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世界企業パナソニック 90年目の決断 第8回

日本企業は世界でどう戦うべきか?

「ナショナル」の看板が外れるナショナルショップ

2008年11月19日 06時00分更新

文● 大河原克行

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地域に密着したサービスによって培った信用

 その自信の背景にあるのは、長年、地域に密着したサービスによって培った信用があるからだ。

 パナランドホッタの商圏は店舗から半径約2km。約500件の顧客は、電話口で名前さえ言ってもらえれば、住所がわかり、家の間取りまで頭に入っている。

 そして、堀田社長自身も、この地の出身だ。幼少時代からの顔見知りも多い。地域行事への参加も自然に行なっている。

 「お勝手(台所)でも、寝室でも、自由にあがって修理してくれ、あるいは留守でもいいから、家にあがって修理しておいてくれ、というお客様もいる」というのは、長年の信頼関係なしには実現しない。

 地域にこれだけ密着しているからこそ、堀田社長は、胸を張って「量販店が進出してきても、まったく怖くない」と言い切る。

 実際、何度となく量販店が近くに進出しては撤退していった。

 「サービス依頼のうち、90数%が自社サービスで対応可能。量販店では、ほとんどが、一度、メーカーに戻して修理をする体制。サービスの速度に、自ずと差が出てくる」。

 洗濯機や冷蔵庫などの白物家電は生活必需品。一日でも早く修理が終わらなければ、困る人が多い。

 パナランドホッタにとって、サービスの売り上げ比率は1割にも満たないが、地域密着のサービス体制は、大きな「武器」となっている。

 サービススキルの向上に向けては、パナソニックが主催するサービ講習会などに積極的に参加し、技術を磨くとともに、最新商品に対する知識も習得する。社長以下、全員がこれに取り組んでいるのだ。

 「若い頃は、サービスセンターが主催する講習会のすべてに参加した。パナソニックのサービスマンに随行して、修理の方法を会得することも行なった。講習会では、商品を分解するカリキュラムもあり、これも構造を理解するのに役立った。こうした経験が、サービスによる店舗の差別化と、信頼獲得につながっている」

 そして、だからこそ、こうも語る。

 「うちが扱っている商品であれば、ナショナルブランドでも、パナソニックブランドでも、安心して購入してもらえるはず。ブランドが変わっても、うちのサービスにはまったく変化がない」。

 「堀田流」といえる販売方法は何か、と聞いてみた。

 堀田社長は、迷うことなく、「技術を売っていること」と回答した。

 この言葉からも、長年に渡って蓄積した技術と信頼への自信が伺えた。

新しいパナランドホッタの看板

 パナランドホッタは、今年4月、店舗を約50メートル離れたところに移転した。

 新店舗では、わずか2週間だけ、ナショナルの文字が入った看板を掲げたが、5月には「パナソニック」に一本化した看板へと付け替えた。そして、通りに面した看板には、大きく「電気のお医者さん」という文字を入れた。

 「看板づくりは、すべて店長に任せた」と堀田社長は、世代交代を視野に入れながらの新店舗展開であることを示す。

 店長の顔見知りの看板屋の提案で、パナランドホッタができるサービス内容を具体的に示してみせたのも特徴だ。

 これを、「うちの店ができることの意志表示」と堀田店長は語る。

 サービス内容のなかには、オール電化の相談、販売、施工に加え、補助金申請も含めたほか、インターネット回線の契約やLAN配線、地デジテレビの相談、そして、訪問しての電球交換まで入れている。

サービス内容

 「店に入ってくる新規顧客の多くが、『修理もやってくれるんですか』というのが第一声。そこに私たちの役割がある。看板を付け替えてから、確実に来店数が増加している」という。

 30代である堀田店長自身は、パナソニックで育った世代だ。

 では、店長から見たブランド統一はどう映るのか。

 「若い世代にはパナソニックブランドの方が浸透している。また、パナソニックブランドは、AV機器に強いイメージがあり、この領域の売り上げを伸ばすことができるかもしれないと考えている。白物家電とAV機器との連動提案も増えるだろう。ブランド統一を、売り上げ拡大のチャンスと捉えたい」と堀田店長は意欲を見せる。

 パナソニックがブランド統一で目指す、家まるごと提案も、パナランドホッタでは、すでに成果を上げ始めている。

 「あるご家庭でエコキュートの設置作業をしていたら、隣の家から声をかけられ、説明にあがったところ、すぐに導入が決まった。また、その隣やさらに隣の家からも声がかかった。口コミで、エコキュートの良さが広がり、導入が増えている」

 エコキュートは、パナソニックブランドでいち早く展開した商品のひとつだ。これと同じブランドの商品が、これから家庭内にも入っていくことになる。

 「これまでの店舗をナショナルのお店とすれば、新店舗はパナソニックのお店として、この地域に定着していくことになるだろう」と堀田社長は語る。

 世代交代の時期を迎えようとしている同店においては、パナソニックへの社名変更、ブランド統一のタイミングは、ちょうどバトンタッチの時期に重なることになる。

 「私はナショナル担当。パナソニックは息子に任せる」と、パナランドホッタの経営と、ブランド統一とをダブらせながら、堀田社長は笑ってみせた。

本記事公開当初、堀田友樹店長のお写真のキャプションが間違っており、訂正させていただきました。申し訳ございませんでした。

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