんが、猿の脳みそにケーブルがつながっていて、ロボットアームを動かすことができるという。

瀬名 猿が考えて動かしているんだけど、脳の活動をとっているんですね。その活動の信号を、ロボットのアームに伝えて、あたかも自分の腕のように扱っているということですね。

櫻井 今は大げさですけれども、頭に装着して、何を見ているかとか、パソコンを操ったりとか。米軍は、念じるだけで動かす戦車とかもかなり真剣に考えているみたいで。それはだいぶんSFですけれども、だんだんSFじゃなくなってきている。

光学迷彩のスライド

光学迷彩のスライド

瀬名 これは今出ている、光学迷彩ですね。自分の体をあたかも透明であるかのように見せる。裏側にある物質に、光が曲げられて届くという。東北大ではやっていないですけれども(笑)、いつも思うのですが、光学迷彩を見破る方法ってないのかなあって。

櫻井 あー、炭の入った水をぶっかけるとか、多分そういう事だと思いますね。

次ページ パワードスーツに、気味の悪い4速歩行ロボ「BidDog」 に続く

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

ASCII.jpメール アキバマガジン

クルマ情報byASCII

ピックアップ