「ハードとプログラムの両面」に苦労させられたプロジェクト
―― reacTableの開発経緯を教えてください。
マルティン 誰もが入りやすく、直感的に使いこなしができて、楽しめる楽器を作ろうと考えています。このプロジェクトは、2003年にスタートしたものですが、演奏可能な「reacTable」の試作品の完成に至ったのは2005年のことです。
スタート当初から、理論的には実現可能だとは分っていたのですが、オブジェの認識やプログラム上の問題、スクリーンタッチのシステムやテーブルの中の配線をどうするかといったハード面を作り上げるまでの試行錯誤がありました。結果的にどれも難しいハードルを越えなければなりませんでした。
2006年にreacTableを使ったパフォーマンスをYouTubeに掲載しました。2007年2月に再生回数が100万回を超え、その反響の大きさに私たちも驚きました。(下記参照: 現在の再生回数は180万回を超える)
―― さらに注目されたきっかけはビョークのコンサートと聞いています。
マルティン はい。ちょうどその頃(2007年2月)、一通のEメールが届いたんです。内容は「私はビョークのスタッフで、彼女のパフォーマンスでreacTableを使いたい」というものでした。
その時は喜ぶというより「本物の、あのビョークなのか?」と半信半疑だったんです(笑) 3月にパリに呼ばれてreacTableをデモして、そのまま「次のライブでぜひ使いたい」という話に進みました。実はその時、まだ一台しかなかったので、すぐに新しい実機を制作しました。そして、彼女のワールドツアーに取り入れられたのです。
「reacTable」が、プロの音楽家が演奏する「楽器」として証明された瞬間でした。