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『瀬名秀明 ロボット学論集』上梓「これは僕の自伝です」

作家・瀬名秀明とロボット ~攻殻機動隊の世界は実現するか~

2009年01月13日 22時34分更新

文● 矢島詩子、企画報道編集部

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ロボット研究3つの視点

瀬名秀明さん02

年表の説明をする瀬名秀明さん

 さらに本文では、ここ10年の日本のロボット研究の動向と、瀬名さんの研究活動や作家活動などを盛り込んだ年表も添えられている。ロボットに関係する出来事、あるいは将来的に関わるのではないかと思われる出来事や、瀬名さんが時代の潮目であったと感じていることも含めてまとめられている。

 「ロボット研究の視点には3種類あって、1つ目は『役に立つロボット』を作るためのもの、2つめは『コミュニケーションのためのロボット』。3つ目は『人を知るためのロボット研究』--となるのですが、どこの会社が作業用ロボットを作った、ということは年表に入っていません。2番目と3番目に関係していそうなことや、直接ロボットには関係していないけれど、今後ロボット研究に非常に密接に関わっていくのではないかということは入れています」

 一例として、2004年に発生したスマトラ沖地震を年表に入れたことについて、瀬名さんはこう説明する。

「津波が発生したとき、人間の認知として、波が襲ってくるんだけど、なかなか逃げなかったわけですね。なぜ逃げなかったのかということを考えると、人間の環境とのインタラクションはこんなにも不思議なもので、ひょっとしたらロボットが環境をサーチするのに、すごく手がかりになるかもしれない、ということを考えれば、スマトラ沖地震というのは年表に入れてもいいんじゃないかということになりました」

 年表は、同時に、瀬名さんの作家活動とロボットの関わりもよくわかるようになっている。

 2000年頃はAIBOのヒットやASIMOの登場など、ブームと言える盛り上がりを見せた時期があった。2005年の愛・地球博(愛知万博)やROBODEX 2005でもさまざまなロボットが発表されたが、同じ年に瀬名さんはヒューマノイドが実用化された社会を舞台にした『デカルトの密室』(新潮文庫)を上梓。瀬名さんのロボット研究が小説の糧となっていた証拠のひとつであり、この作品では認知科学に関する研究が生かされていることが分かる。年表を見ながら瀬名さんの発表した作品と合わせて読むと、作家としてロボット研究に深く関わり、考え続けてきた様子がよく見えるだろう。

次ページ「イベントで手を振るだけのロボットではなく、役に立つロボットにも目を向けたい」に続く

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