月刊ビジネスアスキー 2009年2月号掲載記事
日本人の中国に対するイメージは、近年悪化の一途をたどっている。中国への旅行者が激減し、日本人向けの現地ガイドが仕事を失っている。
日本のアニメやゲームに触れて育った中国の若者が、日本語を学び、学んだ日本語を活かすべく日本人向け旅行ガイドに……。今までは定番だったこの流れが近年変わりつつある。中国に日本人旅行者が訪れなくなり、仕事がなくなってしまったのだ。
実際、世界遺産の雲南省麗江や観光地として名高い桂林での印象は、日本人観光客が「少なくなった」というより「消えた」といえる。
旅行代理店の店頭で見る中国ツアーのパンフレットの種類が少なくなったことからも予想できるが、JATA(日本旅行業協会)の調べによれば、2008年9月の中国パック旅行の参加者は前年同月比で半減している。旅行代理店「日本旅行」に至っては8割減だという。原因としては、原油高もあるが、それ以上に年初の毒ギョーザ事件、五輪後に発覚したメラミン事件といった食の不安が大きい。
米調査会社のPewリサーチによれば、中国への印象はここ数年で世界的に悪化しているが、その中でも日本人の中国への印象が突出して悪い。中国に好感を持っている日本人は全体の14%にすぎない。
さまよう資格取得者たち
2008年12月7日、ガイドたちの不況をその目で見ながらも、日本語を学んできた若者たちが「日本語能力検定試験」を受験した。総受験者数は22万人。毎年、日本企業の多い沿岸部で16万人強、内陸部でも5万人強が受験する。そのうち日本語を使って仕事ができるレベル(1、2級)の受験者が16万人以上を占める。
1、2級の合格率は約25%。その多くは資格を足ががりに日系企業への就職を目指す。日本語ガイドを希望する者の割合は低いが、決して少ない数ではない。
金融危機に加え、最低賃金の引き上げや労働契約法施行などの中国政策の影響で、日系企業のリストラが進めば、さらに中国人が職を追われることになるだろう。日本のアニメやゲームが好きで日本語を学び、日本語を使った仕事を志した中国人に、今日本が“NO!”をつきつけている。