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時事ニュースを読み解く “津田大介に聞け!!” 第28回

「小室哲哉」逮捕で露呈した、著作権の難しさ

2008年11月11日 23時30分更新

文● トレンド編集部、語り●津田大介(ジャーナリスト)

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番組主題歌と引き替えに権利を譲渡する慣行


── 音楽出版社について、もう少し詳しく教えてください。実際、何をやっている会社なんでしょうか?

津田 音楽出版社は、アーティストから権利を譲渡されることによって、ある種「右から左」で著作権収入が入ってくるようになります。

 一応、「譲渡と引き替えにその楽曲をプロモーションする」という名目なんですが、売れないアーティストの楽曲などは十分にプロモーションされていない現状もあるんですよ。そういう意味で、譲渡が前提になっている音楽出版社の仕組みに不満を持っているアーティストもいます。

 もうひとつ、日本の音楽出版社をめぐる状況で問題視されているのは、番組主題歌と引き替えに権利を譲渡させる慣行が定着していることです。

 日本の音楽業界では90年代以降、テレビ番組の主題歌のタイアップを取ることとバーターで、放送局の子会社の音楽出版社に権利を譲渡するというケースが増えてきました。

 公共性の高い電波を独占する放送局は、放送内容にも公正さや公共性が求められるわけですが、子会社に音楽出版社があると、放送で自分たちが権利を譲渡された楽曲を中心に流して、自分たちに利益を還流するということができてしまうわけです。

 そのため、テレビ局やラジオ局で放送される曲が偏ったり、番組でプロモーションしてもらうには権利を譲渡しなければならないといった、およそ「公正」とはほど遠い悪しき慣習がまかり通る。

 こうした利益還流を防ぐため、米国では放送局に対して、DJや番組ディレクターに対して支払われる経済的利益を公表する義務を課す「ペイオーラ(payola)規制」というものも設けられています。

 こうした癒着的な取引慣行は、日本ではほとんど問題に上がっていませんでした。ただ、最近は、下請法とのからみから、公正取引委員会がタイアップ楽曲を放送局系音楽出版社が持つことに対して何らかの規制をかけるのではないか、という話も出てきています。個人的にはぜひやってもらいたいと思いますね。

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