成功の方程式はキャリアを超えたブランディング
さて、今回のインタビューは10月に開催された「Touch 3Dラウンドテーブル」と題されたイベントの後に行なった。イベントは銀座ミキモトのビルにあるクールなレストランが舞台だった。Touch Diamondのこれまでにないデザイン性と操作性を持ったスマートフォンにふさわしい場だ。今回のイベントから垣間見られるキャリアを超えたブランディングには、成功の方程式が隠されている。
「今回の端末はイー・モバイル、ソフトバンク、そしてドコモからリリースされます。異なる戦略を持つ各キャリアと密接にコミュニケーションを取り、1つの端末が細かい技術用件を満たすこと、そして大きな各キャリア戦略をサポートする役割を果たしていくことが重要です」(田中氏)
キャリアの戦略をサポートする役割を1つの端末が背負う、とはどういうことだろう? HTCのマーケティングを担当する田中義昭氏は下記のように語る。
「例えば、イー・モバイルはモバイル・ブロードバンドを企業ブランドにしている。イー・モバイル向けのTouch Diamondは7.2MbpsのHSDPAに対応し、しかもBluetoothやWi-Fiを通じてモデムとしても活用することができる点で、この端末の役割は大きい。またドコモはブランドチェンジを行い、革新性の点でTouch Diamondを活用できる。またソフトバンクはモバイルインターネット元年を標榜しているので、より自由なネットを楽しめるHTC製品がサポートできます」(田中氏)
この考え方は、複数のキャリアに端末を提供する日本の端末メーカーと似ているようで、少し違う。とある端末メーカーの方に話を聞くと「社内でも提供先のキャリアが違うとコミュニケーションは少なく、別の会社みたい」なのだそうだ。その結果、提供する端末は同じメーカーであっても1つとして同じデザインではない。
一方HTCでは、各キャリアに対して1つの端末でそれぞれのニーズに応えようとしていく。キャリアごとの細かい仕様への対応は必須だが、ユーザーから見ればイー・モバイルでもTouch Diamondだし、ソフトバンクでもドコモでもTouch Diamondなのだ。
「全てのキャリアで同じ製品をリリースすることは、アメリカでもやってきました。日本での問題点とされているSIMロックは、実はアメリカでも同様です。グローバルな戦略として多数のキャリアから同じ端末を出すことを行なってきました」(コウ氏)
この戦略によって、アメリカでのWindows Mobile端末の高いシェアや、世界での出荷台数の伸びを実現してきた。結果として、ユーザーのケータイの買い方を変える。今まではキャリアありきで、その中から端末を選んできた。しかし全てのキャリアで同じ端末がリリースされていると、「ユーザーはキャリアを選ぶだけで済むようになる」(コウ氏)のだという。
そうなると「HTCのスマートフォン」というブランドの確立は必要不可欠なユーザーとの対話であり、キャリアの中での端末のポジショニングとは別に、HTCとしてTouch Diamondをどのように「魅せて」いくかは、非常に重要な市場との対話となってくるのだ。
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