マウスボタンとコンテクストメニュー
「コンテクスト」は、一般的には「文脈」と訳される。しかし、GUIで使う用語としてのコンテクストを文脈と呼ぶのには違和感があるだろう。この場合には「状況に応じた」という意味だと考えればわかりやすい。では、この「状況」とは何を指すのか?
現在のGUIの場合には、これは操作の対象となるオブジェクトと言い換えてもいい。例えば、ファイルやフォルダーのアイコン、デスクトップやフォルダーの空白部分などがそれに相当する。つまり、どこでメニューを開くかによって内容の異なったメニューを表示するのが、コンテクストメニューというわけだ。
現在のコンテクストメニューは、マウスの右ボタンをクリックして開くのが一般的。もちろん、そのときにマウスポインターが指しているものが操作の対象となり、それに応じた構成のメニューとなる。この場合、メニューは操作の対象の上に直接表示される。メニューの内容だけでなく、場所もそれにふさわしい直感的なインターフェースと言えるだろう。
初期のMacにはコンテクストメニューがなかった。しかし、メニューバーの「File」メニューでは、開いているウィンドウを選択しているときと、その中のアイコンを選択しているときとで、選べるメニュー項目が変化した。これも広い意味ではコンテクストメニューと呼んでもいい。
Macが現在と同様なコンテクストメニューを備えたのは、Mac OS 8からだった。すでにその時点で、操作対象に最適化されたメニュー項目を表示するようになっており、現在のものと何ら遜色はない。
ただし、当時のMacの標準マウスには、ボタンが1つしかなかった。そのままでは、コンテクストメニューの操作には難がある。操作対象の上でボタンを長押しすることでもメニューを表示できたが、キーボードの「control」キーを押しながらクリックすることで、コンテクストメニューを表示できるようにしていた。「control」キーを押している間は、マウスポインターの形状を変化させるなど、1ボタンマウスの機能が不足している部分を補おうとする工夫が見て取れる。
その時点でも、サードパーティー製の複数ボタンを備えたマウスでは右ボタンでコンテクストメニューを表示できた。
この連載の記事
-
最終回
iPhone/Mac
ユーザーの優柔不断につきあう「ゴミ箱」 -
第13回
iPhone/Mac
MacとWindows、「検索」の進化を振り返る -
第12回
iPhone/Mac
Mac・Winで比べる、ソフトの切り替え方法 -
第11回
iPhone/Mac
「ヘルプ」機能から見る、Mac OSの今と過去 -
第10回
iPhone/Mac
発展し続ける「ウィジェット」 -
第9回
iPhone/Mac
スクリーンセーバーの存在意義 -
第8回
iPhone/Mac
「マルチユーザー」サポート -
第7回
iPhone/Mac
日本語入力の生い立ち -
第6回
iPhone/Mac
クリップボードという大発明 -
第5回
iPhone/Mac
ファイル表示のあれこれ - この連載の一覧へ