このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 5 次へ

林 信行 × 松村太郎 徹底対談

2009年のケータイはこうなる、こう変わる!【前編】

2008年12月29日 09時00分更新

文● トレンド編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

日本はモバイル立国となれるか?

ソフトバンクモバイルの931SHに搭載されたモバイルウィジェット機能。日本のケータイの新しい可能性だ

松村 日本のケータイのサービスでコンシェルジュなんかもあるし、ソフトバンクはモバイルウィジェットストアとコンテストを展開し始めました。こういう動きというのも活発ですね。今までのケータイのビジネスモデルから変えていくという。

林 ソフトバンクのモバイルウィジェットはすごく評価してます。あれは素晴らしい。昨今のIT業界ではパソコン向けのサービスを作っているところはそろそろ厳しくて、これからの時代、いかにしてモバイルに進出するかがキーになってきます。GoogleもYahoo!もモバイルにフォーカスしています。

 パソコン向けだと会社で1日6時間程度が限界でしょうが、Web 2.0 in Your Pocket系のサービスは24時間対応になる。検索もウェブサービスも、モバイルで使ってもらわないと話にならない。生活時間の中でできるだけ多く接してもらうWeb 2.0のサービスを作らなければならない。だからこそ、Yahoo!もGoogleもFacebookもiPhoneに積極的なんです。もちろん、日本のサービスも、日本のケータイではたいてい使えますが……。

松村 モバイルウィジェットは面白いと思うのは、日本だけの活動に限っていないこと。アジア圏で共有してリソースを作っていこう、というチャレンジの姿勢です。アップルのiPhone販売の世界80ヵ国以上には及びませんが、世界進出が期待できる、面白そうなサービスですね。

林 これまでのパラダイス鎖国なのか、ガラパゴスなのかわかりませんが、日本の市場は頑張ればそれなりに儲かるけれども、山の上に上ったらこんなモノか、という感覚があると思います。

松村 富士山に登る感じ。

林 3776mって高いかな、と思っていたら、世界には8000m級の山があった。それで、3776m上ったら、周りには登山道が渋滞するほどたくさん人がいて、誰でも登っている山だった。それでは全然有名にもならないんです。やっぱりケータイのモバイルアプリケーションをサステイナブルに展開するには、世界に展開するしかないし、誰かがビジネスモデルの構築をやっていかなければならない。同時に、日本だからこそ成り立つサービスは、日本でビジネスが成立する価格体系に調整する必要があります。

絵文字に対応したiPhone

松村 今回iPhoneには絵文字が搭載されましたが、GoogleはGmailを絵文字に対応させ、またUnicodeで絵文字を標準化しようという動きもあります。本当は、日本のキャリアやサービスが旗を振るべきなのに、Googleがやってしまっています。

林 日本はスタンダードやプラットホームを作れないですね。モノを細かく作り込むことはできても、世の中の基盤の部分を作れていない。スタンダードや基盤を作った人が一番儲かるんです。絵文字の話はその典型例で、日本のキャリアは自分たちの囲い込みのために絵文字を活用していて、世界標準化を海外のGoogleにやってもらっていては、情けない限りです。

松村 iPhoneでは、絵文字は「日本語のキーボード」なんです。ユニバーサルじゃないんだ、インターナショナルじゃないんだ、と思いました。

林 海外にいるiPhoneユーザーは絵文字の出し方に困っています。海外にいる日本人もそうだし、これカワイイから使ってみようという外国人もそう。Tipsとして、アドレス帳に絵文字を登録してあるファイルをダウンロードすると使えるようになるようです。

松村 そこまでして使いたい人がいるなら、オープンに使えるようにすればいいのに。日本のケータイの絵文字カルチャーの輸出という意味ではもう一押し足りていない感じがしますね。

 また海外のキャリアだったり、リサーチ会社が調べているのがおサイフケータイ。マイクロペイメントやモバイルペイメントの領域です。先進国なら電子マネーなどの導入で考えやすいですが、発展途上国では決済自体を握り非常に強力な立場に立てるかもしれない。これも放っておくと、せっかく日本にはいい仕組みがあるのに、ビジネスは海外に持って行かれてしまうかもしれません。スタンダード作りは大切ですね。

林 ソニーとフィリップスの合弁会社が世界規模で広めていこう、という動きがあって、サンフランシスコでも列車などの実験が行なわれています。こういった日本の仕組みがきちんと世界のスタンダードを取っていけるといいですよね。

 おサイフケータイを世界に広めるビークルの役割をiPhoneが担うかもしれません。ソニーはスティーブ・ジョブズに交渉の機会を設けて、iPhoneを通じて世界に広めるのが近道だと思うんです。

松村 僕もそう思います。絵文字だってiPhoneを通じて世界中に広まるのが一番早いだろうと思っていますし、HTMLメールに変換してでもiPhoneのメールで絵文字が使えるようにしてくれればいいのに、とすら感じています。ケータイカルチャーをいかに押し出してビジネスを取っていくか、という視点を持ちながらやっていかなければ。

林 日本がガラパゴスになってしまった理由を考えると、通信規格によって、日本は世界に先駆けて3Gが普及した国になりました。でも、今、あらためて立ち止まって世界を見渡してみると、iPhoneのおかげでようやく世界でも3Gが普及し始めてます。そこで3G向けの端末やサービスのリーダーとして、日本のメーカーやキャリアが輝く時期だと思います。ケータイの文法というか、やり方というか、ケータイがどのように変わろうとしているのか、その説得力のある端末やサービスを出していかなければ、誰にも買ってもらえなくなってしまいます。

松村 そういう視点にフォーカスしながら、新しいサービスや端末をリリースしてくれると、だいぶ変わると思います。

(後編に続く)


■関連サイト

前へ 1 2 3 4 5 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン