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2008年12月19日更新

ASCII Research Interview Vol.2

日本発の最注目サイト「pixiv」のヒミツ(前編)

文●村山剛史(構成) 聞き手●アスキー総合研究所所長 遠藤 諭 撮影●吉田 武

広告以外の収入源として……一口株主募集などはいかが?

―― pixivのビジネスモデルは?

片桐 基本的に広告収益モデルで、現状はバナー広告とリスティング広告が中心です。

―― イラストを描く/見る人をターゲットとする広告というのは、どんなものが入ってくるのでしょうか?

片桐 今のところは、オンラインゲームの運営会社と専門学校が多いですね。オンラインゲーム内に登場するアイテムなどのデザインを、ユーザーから募集するタイアップ系のものもあります。タイアップ先は知名度などで選ばせていただいてますが、規定が厳しいものでも、500点以上の応募がありますね。

永田 広告に関しては、もっと広げられるんじゃないかと思っています。まずはサーバ維持費を賄える規模にするのが第一目標です。

片桐 それでも、設備はかなり安く上げているほうなんです。現在のサーバ台数は70台近くですが、たぶんほかの会社が同じ規模感で運営したら、サーバ代だけで5~10倍かかると思います。

―― ローコストで実現できている理由は?

片桐 ロケーションを含め、すべて自前で管理しているからです。このオフィスの一角をサーバルームにしています。……ですが、そのためにpixivの成長と共にサーバルームが拡大の一途をたどっていて、代わりにミーティングスペースがどんどん削られているのが現状です(笑)。

pixivのサーバ
これがpixivを支えるサーバ群だ。周囲には扇風機が置かれ、むき出しのマザーボードと電源がラックに並べられている。

永田 サーバ維持費が完全に賄えたとしても、人件費その他が残っていますし、なにより社名変更したほどの中核事業ですから、今後もっと収益は伸ばしていきたいですね。

―― 広告以外の収益源は考えていらっしゃいますか?

片桐 有料会員制度も考えていますが、これは機能向上云々というよりは、寄付モデルに近いものになるでしょう。検索が若干便利になる程度で、機能の差異を強調するようなことはしたくありません。ただ、このサービスは楽しいから今後も維持したいと思ってくださる人たちから、月数百円ほどいただければいいかな、と。

永田 ニコニコ動画やmixiのプレミアム会員登録数は、それほど大したものではないという現実がありますし、おそらくpixivもそうなるだろうと思っています。多くても3%でしょう。それ以上割合を増やそうとすれば、逆に機能制限を付けていく必要がありますが、それは僕らの運営思想からかけ離れてしまうので、まさしく「寄付をお願いします」という感じですね。ですから、有料会員制度を収益の柱とは考えていません。

―― いっそ、ユーザーに株主になってもらうというのはどうでしょう。

片桐 それは、どういうことでしょうか?

―― 昔、小規模な雑誌は運営が厳しいときに、一口株主を読者から募集していたんですよ。『面白半分』('70~'80年代。初代編集長は吉行淳之介)か『話の特集』('65年~'95年)。もちろん、pixivの場合はポジティブな方法として(笑)。

片桐 まるで、一口馬主みたいですね(笑)。

―― ユーザーのイラストを、書籍化やDVD化するという話も聞きましたが。

片桐 どちらも動いていますが、これも収益モデルというよりは、プロモーションの一環と考えています。pixivは、ネット上でこそある程度の知名度を得ていますが、現実でも画集やDVDといったかたちあるものを流通させることによって、イラストをアップロードしているユーザーに「その先」を見てもらえる場を作っていきたいんです。作品が外に広がっていくための手助けは、さまざまなかたちで行っていくつもりです。書籍やDVDを流通させるということは、個人ベースだとなかなかできないことなので、そこを我々が仲介しようと。

―― 単純に個人が本を作りたいのならば、同人誌でいいわけです。そうではなく、書籍として流通に載せるということは、どこかの出版社と組むということですか?

永田 組むというよりは、各方面からいただいたお話のなかでおもしろい企画があれば、じゃあここの部分については御社とやりましょう、みたいな感じで。まずは来月に書籍が出ます。pixivの人気作家さんが、イラストの描き方を解説する本です。あとは、来年早々にもDVDが出るかな、といったところです。

―― つまり、どこか1社とアライアンスを組むわけではないと。

片桐 基本的に、色を付けたくないと思っています。「こことガッチリやっていきます」というのは、決してよいことではないなと。ユーザーは出したいところから出せばいい。僕らはあくまでただの場所ですから、ユーザーが出したいと思ったときに、自由に出せる体制を作っておきたいんです。

永田 来年の2月末に、「リアルpixiv」というイベントを行う予定です。原宿の「デザイン・フェスタ・ギャラリー・イースト」を3日間借り切って、ギャラリー全体をユーザーのイラストで埋めます。見学者全員にステッカーを配って、気に入ったイラストに貼り付けてもらうなど、リアルでもpixivに近い感じを出していこうと考えています。

片桐 pixivで意識しているのは、「どれだけリアクションが返ってくるか?」ということです。クリエイターにとっては、「モノを出したのに反応がない」というのが一番キツいので、コメントや評価での「見てもらっている感」を重視しています。これは、リアルpixivを行う目的のひとつでもあるのですが、pixivではあまりコメントや評価をつけていなかったユーザーも、リアルなギャラリーで試しにステッカーを貼ったりしてみれば、アクションすることの楽しさや、作者が感動するんだということがわかると思うので、その気持ちでまたpixivを使ってもらえればいいなと思っています。

―― イラスト、マンガ以外の作品をアップロード可能にする考えはおありでしょうか。

片桐 今のところはないですね。もう少しマンガを見やすくしようとは思ってますけれど。Flashや、フィギュアの写真をアップロードしたいという要望は来るのですが、まだその段階ではないと考えています。フィギュアなどは写真の撮り方で全然変わってきてしまうので、(作品を見せる場として)それはどうかな、と。

―― マンガが見やすくなるというのは嬉しいですね。現状では、サムネイルだと細長い棒にしか見えませんから(笑)。pixivとは別のサービスで、フィギュアの写真などをアップロードできる場を作るというのはいかがでしょう。

片桐 あるかもしれないですね。ただ、それだけの市場があるかどうか……。

―― あるいは、海外展開は考えていらっしゃいますか?

ピクシブのオフィス
ピクシブのオフィス。机の上にはパソコンだけでなく電子工作モノが並んでいたりと、自由な雰囲気。ただし、台数が増え続けるサーバが、徐々にオフィススペースを浸食している。

片桐 会社を興したときから「世界に通用するウェブサービスを作りたい!」と思っていました。pixivほど世界に行きやすいサービスはないと思っているので、ぜひやっていきたいと考えています。

 ただ、pixivはツールではなくコミュニティなので、英語版や中国語版を作るのは簡単ですが、それによってコミュニティが壊れたり、カルチャーが薄まっては元も子もありません。そこで、まずはdrawrからやっていこうと思っています。中国語版と韓国語版のアジア展開から始める予定です。というのも、pixivへの海外からのアクセスや登録者数を見ていくと、1位から順に台湾、中国、アメリカ、韓国、香港と続いているんです。このなかで、アメリカはアップロードするユーザーが少ない。なので、コンテンツを作れるユーザーが多い国から海外版を作っていこうと考えています。だから、英語版はむしろ最後でもいいと思っているんです。

―― オタク的な絵を「描いて」楽しむ人間の数は、アジア各国のほうが多いんですね。英語圏は広いけれど、オタク系のCGMはクリエイター不足が原因で流行らない可能性が高いのかもしれません。海外版の仕様というのは、台湾版や中国版を別途作るのではなく、現在のサービス内で言語選択が可能になるかたちなのでしょうか。

片桐 そうです。

―― 韓国では流行りそうですよ。写真投稿サイトで「dc inside」というサイトが非常に流行っていて、コミュニティも強力なため、選挙にも影響を与えたといわれています。「オレチャン」(顔最高)サイトといって、美男美女を自薦他薦でアップロードしてみんなで人気投票するサイトなんかもありますからね。早く行かないとマスいんじゃないですか?

永田 僕らが考えるpixivは、コミュニティで、かつ作品を生み出せるユーザーがいる場所です。だから、マネして作っても、どうやって人を呼び込むのか、描ける人間は来るのかということを考えると、現状では日本がダントツです。そして、日本のなかでもpixivが勢いを得ているということを総合すれば、下手にマネされても怖くはないと思っています。それよりも、僕らが変に焦って、それがサービスに影響を与えてしまうほうがよほど怖いですね。

片桐 映画はアメリカが昔から強いように、イラストやマンガは日本が世界で一番強いので、他国で同じようなサービスが始まっても心配することはありません。日本人ほど絵がうまい国民はいないと思っていますから。(後編へ続く)


本記事を制作したアスキー総合研究所は、アスキー・メディアワークスの法人向けリサーチ・メディア部門です。後編は同サイトで一足先に読むことができます。

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