遅れてきた「ソニー初Atom」
性能面で「Atom Z」にこだわる
type Pはソニーにとって、初のAtom搭載機である。しかも小型/薄型を突き詰める必要があった。鈴木氏も「Atom Zの導入後からtype P発売まで期間があったので、いろいろと検討しました」と話す。
鈴木「まず考えたのは、『同じバッテリー容量ならば、1.5~2倍はバッテリーが持つな』ということ。それをどのようなバランスで出すべきか? という点を検討しました」
「最初はtype Uのようなものも考えましたし、他社さんの例で言えば、WILLCOM D4やLOOX U的なものも考えました。自由度がありすぎて悩んだくらいです。結局は伊藤の言うように、『Windows採用機であるメリットとはなにか』を考えました」
「それは先ほども出たように、やはり『キーボードのサイズと画面』ですよね。ソニーのラインアップには、type Tやtype Gなど、1kgくらいのラインアップはすでにあります。Atomで(同じようなサイズで)1kgくらいの製品を作っても、お客様がどれを選んでいいかわからない、ということになるんじゃないか、と考えたのです」
「軽くするとなれば、バッテリー容量もそれなりにしか積めない。とすれば、大きさ/重量/バッテリー持続時間のバランスはこれだろうという目安ができ、開発が始まりました」
ご存じのように、Atomには低価格な「Nシリーズ」と、より性能を重視した「Zシリーズ」がある。Netbookの多くでは、価格を重視してNシリーズが採用されている。だがtype Pで採用されているのはZシリーズだ。
鈴木「最初からZで考え、Nシリーズには興味はありませんでした。スタミナとパフォーマンスを考えると、Zしかありえません」
パフォーマンスの点で、ひとつ重要なことがある。一般的なNetbookと違い、type PではOSにWindows Vistaを採用している。「VistaにNetbook」と言えば、とかく評判が悪いが、その理由は多くの場合、CPU速度とメモリーの不足にある。Netbookの場合、メモリーは1GBである事が多い。これではXPなら快適だが、Vistaではバランスが悪い。
そこでtype Pでは、メモリーを2GB搭載している。CPU性能は厳しめなので「快速」とは言わないが、一度起動してしまえば、意外なほど動作は軽い。
だが1点問題がある。type Pで使っているチップセットは、Z専用のSCH(Intel US15W)。元々の仕様では、メモリーを1GBまでしか搭載できないはずだ。そのため、市場に出ているAtom Z+SCH搭載マシンのほとんどが、メモリー1GBの仕様で出荷されている。
鈴木「SCHは本来、1GBまでしかメモリーを搭載できません。しかし今回は、弊社側で独自の検証を行ない、2GBを搭載しています」
SCHは現在、インテル側で仕様変更が行なわれ、メインメモリーを2GBまで搭載できるようになっている。type PはAtom Z+SCH+2GBメモリーで出荷される、現状では珍しい製品と言えそうだ。鈴木氏がそこまでSCHにこだわったのには、ひとつ理由があるのだが、それは後編で触れることとしたい。
SCHを採用したことは、バッテリー持続時間を延ばすための「省電力設計」にも影響を及ぼす。
鈴木「SCHにはPCIがありません(編注:PCI Express x1はあるがPCIはない)。各デバイスはUSBにぶら下げる形で構成しています。普通のノートPCにはない構成です。そうすると、電力管理の様子が異なるのです。そのために、けっこう特殊なテクニックを使っています。これまでのノウハウ+Atomの力で、極力スタミナになるよう努力しています」
type Pは付属の標準バッテリーで約4.5時間、別売りの大容量バッテリーで約9時間動作する。大容量バッテリー搭載時でも800g未満しかないのだから、十分満足できる値といえるのではないだろうか。
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