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特集・冬ボーナスで買う薄型テレビ 第3回

東芝の新型テレビ「超解像技術」に隠れた本当の狙いとは

2008年11月06日 15時36分更新

文● 鳥居一豊

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レゾリューションプラスは決して「机上の技術」ではない

エンベデッドシステムグループ システムLSI技術担当 プリンシパルエンジニア 住吉肇氏。メタブレイン・プレミアムなど、REGZAの画作りを担当している

 「この技術によって得られた映像を初めて見たときは、もっと高精細さを重視した映像になっていました。可能性は高いのですが、このままでは実用化できないと感じました」

 そう語るのは、REGZAの画作りを担当している住吉肇氏だ。

 映像全体に超解像技術を使うと、精細感は高いものの、ノイズが増えてしまうことが多々あった。そこで、より自然な画作りを実現するため、映像の内容を3部分に区別しているのだ。

 レゾリューションプラスの場合、映像を変化に乏しい「平坦部」、輪郭などの「エッジ部」、細かな模様のある「テクスチャー部」に分類する。このテクスチャー部だけを超解像することで、細かい模様や質感などだけを向上する。

 一方で「エッジ部」は不自然な強調感が出ないように、新たに採用された「新LTI回路」で自然な輪郭を再現するなど、それぞれに処理を変えている。

 また、映像の分類のために、従来からの輝度ヒストグラムに加え、周波数ヒストグラムを検出する回路も加わっている。こうした巧みな画作りをすることで、精細感が高く、しかも自然な映像再現が可能になったのだ。

REGZA搭載の基板と、超解像処理をするLSI


「空と海の青さの違い」が分かる人のための技術

テレビ事業部 グローバルマーケティング部 マーケティング担当 参事 本村裕史氏。REGZAの顔とも言える広報担当だ。好きなブランドはポールスミスだそうで

 ただし、一見しての違いはごくわずかだ。芝生やレンガの質感などが蘇り、映像がより緻密になった印象を受けるものの、従来のアップコンバート映像のように「画面全体クッキリ!」という分かりやすいものではない。

 あくまでも自然な映像再現を重視することで、映像の奥行きや立体感を繊細に再現しているのだ。

 別のテレビで同じ映像を見ると、一見シャキッとした映像ではあるものの、全体にディテールが強調された不自然な映像であることに気付くはず。

 好みの差もあるが「まっすぐ正直で、リアルな映像作り」という点では、確実にREGZAに軍配が上がるだろう。まさに「空と海の青さの違い」に涙できるユーザーのための技術と言える。

超解像のオン/オフは「映像設定」メニューから設定する(左)。ただし、元々フルHD画質の場合はグレーアウトしてオンに出来ない。少々ヤバめの話だが、テレビ売り場で「オン」に出来るかどうかを確認すれば「どの放送局がフルHDではないか」を確認できてしまうことになる(右)

 地上デジタル放送などの1440×1080ドットの映像のほか、DVDソフトの720×480ドットの映像の再生でも効果がある。ただし、本村裕史氏によればエンコード環境の良くないソースなどでは効果が薄いという。

 超解像は「オリジナルの映像が持つ情報を復元する」ため、映像自体の情報量が少ないと信号の復元も難しいのだ。また、BDソフトなどの1920×1080ドットの信号を入力した場合は「レゾリューションプラス」は働かない。

 ちなみにBDレコーダーなどのハイビジョンレコーダーをHDMI接続すると、自動的に1080p出力に設定される。すると出力信号はすべて1920×1080ドットの信号になってしまうのだ。こうなると超解像は適用されないので注意したい。

 (次のページ: でも、超解像って今だけ必要な技術なんじゃないの?)

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