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「ニコニコ大会議2008冬」に行ってきた(その3)

コメントありきで作った──「ニコニコ大会議」を演出家が語る

2008年12月15日 11時00分更新

文● 広田稔/トレンド編集部

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プレゼンの相手が変わる?

 山形氏はネット時代における新製品発表会のあり方についても、ニコニコ大会議を2度演出して、肌で感じ取った意見を示す。

 「ニコニコ大会議は、言ってしまえば『マス』(マスメディア)を対象にしたイベントではないですよね。今まで新製品発表会というのはメディアの人に向けたものでしたが、ニコニコ大会議ではその方向をシフトチェンジして、どちらかといえばファンを相手にした。実はそこから市場が生まれていくこともあるんじゃないのか」(山形氏)

 マスメディアを通じて広くあまねく知らしめるというよりは、ニッチでも自分たちの顧客にしっかりと新しい要素をアピールする。

 小規模セミナーなどではそう珍しいものでもないが、大規模で仕掛けようとすると予算的にも集客の点でもハードルが高くなる。しかし、ドワンゴは7000万円の大金を投じて、リアルで2000人、ネットで2万人というユーザーを集めた(ちなみに会場観覧には1万5294名の応募を集めた)。

 1000万人超の登録ユーザーを獲得し、ファンにとってはマスメディアのように機能しているニコニコ動画だからこそ、ニコニコ大会議は成立したのかもしれない。

 「ドワンゴの人たちは、話を聞いていると面白いんですよね。仕事上、大企業の人と接する機会もありますが、そういう方々とは全然違うマーケットを狙っています。それは今はニッチに見えるんだけど、これから面白くなるのかもしれない」(山形氏)


ニッチと一般化の狭間で

 ただ、ニコニコ動画自体は、ニッチから抜け出そうとしている。ニコニコ大会議では、登録ユーザー2000万人という目標が掲げられた。

 狙いは一般層の取り込みだ。今のユーザーは検索やランキングを使い、面白いコンテンツを能動的に探してくれるが、テレビのような受動的なメディアに慣れた人をニコニコ動画に呼び込もうとなると別の仕掛けが必要になる。そこで200社を超えるコンテンツプロバイダーに動画提供を呼びかけて「ニコニコチャンネル」を用意し、トップページから簡単に面白い動画が探せるようにした。

 この一般層の取り込みが功を奏すかどうか。

 「売れないタレントには『強力な追っかけ』が付いているんです。そうした熱狂的なファンは、タレントが売れだしたとたんに離れてしまうことが往々にしてある。『私のニコ動から変わらないで』『もっとコアなものにしてくれ』という声も出てくるでしょう。そういう人たちが遊んでいる『庭』と、そうでない新規ユーザーの場をどうやって切り分けるのか」(山形氏)

 2000万人の登録ユーザーを獲得するため、今のような「クレイジー」なニコニコ大会議も変わるのだろうか? 次回、ニコニコ大会議を開催するかどうかは決まっていない。転換期に来ているニコニコ動画の行く末に注目したい。


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