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世界企業パナソニック 90年目の決断 第1回

日本企業は世界でどう戦うべきか?

パナソニック――社名変更の深層

2008年10月01日 04時00分更新

文● 大河原克行

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創業家への挨拶 ━━経営理念は不変

 大坪社長は、12月下旬になって、創業家の松下正治名誉会長、松下正幸副会長のもとを相次いで訪ねた。

 社名変更について、自らの意志を伝えるのが目的であり、もし反対された時には、どう対処すべきかといった方策を用意するほど、覚悟を持った訪問だった。

 だが、社名変更の話を聞いた2人からは、松下電器、ナショナルの名を残してほしいという言葉は、一切なかったという。ただ、唯一の質問が、「パナソニック株式会社として改めて経営理念を作り直すのか」ということだった。

 この質問に、大坪社長は「社名は変わっても経営理念は不変。私自身がさらに勉強し、率先垂範し、従業員に徹底する」と、松下幸之助氏の理念を継承する考え方を明確に示した。

 社名は変わっても、その中身は、松下幸之助氏が築き上げた企業であることに変化はないのだ。

 松下正幸副会長は、こう語る。

 「私自身、宣伝部長のときに、社名変更を検討したことがあった。だが、その時には、市場環境やブランド力、企業の実力を見て、時期尚早と判断した。昨年12月に、大坪社長が社名変更を提案したときには、いよいよそのタイミングが来たかと思った。また、いくつものステップを踏んだ結果、いまの判断があると感じた」

 ただ、松下副会長は、筆者の「最高のタイミングでの社名変更といえるか」との質問に、こうも答えた。

 「社名変更が、いまが最高のタイミングなのかどうかの結論は、これからの努力次第」

 社名変更は、グローバルエクセレンスに向けた通過点。いや、むしろスタートである、という気持ちが、その言葉から伝わってきた。(つづく)

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