[東京 4日 ロイター] パナソニック<6752.T>(旧社名:松下電器産業)が三洋電機<6764.T>の買収に動き、厳しさが増していた金融マーケット環境に一転して追い風が吹き始めたのではないかとの期待感が膨らんでいる。
著しい成長が見込まれる電池ビジネスで優位に立つ三洋電機の潜在力が「魅力的」と考える内外の有力企業は多いものの、深刻化する金融問題や円の独歩高などの要因で、海外勢が三洋を飲み込むには足元の環境が悪過ぎたと言える。パナソニックはこのタイミングを見逃さず、海外勢を出し抜く格好で戦略分野で優位に立つための強力な布石を打った。円高を逆手に取った発想の勝利とも言えそうだ。
4日の東京株式市場では、パナソニックが前週末比102円高の1614円で引け、三洋電機は1億9800万株の買いを残してストップ高比例配分の195円で大引けとなり、今回の買収をマーケットは好感した。市場では「経営再建中の三洋電機については、救済されるイメージもあることから人気化するのは当然の動きとして、パナソニックも買収によって将来性が高い二次電池が強化できるほか、太陽電池参入の道が開かれるといったメリットが評価された」(準大手証券情報担当者)との声が出ている。
買収が実現した場合、パナソニックは電池事業で大きな収穫があるとみる関係者が多い。とりわけ今後の急成長が見込まれる電気自動車向け二次電池の分野で、事業の大幅な拡大が見込めることが経営上、大きな意義を持つという見方が浮上している。
日興シティグループ証券・アナリストの江沢厚太氏は、リポートの中で「長期的には自動車とエレクトロニクスは融合していく。電機メーカーとして自動車業界で競争力を持つために、リチウムイオン電池で規模を大きくすることは有効と考えられる」と指摘する。
また、三洋電機の太陽電池事業について「買収があった場合、パナソニックの燃料電池や住宅設備事業との相乗効果が期待できるほか、海外での販売力増強の経験が将来的に三洋電機の太陽電池事業の販売力増強に貢献する可能性もある」と分析している。
だが、こうした将来性に着目した見方とは別に、三洋電機のファンダメンタルズ面から、厳しい評価をする向きもある。「買収金額が妥当であれば、二次電池、太陽電池やデジカメの実力を考慮すると魅力的。しかし、既存株主の資産価値、優先株保有株主の資産価値をいかに評価するかは容易ではなく、買収に合意するのであれば、パナソニックの株主が納得する買収金額の説明が必要になる」(三菱UFJ証券・シニアアナリストの石野雅彦氏)との指摘がその典型だ。
アナリストの間からは「三洋電機の事業価値はEBITDAなどの指標で算出した場合、100─110円程度。小型二次電池などに他対して40%プレミアムを乗せれば140円が算出される」(クレディ・スイス証券・リサーチアナリストの田端航也氏)との声も出ている。買収金額の算定額次第ではパナソニックの株価の波乱要因となるとみる関係者が少なくない。
ただ、現時点で買収の意思表示は、海外メーカーへの対抗という意味で絶妙のタイミングとの声も出ている。市場では「電池部門だけの買収なら、パナソニックに限らず、もっと早い段階で話がまとまっていたはず。三洋電機の負の部分が大きいために進まなかったとみられる話が急展開したのは、優先株を保有する米ゴールドマン・サックス<GS.N>が現金化を急ぐことが関係しているのではないか」(外資系証券・電機担当アナリスト)との指摘もあるが、逆にパナソニック側では現在の厳しいマーケット環境をチャンスとして行動に出た可能性もある。
別の外資系証券のアナリストは「(三洋電機を)欲しい海外企業は複数あったと推定されるが、金融問題の深刻化によりファイナンス事情が悪化した上、最近の円の急騰で三洋を含めた日本企業の買収コストは、この1カ月あまりで急上昇している。たとえば三洋買収の有力な対抗馬との観測もある韓国のサムスン電子<005930.KS>は、足元の急激な円高/ウォン安でコストが急上昇し、現状では手が出せないだろう」と分析。その上で「海外勢が厳しい環境で動けない時期だからこそ、パナソニックは電池事業で先行き優位に立つための攻勢に出たようにも思える」と指摘していた。
(ロイター日本語ニュース 編集 田巻 一彦)
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