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柴田文彦の“GUIの基礎と実践” 第13回

柴田文彦の“GUIの基礎と実践”

右クリックメニュー、その歴史と効果

2008年11月23日 19時40分更新

文● 柴田文彦

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マウスボタンとコンテクストメニュー

 「コンテクスト」は、一般的には「文脈」と訳される。しかし、GUIで使う用語としてのコンテクストを文脈と呼ぶのには違和感があるだろう。この場合には「状況に応じた」という意味だと考えればわかりやすい。では、この「状況」とは何を指すのか?

 現在のGUIの場合には、これは操作の対象となるオブジェクトと言い換えてもいい。例えば、ファイルやフォルダーのアイコン、デスクトップやフォルダーの空白部分などがそれに相当する。つまり、どこでメニューを開くかによって内容の異なったメニューを表示するのが、コンテクストメニューというわけだ。

 現在のコンテクストメニューは、マウスの右ボタンをクリックして開くのが一般的。もちろん、そのときにマウスポインターが指しているものが操作の対象となり、それに応じた構成のメニューとなる。この場合、メニューは操作の対象の上に直接表示される。メニューの内容だけでなく、場所もそれにふさわしい直感的なインターフェースと言えるだろう。

 初期のMacにはコンテクストメニューがなかった。しかし、メニューバーの「File」メニューでは、開いているウィンドウを選択しているときと、その中のアイコンを選択しているときとで、選べるメニュー項目が変化した。これも広い意味ではコンテクストメニューと呼んでもいい。

ファイルメニュー

初代Macの「File」メニュー。選択したオブジェクトによって、使えるコマンドが変化している。これも原始的なものながら、コンテクストメニューと言える

 Macが現在と同様なコンテクストメニューを備えたのは、Mac OS 8からだった。すでにその時点で、操作対象に最適化されたメニュー項目を表示するようになっており、現在のものと何ら遜色はない。

 ただし、当時のMacの標準マウスには、ボタンが1つしかなかった。そのままでは、コンテクストメニューの操作には難がある。操作対象の上でボタンを長押しすることでもメニューを表示できたが、キーボードの「control」キーを押しながらクリックすることで、コンテクストメニューを表示できるようにしていた。「control」キーを押している間は、マウスポインターの形状を変化させるなど、1ボタンマウスの機能が不足している部分を補おうとする工夫が見て取れる。

 その時点でも、サードパーティー製の複数ボタンを備えたマウスでは右ボタンでコンテクストメニューを表示できた。

Mac OS 8

フォルダーのウィンドウ内で表示したMac OS 8のコンテクストメニュー。フォルダーの中にフォルダーを作成する「New Folder」をはじめ、現在のコンテクストメニューと同等の機能を備えている

Mac OS 8

本格的にコンテクストメニューを導入したMac OS 8だが、マウスは1ボタンだった。「control」キーを押すと、マウスポインターが変化してメニューが表示されることを示唆す

Mac OS 8

フォルダーアイコン上で表示したMac OS 8のコンテクストメニュー。「Open」や「Label」も加わっている。現在のコンテクストメニューと大きくは変わらない構成

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